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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第四章 囚われの少女を追って…
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第五十七話 VS青龍!(後編)


 魔力で形成した水の矢を召喚するメノウ。

 そしてそれを再度破壊する青龍型の魔物。

 この連鎖が何度も続いて行く。

 無意味な魔力で形成した水の矢の連続召喚に何らかの意味があるのか考えるシェン。


「(例え何を考えていても関係無い、全て壊しちゃえばね…)」


 そう考え、メノウの魔力切れを狙うつもりだ。

 確かに、本来ならばこれだけ大量の水の塊である魔力で形成した水の矢を出すには多量の魔力が必要。

 魔力切れでの勝利。

 そう考え、メノウの魔力切れを狙うつもりだ。

 しかし今回ばかりは違った。

 メノウも何も考えも無しにこのようなことをする女ではない。

 

「(ちょっと水借りるぞぃ!)」

 

 水の(ウォーター・アロー)により魔力で形成した水の矢を呼び出すには、魔力で水を生成する必要がある。

 これが意外と魔力を喰うのだ。

 そのため、通常は水の(ウォーター・アロー)の魔法を連射することはできない。

 しかし、ここは採石場。

 魔力で形成した水の矢に使用する水を、採石場の用水路から呼び出すことができる。

 これは彼女にとってかなりの魔力節約となった。

 

「ちょっと蒸し暑くなってきたな…」

 

 シェンが下を見おろしながら言う。

 今日は雲一つ無い晴天。

 破壊した水の矢から発生した水のせいで、周囲は水浸しになっていた。

 その水が気化しているせいで熱く感じているのだろう。

 気化熱により気温自体は下がっているのだが、直接水蒸気を浴びているシェンはそう感じられなかった。

 しかしこれこそメノウの狙い。

 ある一定の特殊な環境下でのみ使用できる技を使用するためだ。

 

「これでどうじゃ!幻影(ファントム)残像撃(シャドー)!」

 

 その声と共に、メノウの幻影(ファントム)がその場に複数体現れる。

  本物と合わせるとその数八体。

  そしてそれらそれぞれが大型肉食恐竜型の魔物に攻撃を仕掛けた。

 

「どうせ本物は一つだけ、ほかの幻影の攻撃を受けたって…」

 

 そう言うシェンの目に写ったのは驚きの光景経った。

 メノウの幻影(ファントム)はそれそれが確かに実体を持ち、青龍型の魔物を攻撃しているのだ。

 確かに攻撃自体は本物のメノウよりは弱い。

 しかし、幻影(ファントム)ゆえに自身がダメージを受けることも無い。

 一方的に、そして確実に青龍型の魔物を追い詰めている。

 

「こんなことが…!」


 メノウの使用した『幻影(ファントム)残像撃(シャドー)』は空気中の水や粉塵に自身の姿を投影し、幻影(ファントム)とする技。

 通常の幻影(ファントム)と異なるのは、それが『実体を持っている』ということだろう。

 とはいえ、完全なメノウの分身と言うわけではない。

 投影した水などに魔力を込め、攻撃時の一瞬のみ実体を出現させているのだ。

 攻撃自体も本物とは比べ物にならないほど弱いが、それを数とスピードでカバーしている。


「ほらほらほらほら」


 青龍型の魔物の装甲を剥がし、青龍型の魔物から魔力が少しづづ漏れ出す。

 通常の状態ではまず不可能な戦術をも可能にするメノウの不思議な力。

 この連撃を受け立ち続けられる者など存在しない。


「さらにスピードも上げるぞ!」


 さらにスピードを上げていく。

 その間もメノウの攻撃は止むことは無い。

 青龍型の魔物は大きな口を開けて、口の中から衝撃波を撃つ体勢を取るも時すでに遅し。

 身体中から徐々に魔力が漏れ出していく。

 やがて青龍型の魔物は静かにその動きを止めた。


『魔力切れ』


 水の矢を使ったメノウでは無く、攻撃を受けた青龍型の魔物が魔力切れを起こした。

 この戦いの結末としては相応しくない、呆気ない幕切れだった。

 撃とうとする体制をとり、上を向いた状態のままその場に固まる青龍型の魔物。


「そんな!こんな決着なんてありえない!」


 シェンが叫ぶも無駄なこと。

 既に青龍型の魔物に戦う力など残されていなかった。

 自身のいる地点から飛び降り青龍型の魔物に駆け寄るシェン。


「くッ…そんな…」

 

「さぁ、早くツッツを返してもらおうか!」


「…」


「それにお前さんには聞きたいことがいくつもある…」


 と、その時カツミが採石場の階段から降りてきた。

 ツッツも一緒だ。


「終わったか、メノウ。コイツは助けたぞ」


「カツミさん、メノウさん!」


「探すのに苦労したんだぜー」


 カツミが言った。

 以前のツッツは帽子をかぶっていてその髪型がわからなかったが今はハッキリと見える。

 ザクラに囚われた際には風に揺られよくは分からなかった、美しい銀色の長髪が。


「ツッツ…」


 久々の再開に喜びの感情を抑えきれぬメノウ。

 しかし今はそれよりも優先すべきことが彼女にはあった。

 なぜ、自分たちをこの東ザリィールへと誘ったのか。

 なぜ、ここにきてツッツを返す気になったのか。

 ツッツの持つ『異能の力』とは何なのか…


「シェン、言ってみろ」


「…言わないよ」


「ならば喰らえ、クリア・セオリー!」


 口を割らせる魔法をシェンにかけ、これらを問い詰めようとするメノウ。

 だがその直後、半ばには信じがたい出来事が起きた。

 先ほどまで動きを止めていた青龍型の魔物が再び動き出したのだ。

 いや、正確には『動いてしまった』と言うべきか。

 先ほどの攻撃で破壊されなかった僅かな部分から供給された魔力がここにきて充填。

 青龍型の魔物から衝撃波が発射されたのだ。


「なッ…!」


「動いた…!?」


 その出来事に驚きを隠せぬメノウとシェン。

 彼らにとってもこれは完全に予想外だった。

 衝撃波は上を向いたままの姿勢で発射された。

 つまり攻撃目標は採石場の岩山の上部だ。

 岩山が破壊され、粉々になった岩の破片。

 それらの破片が勢いよくメノウとシェン、二人の元へと落下してきた。


「う、うわぁぁ!?」


 気が動転しその場から逃げようとするシェン。

 咄嗟のことに頭の処理能力が追い付かずパニック状態となってしまっている。


「メノウ、逃げろ!」


 カツミが叫ぶ。

 しかし、落下物の速度が予想以上に速い。

 いくらメノウでもこれを避けるのは不可能…


「メノウさん、動かないで!」


 そこで叫んだのはツッツ。

 彼女の脳裏に何かか浮かんだ。

 漠然とした、『何か』が…

 それを聞き一瞬動きを止めるメノウ。


「うごか…」


「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「メノウ!?」


 岩が砕ける音と共にシェンの叫び声が採石場に響き渡る。

 無事を確認する気にはなれなかった、恐らく助からないだろう。

 しかしメノウは違った。


「…あ」


 岩の破片は全てメノウに当たることは無かった。

 不思議に思いつつも、カツミとツッツは彼女の勝利と無事を確認し抱き合ったのだった。




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