第五十五話 VS青龍!(前編)
ミツヤ採石場を目指し数日が経過、メノウ達はついにその地にたどりついた。
広大な敷地には社員用の宿舎やその他倉庫などがこの敷地に存在している。
そしてその中央にそびえたつ岩山、それがミツヤ採石場だ。
その名の通り、『ミツヤ』という会社の採石場だという
「ようやくついたのぉ…」
「そうだな」
「なんじゃ?だれもおらんではないか」
「これは珍しい…休日でもないのに…」
そう言いながら採石場を見上げる商人の男。
彼の話によると、ミツヤ採石場は労働者が常に出入りするような場所。
しかし、今は違う。
人の気配ひとつせず、中に誰かがいる気配も無い。
「準備は万端ってことか…」
カツミが周囲を軽く見まわす。
恐らく採石場の中には『何か』かあるはず。
罠か、それとも気配を殺した敵の待ち伏せか…
とりあえず商人の男とはここで別れ、メノウとカツミの二人がこの場に残る。
「どうする、二人で乗り込むか?」
「そうじゃな」
警戒は解かず、二人で採石場へと乗り込むつもりのようだ。
採石場の正面にあるゲートの前に立つ二人。
鍵もかかっていないため簡単に開けることが出来た。
「いくぞ、カツミ」
「ああ」
「…ワシが先に入る」
後方の警戒をカツミに任せ、メノウが先に入る。
人の気配は感じられない。
先ほどまではそう感じていた。
しかし、その時…
「久しぶりだね、メノウちゃん!」
空を切る音と共に、採石場に響く声。
それは飛竜型の魔物を従えた東ザリィール四聖獣士の一人、青龍のシェンのものだった。
採石場の岩山の上から、下にいるメノウを見おろす形で彼が言った。
「お前さんは…!」
シェンを睨み付けるメノウ。
以前の戦いの記憶が彼女の脳裏をよぎる。
そして、彼の言った『竜の巫女』のことも…
「久しぶり、元気だった?」
「まあのう」
「…今だ、行け!」
その一瞬の間に、シェンが従える飛竜型の魔物はメノウの命を絶つべくその首筋を狙う。
以前の戦いでメノウにより引き千切られた足は再生していた。
その加速力で、飛竜型の魔物は一気に距離を詰めメノウの間合いへと入る。
「(危ねぇッ…!)」
カツミがそれを防ぐべく飛び出そうとする。
この距離でこのスピードの突進攻撃はまず避けることは不可能。
と思われた。
しかしメノウはそれを軽く避け、後ろへ下がることで再び間合いを取った。
以前の戦いでシェンと飛竜型の魔物の攻撃パターンは大体掴むことができた。
それを応用すればこの程度造作も無いこと。
予想外の回避に若干驚きつつも、それを見てこれからの戦いに期待を寄せるシェン。
「もうコイツの動きは見切ったわ!」
「あぁ~やっぱりか~…」
「ツッツはどこへやった!?ここにおるのか?」
声を荒げシェンを問い詰めるメノウ。
いつもの穏やかな喋りは消え、怒りが露わになる。
「ツッツちゃん?ああいるよ」
「どこじゃ!答えろ!」
「この採石場の一番上に縛り付けてあるよ、助けるならここで僕を倒すしかないね」
メノウを挑発するように言うシェン。
確かにシェンを倒すのはツッツを助け出す最低条件。
仮にここで振り切ったとしても必ず彼は追ってくる。
ここで始末しなければならないだろう。
「そうじゃな、お前を倒して先に進むしか…」
そう言うメノウだが、一瞬の隙を突きカツミにアイコンタクトを送る。
当然、その意味はカツミも理解している。
「(…わかった!)」
メノウとシェンが交戦している間にツッツを助け出す、それが今のカツミに課せられた課題。
幸いなことに、シェンは恐らくカツミの存在に気づいていない。
彼がいる角度からはカツミが死角になっている。
そしてカツミ自身も気配は可能な限り消していた。
「ここは広いし戦うにもちょうどよさそうじゃしな」
そう言いつつシェンの注意を自身に引き寄せるメノウ。
その間にカツミは別のルートから採石場を上がって行く。
探すのに少し手間がかかるが、気配を探っていけば何とか探せるだろう。
