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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第二章 西のザリィール
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第三十六話 炸裂!幻影光龍壊

 一方その頃。

 メノウは司令塔の男と戦っていた。


「お前さんを倒せば魔物も止まるじゃろう!」


「俺が司令塔だということに気付いたか…」


 やはりメノウの考えは当たっていた。

 この男は何らかの方法で魔物を操っていた。

 そうでなければ魔物があのような不自然な動きをするはずがない。


「今、魔物はカツミがひきつけておる!お前さんを守る者はいない!


 そう言ってメノウは男に拳を腹に一発叩き込む。

 命までは奪わないが、この一撃を喰らえば確実に大きなダメージを与えられる。

 今までもこの一撃で多くの敵を倒してきた。

 だが…


「はッ!」


 その男はメノウの拳を読み、掌で抑えながら受け流したのだ。

 そしてその反撃と言わんばかりにメノウに蹴りを入れる。

 反撃など想定していなかったメノウはそれを喰らい、地面に叩きつけられてしまう。


「う、うぅ…」


 魔物を操り自身はただ高みの見物をしているだけの男だと思い、若干の油断がメノウにはあった。

 しかしそれを抜きにしてもこの男は強い。

 素の実力も並みの人間を遥かに超えている。

 今の蹴りもただの蹴りでは無い。

 的確に攻撃が最も有効になる箇所を狙った、無駄のない動きだ。

 先ほどの石も本当は避けられたのではないか?

