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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第三章 東方の悪戯狐
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第五十二話 炎の中に見えた活路

 

 極東からやって来た剣客、汐之ミサキ。

 この南ザリィールで人斬りをする彼女を呼び出したカツミ。

 二人の勝負は激化していった。


「この技は…!?」


 それまでの技とは明らかに違う大技。

 普段ならば周囲への影響を考え、使うことは無い。

 しかしここは何もない更地。

 周囲に燃え広がることは無い。


「受けろ!そのまま燃え尽きちゃえ!」


 その声と共に勢いよく燃え上がる幻狐流剣術奥義『炎舞折朱』。

 ミサキもめったに使わない技。

 その威力はとても高い。

 カツミも直撃する訳には行かない。

 そう考えた。


「く…!」


 一瞬後退するカツミ。

 さきほどのミサキの攻撃により裂けた地面。

 そこに飛び込み逃げようにも距離が離れている。

 走り抜ける時間も無い。


「うあああッ!」


 カツミの叫び。

 それが周囲に響き渡る。

 彼女とミサキの戦いの場を中心に大爆発が起こった。

 なんとかギリギリで直撃は避けた。

 しかしその衝撃は偽りでは無い。


「くそ…炎の熱気で…前が…」


「ははははは」


 ミサキが笑いながら、剣を軽く振るう。

 たったそれだけ。

 軽く振るだけで地面は砕け、残火が砕かれた大地を燃やす。

 何とか避けるも、この一撃だけでカツミにとっては致命傷になりかねない。

 しかし、ミサキが単に高威力なだけの剣技を使う剣士ならばカツミがここまで苦戦したりはしない。

 ここまでの苦戦を強いられる理由、それはミサキの使う剣術である『幻狐流剣術』にある。


「はぁ…ハぅ…はぁ…」


 暗炎剣は炎や熱を操る剣、そして幻狐流剣術は幻術による残像を操り相手を幻惑する剣技。

 炎の熱気により発生した陽炎と幻術により、通常よりも数段厄介な技となっている。

 さらにこの熱気に包まれた環境下では、慣れていない者では嫌でも判断力や集中力が鈍ってしまう。


「もう息をするだけでも辛いって感じだよね?」


「う、うるせー…」


 息をするだけで体の中に熱気が入り込む。

 カツミは西ザリィールにいたときは砂漠地帯で生活していた。

 その

 ためある程度の熱気ならは耐えることはできる。

 現在の環境も、常人ならばとっくに倒れていてもおかしくは無い。

 その後の攻撃も何とか避け続けるが、このままでは埒が明かない。

 苦し紛れに反撃の衝撃波を繰り出すも、全てが炎の壁に阻まれる。


「…このままではカツミさんが!」


 その光景を後方から見ていたノザキが叫ぶ。

 少なくとも、この状況が続くようであればカツミに勝機は無い。

 ヤクモの戦力も無くなった今、完全勝利は絶望的と言える。


「…暗炎剣と言ったか、あの剣」


「え、ええ」


「炎…か…」


 カツミとミサキの戦いを見ていたメノウが小声で呟く。

 裸眼でこの距離の戦いを見ることが出来るメノウ、何かを閃いたようだ。


「せめてあの炎さえ無効化できれば…!」


「あ、メノウさん!?」


 ノザキの制止を振り切りメノウが二人の戦っている地点へと向かって走って行く。

 それを見た隊長のサトウもその後を追う。


「ノザキ、お前はここに残ってろ!ヤツには何か策があるみたいだ」


 カツミを炎の攻撃と斬撃に翻弄する中、二人がその場に向かう。

 しかし近づくにつれて熱気が強くなる。

 日も暮れた深夜だというのにもかかわらず、明るく照らされている。

 カツミ達の戦う一帯のみが暗炎剣により発生した炎によって。


「アイツらの周囲一帯が炎の壁に包まれているのか、これでは入ることも出来ないぞ!」


 サトウが叫んだ。