「そうだね、戦うにはちょうどいいよね!」
それに気づかずシェンは飛竜型の魔物を操りメノウに攻撃を仕掛ける。
だが既にこの攻撃パターンは読み切っている。
回避と同時に空へと飛び上がり、落下と同時に飛竜型の魔物の頭部を砕く。
「おぉ!」
シェンの驚きの声と共に、飛竜型の魔物はその十メートル近くもあるその巨体を地に落下させた。
衝撃に耐え切れず、胴体も破壊された。
それと共に、胴体から翼、尾などが千切れ落ちる。
さらに、今の一撃で制御盤が砕かれたため、飛竜型の魔物は戦闘不能となった。
以前戦った防衛仕様の大型肉食恐竜型の魔物とは異なり、空戦急襲仕様の飛竜型の魔物の外骨格は薄い。
刃のように硬質化した皮膚も、メノウにとっては初見でなけれは攻略は容易なことだった。
「さぁどうするのじゃ!?次はお前さんが戦うのか!?」
「まぁそうしてもいいんだけどね…」
シェンは足のレガースに仕込んだナイフを投げつけるも、メノウはそれを簡単に受け止める。
逆に跳ね返されそのナイフは持ち主である彼の下へと再び帰って行った。
投げ返されたナイフはシェンの頬をかすり、背後の柱に突き刺さった。
「ほら、僕が戦っても絶対勝てないでしょ?やっても無駄だよ」
「降参するか?別にお前さんの命まではとりはせんが…」
「降参か…」
そう言いながら、不敵な笑みを浮かべるシェン。
この顔は降参をするような顔ではない。
まだ何か隠し札を持っている、そう伝わってくるようだ。
「する訳ないだろ!そんなこと!」
その叫びと共に採石場の壁が砕け、中から大型肉食恐竜型の魔物が現れた。
そもそも彼にとって飛竜型の魔物など単なる様子見のためのカマセに過ぎない。
真の切り札はこの大型肉食恐竜型の魔物だったのだ。
「大型肉食恐竜型か…!」
「そう、それも青龍仕様のね!」
メノウが大型肉食恐竜型の魔物と戦うのはこれで二回目となる。
しかし、西ザリィールで戦った個体とその姿にはかなりの差異が見られた。
以前の個体は単なる防衛型であるため特別な装備は見られなかった。
この個体は先ほどの飛竜型の魔物と同様の青い刃の装甲に身を包んだ強襲仕様。
全身からは青い刃が飛び出しているため、以前の個体よりも一回り大きく見えた。
爪や牙も一回り大型化している。
「その能力は通常の大型肉食恐竜型の魔物よりも数段上、スピードは二倍だよ!」
シェンの言葉は単なる誇張などでは無い。
確かに以前の個体よりもパワー、スピード、その他諸々の能力が強化されている。
むき出しだったパイプもほぼ全てか装甲で覆われていた。
そして、その巨体からは想像も出来ぬ瞬発力で一気にメノウに襲い掛かる。
挨拶代わりと言わんばかりに、先ほど破壊された飛竜型の魔物の胴体をメノウに向けて蹴り飛ばす大型肉食恐竜型の魔物。
「ヌッ!?」
それを何とか避けるも、すぐに第二波が襲い掛かる。
鞭のようにしなる尾を使いメノウに襲い掛かる大型肉食恐竜型の魔物。
ギリギリでかわすも、小さな岩山が破壊され粉々に砕け散った。
「速い!以前の個体よりもずっと!」
「当然だよ!」
「(シェンを始末するか…?いや…)」
この大型肉食恐竜型の魔物は恐らくシェンが何らかの方法で操っている。
ならば彼を倒せばこの個体も動きを停止するのではないか?
そう考えるメノウだが、この作戦は一瞬で却下となった。
同じことを西ザリィールでの追跡者との戦いで実行したが、様々な妨害があり結局は叶わなかった。
結局、この大型肉食恐竜型の魔物を倒さぬ限りは先に進めないということだ。
「とにかく、こやつを倒さぬと…」
蒼い眼を鋭く光らせ、その口を開け大きな咆哮を上げる大型肉食恐竜型の魔物。
その衝撃だけで採石場の岩山に亀裂が入るほどだ。
強大な力を持つ大型肉食恐竜型の魔物を前にメノウはどう戦うか…?
感想、誤字指摘、ブクマなどいただけると嬉しいです。
また、この小説が気になった方は応援していただけると嬉しいです!
今後もこの作品をよろしくお願いします。