 そう思うほどだ。


「ならこれでどうじゃ!」


 メノウが男の頭上まで跳び上がり、身体を大きく捻り上空から延髄切りを仕掛ける。

 しかしそれも避けられ、カウンターの一撃を喰らう。

 今の一撃を避けるのは達人ですらまず間違いなく不可能。

 それほどの高速の動きだったにもかかわらず、この男は避けて見せた。


「お前さん、な、中々やるのぉ…」


「無駄なことを…」


 先ほどから積極的な攻撃はしてこず、メノウに対しては反撃の身をする男。

 どうやら彼自身は好戦的ではないらしい。

 恐竜の魔物を戦わせるのみで、自身は高みの見物。

 そのスタイルは崩さないつもりのようだ。

 このままこの男と戦い続けても状況が良くなるとは思えない。


「さて、どうするかのぅ…」


 メノウが視線をカツミと恐竜の魔物にうつす。

 まだ戦いは続いていた。

 相手の力を利用し恐竜の魔物の頭部に叩きつけた全力の一撃。

 しかし、先ほどのカツミの一撃は致命傷とはなりえなかったのだ。


「なかなかタフだな、このでかトカゲ!」


 そちらも決して良い状況とは言えない。

 彼女一人では消耗戦に持ち込まれると圧倒的に不利だ。

 体力やスタミナでは恐竜の魔物に軍配が上がるからだ。


「となれば!」


 メノウは男のいる地点からいったん離れカツミのもとへと向かう。

 この男を先に倒すより恐竜の魔物を倒す方が先だ。

 男と戦うのはその後でいい。

 さきほどカツミに恐竜の魔物を任せたと言ったメノウ。

 前言を撤回し彼女のサポートに回るのも少々格好が付かないが仕方が無い。


「カツミ!」


「メノウ、アイツはいいのか?」


「スマン、先にこちらを方付けたが早そうじゃ」


 そう言ってメノウは恐竜の魔物と対峙する。

 カツミとの戦いにより、ダメージ自体は受けている。

 見た目は痛々しいが、恐らく思っているほどのダメージは無いのだろう。

 その他の部位も僅かに傷がついているが、大きなダメージは見られない。


「あれは…」


 そんな中、メノウは腹の装甲に着目した。

 あの部分は特に装甲が薄い部分。

 また、ゲルを送り出す『心臓』のような部位が存在する場所でもある。

 そこを攻撃できれば恐竜の魔物を倒せるかもしれない。


「気付いたか?」


「腹の部分、じゃろぅ?」


 腹に目をやった瞬間、恐竜の魔物が二人に攻撃を仕掛ける。

 一度目のカツミの腹への攻撃は通った。

 しかしさすがに二度目は攻撃を受けてはくれないみたいだ。

 そのしなやかな尾を鞭のようにして二人を攻める。

 何とか避けるも、その攻撃を受けた数本の木がいとも簡単に根元から折られる。


「あの具合だ、腹を狙っても攻撃のチャンスが無い」


「けどこのまま消耗戦になったら…」


「確実に負けるな…」


 大型肉食恐竜型の魔物は距離を置く二人に対し牙を向けながら吠えて威嚇している。

 腹と言うのは生物にとって頭部と共に最も重要な守るべき部分。

 重要な器官が多く存在しているため、本能的にそこを守ろうとするのだ。、

 それは魔物である恐竜の魔物も、通常の生物も変わりがない。

 しかし、逆に言えばそこを攻撃できれば確実に恐竜の魔物を倒せるということだ。

 だが警戒心が高まっている今、腹を攻撃するのは至難の業。

 近づけば間違いなく反撃を受けるだろう。


「ならば…」


 そう呟くと、メノウは加速を付け一気に恐竜の魔物との間合いを取る。


「何をするつもりだよ!?」


 カツミが叫ぶ。

 警戒心がカツミの攻撃した腹に集中している今、他の部位に若干の隙が生まれるはず。

 それにメノウは賭けた。

 自身の持つ魔力を四肢に集中させ、攻撃の機会を伺う。

 そして恐竜の魔物がメノウを噛み砕こうと大きな口を開ける。

 その瞬間、メノウはその口めがけて拳を構えて跳び上がる。


「噛みつかれたら丸ごと砕かれるぞ!」


 そのカツミの声も聞かず、メノウは突進を続ける。

 恐竜の魔物は本能的に危険を感じ、慌ててその口を閉じる。

 鋭い牙の隙間からメノウの四肢がはみ出していた。


「噛み砕か…いや!?」


 しかし、それは彼女の魔力が生み出した『幻影』に過ぎない。

 この不気味な光に包まれた竜を倒す技、それは…


「『幻影光龍壊ファントムこうりゅうかい』!」


 メノウの叫びが辺りに轟く。

 彼女の実体は既に恐竜の魔物を体内から全て破壊し尽くしていた。

 どんなに強固な外骨格も『体内からの攻撃』には意味を成さない。

 カツミの攻撃によってひび割れた外殻が完全に砕け、恐竜の魔物は内部から崩壊。

 周囲に肉片をばら撒きながら、その行動を完全に停止した。


「この技を『また』誓うことになるとはのう…」


 メノウの魔力を纏った拳が恐竜の魔物の骨格、内部機関を粉々に砕いて行く。

 体内から破壊し尽くされればいくら恐竜の魔物と言えともひとたまりもない。

 そのメノウの技の名は『幻影光龍壊ファントムこうりゅうかい』、魔法と拳技の合わせ技だ。

 幻影(ファントム)を囮にし魔力を纏った一撃を与える。

 恐竜の魔物『だったもの』はその場に崩れ落ちた。


「まさか内部から攻撃するとは…」


「ふぅ…一歩間違えたらワシがバラバラになるところだったぞぃ」


 メノウが恐竜の魔物の死骸から顔を振りながら出てきた。

 全身に肉片が付着しているため、身体を回しながらそれを飛ばしている。


「わ、汚ぇー」


「よし、とれた」


 メノウの纏うローブは魔力を纏った魔法具の一種。

 ちょっとした汚れ程度なら簡単に取れる。

 恐竜の魔物を倒したメノウとカツミ。

 次はこの恐竜の魔物を操っていたあの男と対峙する番だ。

 そう思いながら、二人は先ほどまであの男がいた岩場へと向かう。

 恐竜の魔物を倒してしまえば、あとはあの男を倒すだけ。

 メノウとカツミの二人がかりならば、さすがに苦戦はしないだろう。

 しかし、そこで二人が目にしたのは…


「これは…!」


 カツミが驚くのも無理は無いだろう。

 先ほどの男は確かにそこにいた。

 ただし、あの恐竜の魔物と同じく体がズタズタになった状態で。


「う、うう…」


「どういうことじゃ…」


「魔竜を倒すとは…化け物か…」


「…ッ!」


 メノウがその男に近寄る。

 どうやらあの恐竜の魔物とは違い、まだ辛うじて息はあるようだった。


「おい!これはどういうことだ!答えろ!」


 カツミかその男に言った。

 男は蚊の鳴くような、小さく震える声で語り始めた。


「お、俺と魔物は一心同体…片方が死ねば…もう片方も…じきに死…」


 段々と男の眼が虚ろになっていく。

 出血も激しい。

 たとえメノウの治癒魔法を使ってももう助からないたろう。

 男の命の灯が消えるその瞬間、彼は最後の力を振り絞り二人に言った。


「だが…『異能の力を持つ者たち(イレギュラーズ)』の少女の…あ…」


 そう言い残し、その男は息絶えた。

 この男は何を言っているんだ?

 そう思うカツミ。

 しかし、それはあまりにも甘い考えだといずれ思い知らされることとなる。


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