第三十二話 リーキュア支部、壊滅!
アロウズの周囲にいたボディーガード達が一斉にツッツを捕える。
メノウと違い、今のツッツはただの子どもだ。
抵抗むなしく囚われてしまった。
「はなせー!バカー!インチキ野郎ー!」
「さっさと連れていけ」
そしてそのまま聖堂へと連れ戻され、奥にあるステージの上に晒し上げられてしまった。
台にロープで拘束されてしまうツッツ。
その横にアロウズが立ち、信者たちに語り始めた。
「先ほど侵入した賊の一人を捕まえた」
彼の言葉にざわめく信者たち。
あんな小さな子供が、と嘆く者…
キリカ以外の地区から来た貧民の子どもではないかと言う者…
しかしそんな信者たちを尻目にアロウズは話を続ける。
「しかし問題はそこではない、どうやらこの子は我々の信じる神を否定するらしい」
それを聞いた信者たちは一斉にざわめき立つ。
「変なものなんかを高額で売る宗教なんか信じられない!」
「だが君は先ほど、このアロウズの『奇跡』を見ただろう?」
「そ、それは…」
先ほどアロウズはツッツの考えていることを当てて見せた。
それだけでは無く、今まで彼が起こしてきた多くの『奇跡』。
ここで言う『神』がアロウズを指すのであれは確かに神の力は『実在』することとなる…
「どうだね?君も我らの仲間にならないか?」
「やだ!」
元々ツッツは無神論者、そのような話になど毛頭興味も無い。
そんなツッツを無視し、アロウズはある物を部下に用意させた。
それはコップに入った水と、白い粉のような何かだった。
その粉を水に入れるアロウズ。
サッと粉は水に溶けていった。
「飲め!」
「やだー!」
あの粉は何らかの薬。
子供のツッツですらそんなことは容易に想像できる。
しかし今、ツッツはロープで拘束されている状態。
抜け出すこともできない。
「ならば無理矢理飲ませ…」
ツッツの口をこじ開けようとしたアロウズ。
しかし、彼がツッツに薬を飲ませることはできなかった。
彼の持っていたコップは、一瞬の内に底が切断されていたのだ。
当然、薬の溶けていた水は全てこぼれ出てしまっている。
「な…これは…!?」
突然の出来事に、辺りを見回すアロウズ。
自然現象でないのは明らか。
となれば、今この施設内でこのようなことができるものとなれば決まっている。
それは…
「待たせたの、ツッツ!」
「魔法で『コップを切断』しました」
聖堂の天窓からツッツ達を見おろすメノウとスートの姿がそこにはあった。
天窓から飛び降り、聖堂内に降りてくる二人。
「賊共か…!」
「賊?賊はあなたでしょう?」
「ワシらはちゃんと見たぞ、お前さんの『正体』をな…」
事務室にて書類を探していたメノウ達。
探し初めて僅か数分だが、様々な犯罪の証拠が山のように出てきた。
最初にスートが目にしたのは違法薬物の取引に関する書類だった。
その後も次々と出てきた。
「薬物に軍の武器の横流し、人身売買、違法薬物の密売…」
「怖いのぉ…」
「他にもいろいろと取引書も見つかりましたよ」
そう言ってスートは別の書類をいくつか持ってきた。
これらだけ何故か先ほどの書類とは分けて保管されていた。
希少生物の売買に古代遺跡の盗掘、妙なものばかりだ…
「つまりあなたは信者たちに幻惑作用のある薬を飲ませ、『奇跡』を演出していた」
その後のスートの説明によると、このアロウズと言う男はかつて王都にて魔術を学んでいた魔術師だったらしい。
心理学や薬術にも精通した天才だったが、その力を悪用し王都を追放された。
その後、各地を回り悪事を繰り返していたという。
心を読むというのは読心魔法、その他の奇跡は幻惑効果のある薬と別の魔法の複合というわけだ。
「そうでしょう?『心を読む詐欺師 アロウズ・トルシード』!」
そのスートの叫びと同時に、兵士隊が聖堂に一斉に雪崩れ込んだ。
元々このリーキュア支部を摘発しようとしていたリーキュア兵士に、スートがあらかじめ連絡を入れておいたのだ。
先ほど事務室で回収した証拠があれば十分逮捕は可能だ。
『偉大なる指導者 アロウズ』、もとい『心を読む詐欺師 アロウズ・トルシード』は兵士隊に逮捕された。
そしてその無残な姿を自分の信者だった者達に晒すこととなったのだった。
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既に夜の帳は落ち、月が真上に輝く時刻となっていた。
このリーキュア支部に侵入し、アロウズの正体を暴くのにもそれほどの時間がかかっていたのだった。
既にスートの連絡していた兵士たちがリーキュア支部に到着。
犯罪にかかわった疑いのある主要幹部、そしてアロウズを逮捕していた。
「いやぁ、どうもどうも!これで堂々と悪党どもを逮捕できますよ」
「ははは…」
この逮捕劇に協力してくれたスートとメノウ、そしてツッツに感謝の言葉を述べる一人の女。
彼女は『西ザリィーム四人衆』の一人、『コムギ・ショーク』だ。
以前のクーガーと同じく西ザリィーム四人衆に所属している。
西ザリィーム四人衆の一人が自らが先陣を切るほどの大捕物となっているのだ。
今までは碌な証拠も無く、相手が巨大組織ということもあり干渉できなかった。
しかし、これでようやく逮捕ができる。
「さぁ来い!逮捕だ!」
「離せ、自分で歩けるわ!」
兵士が幹部の一人を拘束し連行していく。
そのような光景があちこちで見かけられた。
抵抗する者もいたが、それもスートとメノウによって鎮められた。
あとは肝心の、トロムの母親であるファミーを探すことだが…
「メノウさん、スートさん!トロムくんを連れてきました!」
やはりここは依頼した本人に探してもらうのが一番、そう思いトロムを連れてきたツッツ。
トロムはスート達が母親を連れ戻すだけだと思っていた。
しかし、まさかリーキュア支部そのものを壊滅させてしまうとは思ってもいなかったようだ。
何が起きたか信じられず、辺りを見回しながら軽い放心状態になっていた。
「す、すごい…」
「トロムくん、あなたのお母さんはどこにいますか?」
メノウたちは詳しい人相を教えてもらっていない。
そのため、もらった断片的な情報では彼の母親であるファミーを大勢の人々の中から見つけることはできない。
トロムは人ごみをかき分けながら母親を探していく。
やがて彼は、放心状態で空を見上げている一人の女性を見つけた。
手には無駄に大きな経典と思われる本を抱えている。
どうやら彼女が、トロムの母であるファミーのようだ。
「母ちゃん!」
トロムがファミーの下に走って行く。
それを見たファミーは抱えていた経典を投げ捨てた。
そして彼を抱き寄せ、涙を流しながら謝る。
自分たちの崇めていたアロウズの正体が単なる詐欺師であったこと。
そして夫とトロムに心配と迷惑をかけてしまった自責からだろう。
「トロムくん…」
「まぁ、これでひとまず解決じゃな」
そう言って気を抜くツッツとメノウ。
近くの兵士に頼み、水を一杯もらいそれを飲み干す。
特にツッツはここに来てからずっと緊張の糸が張りつめた状態だったためそれが急激に緩んだのだろう。
壁にもたれかけ、その場に座り込んでしまった。
「ふぅ…」
時刻も遅く、一気に疲れが来たのかツッツを強烈な睡魔が襲った。
気付いた時にはツッツはその場で眠りに入ってしまっていた。
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