第五十六話 VS青龍!(中編)
蒼い眼を鋭く光らせ、その口を開け大きな咆哮を上げる大型肉食恐竜型の魔物。
その衝撃だけで採石場の岩山に亀裂が入るほどだ。
強大な力を持つ大型肉食恐竜型の魔物を前にメノウはどう戦うか…?
「(攻撃魔法は詠唱に時間がかかる…ならば以前のように幻影光龍壊を…)」
西ザリィールでの戦いで使用した幻影光龍壊は現時点でのメノウが持つ最高の攻撃パターン。
これを当てることが出来れば、いくらこの個体でもひとたまりもないだろう。
「やるしかないのぉ!」
この魔物相手に戦いを長引かせると消耗戦になり確実に負ける。
確実に短期決戦に持ち込み、勝利する。
そのためには確実に相手の間合いに入り込み幻影光龍壊を当てるしかない。
「少し速くなるぞ!」
「加速した!?」
「この動きについて来れるか!?」
「…意外と速いみたいだね」
速度だけでは無く、採石場内の壁や柱を駆けのぼり立体的戦術で攻めるメノウ。
大型肉食恐竜型の魔物はその攻撃の性質ゆえに直線的な戦闘をせざるを得ない。
そのため今のメノウのような戦い方をされると翻弄されるのみとなってしまう。
有効な攻撃パターンを見いだせず、攻撃をデタラメに放つだけの大型肉食恐竜型の魔物。
「ここじゃ!」
一気に壁を駆け上がりそこを足場にすることで大型肉食恐竜型の魔物の頭上へとまわる。
そして落下と同時にその口の中へと狙いを定め構えを取る。
「まずい!逃げろ!」
珍しくシェンが声を荒げる。
いくら強襲仕様の大型肉食恐竜型の魔物といえど、ここで攻撃を受けてしまっては確実に破壊されてしまう。
強化装甲を装備しているとはいえさすがに体内への攻撃は守りきれない。
「幻影…!」
「避けろぉ!」
「光龍壊!」
メノウの声と共に強烈な光があたりを包み込む。
数秒の時を経て、徐々に光は収まっていく。
そして、そこに立っていたのは…?
-----------------
囚われのツッツを求めて採石場内を駆け回るカツミ。
シェンに見つからぬように、人の気配がないかを探る。
しかし、目に見える範囲を探した時点ではツッツは見つからなかった。
「この採石場、広すぎるぞ…」
そう呟き、床に手を着くカツミ。
無理も無い、広大な採石場全てを探さなければならないのだ。
しかも、数がとても多いうえにそのどこにいるのか手がかりも無い。
シェンは一番高いところとは言っていたが、どの岩山も同じに見える。
手当たり次第にやっていくしか探す方法は無い。
「これは少し時間がかかりそうだな…」
-----------------
幻影光龍壊を大型肉食恐竜型の魔物へと放ったメノウ。
以前の西ザリィールにおける別個体との戦いではこの一撃で勝利を収めることが出来た。
しかしそれは、カツミと共闘していたから。
そして装備の貧弱な個体だったからという理由もある。
今回は単独での戦い、しかも相手は特殊な強化がされた青龍仕様の大型肉食恐竜型の魔物だ。
「当たった…か…」
光が収まった時、その場に立っていたのはメノウと大型肉食恐竜型の魔物だった。
メノウの幻影光龍壊は確かに当たった、だがギリギリで急所を避けられてしまった。
背中の皮膚を抉り取ったのみで致命傷とはならなかったのだ。
「(じゃが、もう一度当てることができれば…)」
先ほどは口の中から体内へ攻撃を加えようとして避けられてしまった。
しかし今の攻撃で皮膚を破壊し、内部を露出させることが出来た。
その部分を狙えば今度こそ倒すことが出来るだろう。
口の中に再び攻撃を当てるよりはずっと簡単なはずだ。
大型肉食恐竜型の魔物もこちらを警戒しつつ唸り声を上げている。
「よし、もう一度…」
そう言って再び構えを取る。
