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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第二章 西のザリィール
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第三十一話  心を読む男!?


 一方その頃。ツッツはディオンハルコス教団内の信者の寝泊りする宿舎の敷地に侵入していた。

 トロムの母親のいると思われる場所だ。

 警戒の矛先が暴れていたメノウ達に向いていたため、特に問題も無くここまで来ることができた。

 警備自体はそれほど強固なものでもないようだ。


「アゲート、ここに隠れててください」


 古い倉庫の陰にアゲートを繋ぎ、宿舎内に侵入する。

 この建物自体は軍からの払い下げの物のようだ。

 兵士たちが使っていた、古い宿舎をそのまま流用しているらしい。

 そのため非常に古く、みすぼらしい。

 壁はひび割れ朽ちかけており、それを上からの塗装と簡易的な補強で無理矢理誤魔化している。


「古い建物だなぁ…」


 明るい時間帯に表門から見たときはとても清掃が行き届いた清潔な建物に見えた。

 しかしどうやらそれは表の将きょう施設のみのようだ。

 裏門に近い宿舎などの建物はそこまで綺麗というわけでもない。


「…よし」


 教えてもらった部屋の番号を頼りにトロムの母の部屋を探す。

 どうやら、女性信者には一人一つの部屋が割り当てられているようだ。

 一方の男性信者はタコ部屋のようだ。

 個人部屋が割り当てられているのならば探すのは容易だ。


「とにかく探そう」


 足音を消しながら宿舎の中を歩いて行くツッツ。

 外見から大体想像はできたが中はもっと汚い。

 部屋の中はきっとさらに汚いのだろう。

 そう思いながら宿舎の通路を進んでいく。

 このまま順調に部屋を見つけることを願うツッツ。

 しかしそうはいかなかった。

 突如、宿舎内に大きなベルの音が鳴り響いた。


「(見つかった!?)」


 思わず近くにあった空のゴミ箱に飛び込み身を隠すツッツ。

 だが、少し様子が変だ。

 見張りの者が来るようでも無い。

 その代わり、宿舎内の各部屋から女性信者たちが次々と出てきた。


「(見つかったわけじゃないのか)」


 今のベルの音は警備の物では無く、もっと何か『別』の物だろう。

 改めてゴミ箱の隙間から人々の流れを見るツッツ。

 人が入っている全部屋から女性信者たちが出てくるのが確認できる。

 彼女たちは次々と施設内の中央にある『聖堂』へと集まって行った。


「(一体何が始まるんだろう…)」


 ツッツは考えた。

 トロムから貰った母親の情報はちょっとした外見の特徴のみ。

 これだけの人数からトロムの母親を見つけるのは難しいだろう。

 このまま動かないよりは自分から行動をするのがいい。

 トロムはゴミ箱から飛出した。

 そして女性信者たちの集団に紛れ込んだ。


「あら、この時間は男の子は出歩いちゃいけないのよ…」


 その中の一人の女性に話しかけられるツッツ。

 どうやら彼女は自分が教団の人間ではないと知らないようだ。

 しかしそれは無理はないだろう。

 これだけの人数の人間、しかも入れ替わりの激しい者達全員を完全に把握するのは困難。

 常駐するわけでもない子供の顔など一々覚えていられないはずだ。

 それに今は教団の胴着を着ている。

 まず疑う者などいない。


「す、すいません。僕まだよくわからなくて…」


「ここに来たのは初めて?」


「はい」


 まぁ嘘ではない。


「ちょうどいいわ、いまから偉大なる指導者である『アロウズ』様のお話の時間なの」


「アロウズ…?」


「あの中央聖堂でね。私たちと一緒に聞きに行きましょう」


 この女性信者の言う指導者『アロウズ』、それがこの施設で教えを広めている者だろうか?

