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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第二章 西のザリィール
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第三十七話 囚われた少女!

 

「だが…『異能の力を持つ者たち(イレギュラーズ)』の少女は…捕え…ること…が…でき…」



 男の命の灯が消えるその瞬間、彼は最後の力を振り絞り二人に言った。

 そう言い残し、その男は息絶えた。

 カツミはふとメノウの方を見る。

 別に彼女は捕えられてはいない。


「この男は何を言っているんだ?」


 そう言うカツミ。

 しかし、それはあまりにも甘い考えだとすぐに思い知らされることとなる。

 突如、甲高い鳥の鳴き声が辺りに響き渡った。


「(なんじゃ…今のは…)」


 周囲を警戒するメノウとカツミ。

 魔物も、あの男も倒れた今、もう心配するものは何もない。

 はずだった。

 しかしその時、背後から戦いを見ていたツッツが空から飛来した『何か』に囚われてしまった。


「う、うわー!」


 それは赤い巨大な怪鳥だった。

 翼だけでも軽く十メートルはあるだろうか。

 あくまで目測であるため、もしかしたらさらに大きいかもしれない。


「新手の魔物か!?」


「そのようじゃな…!」


「あんな空を飛ぶ奴もいるのかよ!」


 メノウの言葉をよそに、その巨鳥は足を器用に使いツッツを捕縛する。


「離せよーバカー!」


 ツッツが手足をばたつかせて抵抗する。

 しかし、巨鳥はその力を緩めようとはしない。

 やがて巨鳥の背から一人の赤い少女が姿を現した。

 この巨鳥の姿と色に合わせたような意向の赤い服装。

 そして血のように赤い布で、その長い髪を纏めている。


「まさか魔竜を倒すとは思わなかったよ」


「次から次へと…今度は何者だ!」


 カツミがイラ付いたように呟く。

 モラーダ、そして先ほどの男、次はこの謎の赤い少女。

 一体何がどうなっているというのか。


「私は『ザクラ』、東のザリィールを守護する『朱雀』の属性を持つ『四聖獣士』の一人よ」


 東のザリィール、それは今メノウ達がいる『西ザリィール』のちょうど反対に位置するザリィール帝国の地区だ。

『四聖獣士』は東の軍閥長に仕える四人の戦士の称号。

 かつての『ブルーシム』、『ミーナ』、『ヤクモ』、『黒騎士ガイヤ』が所属していた『南ザリィール四重臣』。

 そして『メルケイン・クーガー』、『コムギ・ショーク』の所属していた西ザリィール四人衆とほぼ同じ階級と言っていいだろう。


「え、あ…もう…わけわかんねぇよ!」


「別に理解してもらわなくて結構よ」


「と、とにかくツッツを離しやがれ!そいつは関係ないだろ!いい加減にしろ!」


 カツミがザクラに向かって叫ぶ。

 しかし彼女は空から見下しながらカツミにこう返した。


「なぜ関係ないと言えるの?」


 と。

 それに対しカツミはこう答えた。


「当たり前だ、お前らの狙いはメノウのはずだ!人質のつもりか!」


 それを聞いたザクラは憐れみを含んだような笑いをカツミに対して飛ばした。


「なぜ笑う!」


「貴女、『本当に気付いて無い』の?」


「どういうことだ…?」


「つまり、こういうこと!」


 そう言うとザクラはツッツの頭を軽く蹴った。

 いや、正確にはツッツの被っている『キャスケット帽』をだ。

 蹴りを受け帽子が地面へと落ちていく。

 その帽子の下から現れたのは、美しい銀色の長髪。

 髪紐で留めているものの、その髪は明らかに『少年』のソレでは無い。

 間違いなく『少女』のソレだった。


「なッ…!ツッツ…?」


「あいつ…女だったのか…!?」


 一人称や出会った時の印象から、メノウはツッツを『少年』だと思い込んでいた。

 だが思い返してみると、一度もツッツが『少年』であると確かめた場面は無い。

 帽子を取った姿も一度も見たことが無かったのだ。


「私達が探していたのはこの子よ、あなた達のどちらでも無いの」


 ザクラはそう言うと巨鳥に命じ高度を上げる。

 このままこの場を去るつもりだろうか。

