表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第三章 東方の悪戯狐
46/94

第四十五話 人斬りを追え

「お願いします、メノウさん達の力を貸してください!」


「い、いきなりなんじゃ!?」


 突然の申し出に驚くメノウ。

 無理も無い。

 しかしこの必死の形相で頼まれると断ることもできない。

 とりあえずメノウとカツミは、その理由を聞くことにした。

 少し長い話になるため席に皆を座らせるサトウ。


「一体ワシらに何をしてほしいのじゃ?」


「実は…」


 そう言ってサトウは最近このシークマントで多発している事件について語り始めた。

 それは『無差別人斬り』、何の関連性もない人物が斬られるという事件が多発しているのだ。

 手がかりは犯行現場に必ず残されている凶器の刀剣。

 しかし、犯行に使われた凶器は全て盗品の刀剣であったという。

 調べても証拠は一切見つからなかった。


「これ以上の犯行は俺達の隊の威信に関わるからな…」


「つまりメノウにその調査をして欲しいというわけか」


「もちろん謝礼も出す」


「だが、あたしもメノウもここに五日しかいないんだよ。旅の途中に寄っただけなんだ」


 カツミが言った。

 あくまで今回は東ザリィールへの旅路の途中で寄っただけに過ぎない。

 あまり長期間の協力は不可能。

 その間の僅かな期間で、今まで証拠も出さなかった犯人を捕まえられるとは思えない。


「五日だけでも構わない、協力して欲しい」


「それにメノウさんがいれば隊の士気も上がります!お願いします!」


「どうする、メノウ?」


「いいぞ」


 メノウの答えは簡単だった。

 どうせ五日間をただ無駄に過ごすのも性に合わない。

 それならば少しでもこの地に貢献したい、そう考えるメノウ。

 また怪我のせいで身体を動かせず、少し鈍ってしまった勘を取り戻すという意味も兼ねている。

 いずれにしろこの申し出を断る理由はメノウには無かった。


「メノウがいいって言うなら、あたしも協力しよう」


「…そういえばお前は?」


「あたしはカツミ、まぁメノウの友達みたいなもんだよ」


 カツミが言ったその時、店の表から大きな物音が聞こえた。

 そして叫び声や群衆のざわめく声、そして何者かの怒鳴り声だ。

 メノウ達も急いで店の表に飛び出た。

 そこでは下品な顔の大柄な男が暴れまわっていた。

 彼の周りには数名の店員が倒れている。

 どうやらあの男にのされてしまったらしい。


「どういうことじゃけぇ、この店は遊郭やったやろ!」


「そ、それは一年ほど前でして…」


「ふざけるなぁ!オレは東からわざわざこんなところまで来たんや!」


 そう言って説明していた店員の男を店の壁に叩きつける大柄な男。

 サトウが男を取り押さえようと前に出ようとする。

 しかし、それをカツミが制止した。

 そしてあることをサトウに尋ねた。


「暴れてるやつに手を出しても罪にならないのか?」


「ああ…」


「そうか、わかった」


 それだけ言うと、カツミがその男の前に立ちはだかった。


「何だお前は、俺は小娘を抱く趣味は無いぞ!別のいい女を連れてこいや!」


「は?」


「どうしてもって言うなら、そっちの緑髪の小娘と一緒に抱いてやらんことも…」


「ちょっと黙ってろお前」


 そう言うと、カツミは右手の五本の指先で軽く男の全身をすれ違い様に一瞬撫でた。

 何をされたのか分からず、一瞬困惑の顔を見せる男。

 だがすぐに再び激昂しカツミに襲い掛かろうとする。

 しかし…


「その煩く喋りすぎる口、閉じてた方がいいぞ。とっとと帰れ」


「何を…!」


 その言葉と同時に、先ほどカツミが撫でた大柄な男の身体の部分が全て切り裂かれた。

 鮮血が全身から大量に吹き出し、先ほどまで暴れまわっていた男は意識を失い気絶した


「この技は血が激しく出るだけで痛みは無い。単なるこけおどしの技なんだけどな…」


 カツミの使ったのは彼女の使う開陽拳の奥義の一つだ。

 斬撃波を皮膚を通さずに相手の体内に送り込むことで、血管の表面を切り裂き出血させるのだ。

 見た目の派手さの割に傷は非常に浅い。

 しかしその大量の出血を見た者は気絶してしまうことが多い。


「暴れるだけしか能の無い小物だ、戦う価値も無いさ」


 そう言ってカツミは倒れたその男を見ながら言い放った。



 東ザリィールへ向かう道中、再び南ザリィールのシークマントを訪れることとなったメノウ達。

 そこで彼女たちは憲兵団一番隊の隊長であるサトウから、このシークマントで最近起きている『無差別人斬り事件』の話を聞かされた。

 僅か五日間の滞在になるが、彼女たちはその事件の解決に力を貸すことになった。


「邪魔者も始末したし、情報収集にでも行くか」