 しかしこれは都合がいい。

 恐らくそのアロウズの話はこの施設の信者全員が聞くモノだ。

 そこに行けば間違い無くトロムの母親に会える。

 後はこの施設を管理している側の人間に適当な理由をつけて彼女に合わせてもらえばいい。

 届け物がある、などと言って…


「そうしましょう」


「いいわね」


「そうわよ」


 その話を聞いていた他の女性信者達も皆それに賛同しているようだ。

 特に怪しまれている様子は無い。

 ツッツは施設の中央にある大きな館へと女性信者たちと共に向かった。

 その途中、ツッツは気になっていたことを数点尋ねた。


「僕、『ファミー』という女の人に渡したいものがあるんですけど知りませんか?」


 ツッツの言うファミーとは、トロムの母親の名前だ。

 この女性信者が知っているとは限らないが一応聞くだけ聞いておこうというわけだ。


「ファミーさん?知らないわねぇ」


「そうですか…」


「ごめんなさいね、何しろ人が多くて…」


「いえいえ」


「施設の人に聞いてみたら?」


 そう話しているうちに大きな門を潜り聖堂の館へと入るツッツ。

 館の中は先ほどの宿舎からは想像できないほどの豪華な作りになっていてた。

 宗教的な意味が込められたであろう像や絵画が飾られている。

 壁や床には不気味な幾何学模様などが描かれ、その所々に緑色の石が埋め込まれている。


「ここが偉大なる指導者であるアロウズ様の館よ」


 その後の彼女たちの説明によると、この館の壁や床に埋め込まれているのは全てディオンハルコス鉱石だという。

 触れることで体の『害なる物』が抜けていくらしい。

 これこそ、アロウズの持つ『神聖なる力』の一端だという。

 彼は信者たちの前で様々な『奇跡』を起こしてきた。

 このキリカ支部は現在『ディオンハルコス教団』では無く、彼自身を崇拝する『アロウズ教』のような団体になっているのだ。


「ディオンハルコスでは無く、アロウズ様こそ唯一神。覚えておきなさい」


「は、はい」


 とりあえず相槌を打つツッツ。

 そう言ううちに館内の聖堂へとたどり着いた。

 奥にはステージのような物があった。

 そこでアロウズや施設関係者が話をするのだろうことは容易に想像できる。

 聖堂内にも先ほどと同じく幾何学模様などが描かれており少々落着けない。

 しかしそんなことは全く気にも留めず、並べてある椅子に座る信者たち。

 アロウズの話が始まってしまうとしばらく足止めされてしまう。

 その前に行動を起こさなければならない、そう思ったツッツは共にいた女性信者に言った。


「すいません、僕ちょっと用足しに…」


「あら、もうすぐ始まるのに。男の子用のはあっちよ」


 その場を離れることに成功したツッツ。

 あとは先ほどの考えの通り、施設の人間を探し出しファミーがどこにいるかを尋ねるだけだ。

 一旦、聖堂から出て、館内で施設の人間がいないかを探す。

 聖堂内にいるなら呼び出してくれるかもしれない。

 自分が侵入者だと、バレてはいないのだから…


「(お、あの人がいいかな?)」


 館内を歩いていると、他の信者たちとは少し違った服を着た初老の男を見かけた。

 他の信者たちが質素な服装なのに対し、あの男だけ妙に派手な服装をしている。

 ディオンハルコス製だと思われる腕輪や指輪などのアクセサリーの数々。

 その周りを数人の守衛兵が囲っている。

 恐らくかなり地位の高い者だろう、あるいはあの男がアロウズなのか…?


「あの、すいませ…」


 ツッツが彼に話しかけようと近づく。

 当然ボディーガード達に阻まれてしまうも、その男は彼らにツッツの会話を許可した。


「わかりました、アロウズ様」


 やはりこの男がアロウズだったようだ。

 彼が振り返る瞬間、一瞬だけ眼光が鋭くなったような気がした。


「で、私に何か用な?」


「えっと…」


「言わなくてもわかる、君は人を探しに来たんだろう?」


「はい…え?」


 アロウズはツッツが用件を言う前にそれを当てて見せた。

 突然のことに理解の追いつかないツッツ。

 それに追い打ちをかけるように、彼はさらに話を続ける。


「それだけでは無い。君は先ほど侵入したという賊の仲間だね、『ツッツ』くん?」


「なッ…!」


 その言葉と同時にアロウズの周囲にいたボディーガード達が一斉にツッツを捕える。

 メノウと違いツッツはただの子ども、抵抗むなしく囚われてしまった。



感想、誤字指摘、ブクマなどいただけると嬉しいです。

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