 そうはさせまいとカツミは近くの高い岩場から跳び上がり、巨鳥の片翼めがけて衝撃波を放つ。

 しかしその間にも両者の距離は段々と離れていく。

 高すぎる高度に阻まれ、彼女の放った衝撃波は空中で威力を失い消滅してしまった。


「チィッ!さすがにとどかないか!」


「メノウさーん!」


 ツッツがその銀髪を靡かせながらメノウに助けを求めて叫ぶも、その声はだんだんと小さくなっていく。

 巨鳥に囚われた彼女を助けることはできず、その場に立ち尽くすメノウとカツミ。

 二人は巨鳥をただ眺めることしか出来なかった。


「ツッツが…攫われた…」


 メノウがその場に崩れ落ち、地面に拳を叩きつける。


「メノウ…お前、あいつが女だって…」


「知らなかった…けど、思い返してみると…」


 今までの旅の中で、ツッツが少女だとメノウは気付かなかった。

 しかし、それを仄めかす言動が全くなかったわけではない。

 ツッツはメノウの目の前で決して帽子を取らなかった。

 着替える時などもメノウとは常に別室だった。

 最初は異性である自分(メノウ)に気遣っているのだと思っていた。

 だが…


「あの男の最後の言葉でようやく察することが出来た…もう少し早く気付ければ…」


 自責の念に掻き立てられるメノウ。

 ツッツは…彼女はメノウの大切な『仲間』だ。

 必ず救出してみせる、そう心に誓う。


「ヤツは東ザリィールの四聖獣士と言っておったな…」


「ああ」


「つまり、東ザリィールのどこかにツッツは…必ず探し出して…」


「いや、探す必要もなさそうだぜ…」


 そう言いかけたメノウに、カツミはある物を渡した。

 それはザクラがこの地に残していった置封筒だ。

 封筒の中には手紙と数枚の紙切れが入っていた。

 手紙にはこう書かれていた。


『東ザリィールにて待つ』


 そして同封されていた紙切れ、それは東ザリィールへの列車の切符。

 ご丁寧に港町リーキュアから東ザリィールの中央都市への物だった。

 東ザリィールは東方大陸からの移民が多い地区。

 地名も東方大陸の文字を使った物が多い。


「れっしゃ…?」


「石炭と蒸気で動く乗り物だ。長距離を移動するのに使われている」


「今日、西ザリィールから出る列車に乗れ、とある」


「地図までこの手紙に書いてある…ナメやがって…」


 ここまで用意するザクラの意図不明の対応に困惑する二人。

 異能の力を持つ者たち(イレギュラーズ)であるツッツを攫う所まではまだ理解できなくもない。

 だが、なぜメノウとカツミの二人まで東ザリィールに呼び寄せようとするのか?

 ツッツと共に連れ去る、または呼び寄せるといった方法ではだめだったのか?

 謎は尽きない。

 何かの罠の可能性だって十分ある。

 しかし、ツッツを助け出すには今はこの東ザリィールに向かうしかない。


「カツミ…お前さんとの手合せはまた今度になりそうじゃ」


 元々はカツミの伝承奥義との手合せをするはずだったメノウ。

 そのはずだったが、乱入に次ぐ乱入によりそれもできなくなってしまった。

 せっかく自分を訪ねてきたカツミには悪いが、今は一人でツッツを救出に向かわねはならない。

 メノウはそう心に決意する。

 しかし…


「ここまで関わっておいて、いまさらのこのこ帰れるわけないだろう?」


「カツミ…?」


「あたしも付いて行ってやるって言ってんだよ。察しろよ」


 大型肉食恐竜、そして巨鳥。

 二体の魔物を相手にしさらに目の前で少女が攫われた。

 それをだまって見過ごせるほどカツミは甘くない。


「ついて行くって…東ザリィールにか?」


「ああ、当たり前だ。それにヤツら興味があるしな…」


 それを聞き、メノウは思わずカツミに飛びついた。

 旅の仲間は一人でも多い方がいい。

 これからの敵は今までとは何かが違う、正体不明の存在。

 メノウ一人ではいずれ倒れる時が来るかもしれない。

 しかし…


「ありがとうな、カツミ…」


「前のヘルワームの時に次いで二つ目の貸しだ。覚えとけよ」


 そう言うと、二人はアゲートを連れ港町リーキュアへと戻って行った。

 東ザリィールへと向かう旅に出るために…



感想、誤字指摘、ブクマなどいただけると嬉しいです。

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