しかしそれを見たシェンが不敵に笑う。
「…シェンよ、なぜに笑う?」
「いやぁ、ここまでの魔物を追い詰めるとは思わなくてね」
そう言って先ほど破壊された飛竜型の魔物へと目をやるシェン。
それと同時に、その死骸に『ある変化』が起きた。
飛竜型の魔物の死骸が大型肉食恐竜型の魔物と融合を始めたのだ。
触手が死骸を引き寄せ、己の体に取り込み始める。
飛竜の鎧は竜の刃に。
翼と武具は大空を舞う竜へと受け継がれる。
「ま、まずい!」
異変を感じ取ったメノウが再び幻影光龍壊を大型肉食恐竜型の魔物へと放つべく構えを取る。
しかし時既に遅し、手負いの大型肉食恐竜型の魔物は飛竜の力を得ることで新たな姿へと生まれ変わった。
「飛竜とティラノサウルスで『青龍』の完成だよ!」
大型肉食恐竜型の魔物改め『青龍型の魔物』、その姿は以前の二体の特徴をそのまま引き継いでいた。
身体のベースは大型肉食恐竜型の魔物、爪と翼飛竜型の魔物のもの。
先ほどメノウが与えた傷も飛竜型の魔物のパーツで修復、補強されている。
「ドラゴン…竜…!?」
「そうだよ。メノウちゃんは『竜』が好きなんだよねぇ?」
「…ッ!ふざけるな!」
メノウの眼が憎悪に染まる。
いつもならば敵の挑発になど絶対に乗らぬ彼女が不思議と感情をはっきりと表し青龍型の魔物へと襲い掛かる。
構え無しのクイック幻影光龍壊を放ち、一撃必殺を狙う。
だが、そのメノウの攻撃も軽く避けられてしまう。
背中の翼を使い青龍型の魔物は上空へとのがれたのだ。
「な…!飛べるのか!?」
「当たり前だよ、の魔物の翼は飾りなんかじゃないからね!」
その巨体からは想像もつかないほどの身のこなしで攻撃を避け、カウンターを仕掛ける青龍型の魔物。
先ほどの大型肉食恐竜形態の時とは異なり、『飛翔』といった立体的戦闘をも可能となっている。
今まで与えた傷も全て修復されている。
一方、メノウの体力はかなり減ってしまっている。
この先、幻影光龍壊を当てることが出来ても倒せるかどうかは未知数。
少なくとも攻撃力で勝つことは不可能だ。
ならばとる戦法は一つ。
「『水の矢』!」
攻撃魔法の一つ『水の矢』、以前旅の途中で出会った魔術師スートが使用していた魔法をコピーしたものだ。
魔力で形成した水の矢をバトルエリアに多数発生させ、青龍型の魔物の動きをかく乱させる。
この魔力で形成した水の矢は単なる矢などでは無い。
魔力を込めればそれだけ硬度を上げるのだ。
並みの攻撃では破壊することはできない。
「水の矢!?」
「そう!魔力で形成した水の矢じゃよ!」
「そんなもの、全部叩き壊しちゃうよ!」
突然の矢の出現に困惑する青龍型の魔物だが、シェンの指令を受けすぐにそれを実行に移す。
いくら強固な防御力を持つと言えど、破壊不可能と言うわけではない。
尾の一振りで次々破壊されていく魔力で形成した水の矢たち。
「ほらほらほらほら、魔力で形成した水の矢が全部壊れちゃうよ!」
「なんの!もう一度水の矢の魔法じゃ!」
そう言って再び魔力で形成した水の矢を召喚するメノウ。
そしてそれを再度破壊する青龍型の魔物。
この連鎖が何度も続いて行く。
無意味な魔力で形成した水の矢の連続召喚に何らかの意味があるのか考えるシェン。
「(例え何を考えていても関係無い、全て壊しちゃえばね…)」
そう考え、メノウの魔力切れを狙うつもりだ。
確かに、本来ならばこれだけ大量の水の塊である魔力で形成した水の矢を出すには多量の魔力が必要。
魔力切れでの勝利。
シェンはそれを考えていた。
しかし…?
感想、誤字指摘、ブクマなどいただけると嬉しいです。
また、この小説が気になった方は応援していただけると嬉しいです!
今後もこの作品をよろしくお願いします。