 店の前で暴れまわっていた大柄な男を倒したカツミが言った。

 とりあえずアズサの案内の元に何か情報を得るため街へ繰り出そうとする。

 しかし、大柄な男を警察に突き出すためアズサは店に残らないといけないらしい。

 困り果てたメノウとカツミにサトウが救いの手を差し伸べた。


「事件の資料なら憲兵隊の一番隊の屯所にある。案内は俺の部下のノザキに代わりにさせよう」


「よろしくお願いします。ノザキと申します。屯所で事件について話しましょう」


「任せたぞノザキ」


 サトウはこの後別の仕事があるため同行はしなかった。

 しかし、彼の部下であるノザキがメノウ達を代わりに憲兵隊の一番隊の屯所へと案内することとなった。


「アゲ…馬は連れていっても大丈夫かの?」


「ええ、屯所には馬止めもありますので…」


 本部はシークマントの東洋街(オリエントタウン)の中心街にあるようた。

 一年前とはずいぶん様変わりした街を見てまわるカツミとメノウ。

 以前はゴーストタウン状態だった再開発地区も、徐々に建物が建てられているようだ。

 前軍閥長の作った悪趣味な施設はほぼ全て取り壊されていた。


「どうですかメノウさん、以前のシークマントとは雰囲気もかなり変わっていたでしょう」


「ああ、随分といい街になったみたいじゃな」


 以前のシークマントは住民のことなどまるで考えられていない、元軍閥長のために存在しているような街だった。

 しかし今は違う。

 今やこの街はザリィール帝国内でもトップクラスの住みやすい地へと変貌していた。

 それは、以前のこの街を知らないカツミでも理解できるほどだった。


「あたしは以前の街は知らないけど、結構この街は気に入ったぜ」


「ありがとうございます、そう言っていただけると嬉しいです」


 そう言いながら街を歩くこと数十分、一番隊の屯所が見えてきた。

 東洋的な作りの木造建築の平屋建て、しかし中々広いようだ。

 剣や格闘技の修練のための道場があるのも確認できる。

 この東洋街(オリエントタウン)に調和した建物のようだ。


「ここが屯所です、表門からどうぞ」


「結構広いのぅ…」


 アゲートを馬止めに止め、中に入る。


「そこの戸を開けてすぐの一番左の部屋が客室になっています、僕は事件の資料を取ってきますので先に待っていてください」


 屯所の客室へと二人を通すノザキ。

 事件に関する資料を取りに行くといいその場を二人に任せた。

 彼に通された部屋は畳が敷かれた八畳ほどの和室だった。

 部屋の中央に置かれた机の周りに置かれた座布団の上に座る二人。

 暫くしてノザキが資料が纏められた書物を持って部屋に入ってきた。


「これが事件の資料です」


 ノザキの持ってきた数冊の書物には多数の情報が纏められていた。

 それは新聞の切り抜きなどの一般の情報から、事件の第一発見者の証言、凶器として使われた刀剣の製作者など細かな情報まで様々。

 事件前後数日の間にこのシークマントへ出入りした人間や物品の情報などもあった。

 しかしこれだけ多くの情報があるにもかかわらず、犯人に対する直接的な手掛かりは無いという。


「メノウさん、どうですか?」


「ほうほう、ふむふむ…」


 資料を流し読みし、おおよその事件の流れを掴んでいく。

 その後ろではカツミが凶器に使用された刀剣類のイラストを眺めていた。

 一通り資料を流し見たメノウ、僅か三十分足らずで資料の内容を全て頭に刻み込んでいった。

 そこからさらに時間をかけ、頭の中で事件の内容について整理、仮説を立てていく。


「この事件、怨恨や窃盗の類などでは無いな。事件の傾向からしてまだまだ続くじゃろう」


 この一連の事件に置いて、盗品などは殆ど無い。

 数件だけ財布が抜き取られるなどはあったが…


「サトウ隊長と同じことを…」


「盗品というのは恐らくチンピラか何かが被害者から抜き取ったのじゃろう。人斬りの犯人が抜き取ったわけではない」


「なるほど…」


 被害者は若い女性から老人、老若男女問わず。

 中には陸軍の士官や東洋街(オリエントタウン)の剣道場の師範、旅の賞金稼ぎなども被害者リストに入っていた。

 命こそ盗られてはいないものの、あえて大出血や強烈な痛みを発生させる斬り方がされている者がほとんどだった。

 これらは非常に高い技術を必要とすることから、犯人は相当の手慣れであることが容易に想像できる。


「それにこの資料には…」


 僅かな証拠品のイラストなどから仮説を立てていくメノウ。

 その的確な指摘に驚くばかりのノザキ。

 メノウの仮説の提唱はまだまだ続いていった…

感想、誤字指摘、ブクマなどいただけると嬉しいです。

また、この小説が気になった方は応援していただけると嬉しいです!

今後もこの作品をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