 先ほどの地点からでは確認し辛かったが、カツミとミサキの戦っているエリアの周囲は炎の壁に囲まれていて侵入は不可能。

 炎の勢いも強く、無理矢理通ることも出来ない…


「いや…それはどうかのぅ?」


「どういうことだ?」


「…こういうことじゃ!」


 そう言ってメノウはその炎の中へと勢いよく飛び込んだ。

 燃え盛る炎の中、メノウの姿は一瞬で見えなくなった。

 しかし、メノウの身体か燃えたわけではない。

 それを見たサトウも何かに気付いたようだった。


「幻狐、東方の悪戯狐…なるほど、そういうことか」


 一方、カツミはついにミサキの攻撃により追いつめられていた。

 炎によって生み出されたこの戦闘領域では圧倒的にカツミが不利。

 スタミナの消耗も通常の数倍早く、ただ動くだけで意識か朦朧としてくる。


「体が…動か…ない…」


「凄いよぉ!ここまで私と渡り合うなんて!」


「ハッ…ば、かよ」


 ミサキの言葉を聞くうちに、カツミはついにその場に倒れこむ。

 この炎と幻惑の環境に適応しているミサキと違い、全く耐性を持たないカツミ。

 これも致し方ない。


「まぁ、お前を始末したらさっさと南ザリィールを出るかな、『アイツ』も現れなかったし…ね!」


 その言葉と共に、暗炎剣をカツミに向け振りかざすミサキ。

 これで勝負がついた、そう思われた。


 が…


「させんわ!」


「んなッ…!」


 炎の壁を切り裂き、その間にメノウが割って入る。

 そして、ギブズで固め包帯を巻いた右腕で剣を受けた。

 突然の乱入者に驚くミサキだが、すぐに思考を切り替える。


「(少し驚いたけど、その右腕ごと二人とも斬っちゃえ!)」


 暗炎剣の切れ味ならばたとえ岩の塊ですら、まるで果物でも切るかのように両断できる。

 少女二人などその勢いのまま両断できる。

 はずだった。


「…え?」


 ミサキの予想は完全に外れた。

 今、彼女の目の前にあるのは両断された二人の死体などでは無い。

 あったのは…


「暗炎剣くんが…折れた…?」


 真っ二つに折れた暗炎剣、そして切り裂かれたメノウのギプス。

 そのギプスの下にあったのは、青い金属の装甲板だった。

 以前戦った東ザリィール四聖獣士の一人、シェンの率いていた飛竜型の魔物の外殻装甲。

 それを密かに回収していたメノウが万が一のためにギプスの下に仕込んでいたのだ。


「この炎はお前さんの妖術と暗炎剣との『魔法攻撃』により発生した炎、ワシには通用しない!」


 メノウには一部の例外を除き魔法攻撃は通用しない。

 炎の壁、その正体がミサキの妖術により威力を増大させた暗炎剣の炎だと気付いたメノウだからこそできた行動だ。

 妖術が消えれは、暗炎剣は精々刀身に熱を帯びさせる程度が限界だ。

 しかし…


「剣は折れたけど、キミたちを斬るには十分すぎる長さだよ!」


 そう言って再びミサキは剣を構えメノウに斬りかかる。

 だがその攻撃も不発に終わった。


「させ…ない…ぞ」


 カツミが最後の一撃を振り絞り、ミサキの腹に掌底波を放ったのだ。

 残った体力を全て使い切った一撃だった。


「なに…グェ!?」


 不意の一撃を喰らい、ミサキは吹き飛び気絶。

 同時に、周囲に展開していた炎の壁もゆっくりと消滅していった。

 そしてミサキはサトウに取り押さえられ、逮捕された。

 もちろん、彼女ほどの使い手を普通に捕まえることは難しい。

 しかしその為に、魔術、幻術、妖術といった類の技を使う者に対する捕縛術が存在する。


「汐之ミサキ、お前を逮捕する」


 特殊な魔力の込められた捕縛用の縄。

 それでミサキを巻くサトウ。

 これにより、この南ザリィールを再び騒がせた『東方の悪戯狐』は捕縛された。

感想、誤字指摘、ブクマなどいただけると嬉しいです。

また、この小説が気になった方は応援していただけると嬉しいです!

今後もこの作品をよろしくお願いします。

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