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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第二章 西のザリィール
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第二十八話 冷気を操る男…!

 

 ペックの持っていた鞭で二人を縛り上げるメノウ。

 その後、未だ戦いを続けていた両組織の構成員たちをウェーダーと共に捕縛。

 残った者達を拘束しすることに成功した。

 ティラーとペックの組織を全滅させたメノウとウェーダー。

 ほぼ両組織の自滅という形だったが、壊滅させたのは事実。

 拘束した構成員たちを連れ、街へと戻る


「もどったぞー!」


 捕縛が完了したことを町の者に伝える。

 その伝えはすぐさま町長にも届いた。


「おお、ありがとうございます!」


 街を苦しめていた盗賊の捕縛。

 それに喜ぶ町長。

 他の町の者も同様だ。

 しかし…


「けど」


「ん?どうしたのじゃ?」


「牢屋の空きがありません…」


 両組織合わせて五十人ほどを捕まえたのだ。

 さすがにそれだけの人数を入れておけるほどの牢屋は無い。

 無理矢理入れるということもできなくなないが…


「う~ん、なるほど…」


「少し逃がすか?半分くらい」


 ウェーダーが、さらっととんでもないことを言った。

 とはいえ、さすがにずっと紐で拘束しておくのも難しいだろう。

 と、その時…


「ここは我らに任せてもらえないか?」


 そう言いながら現れた一人の青年。

 この砂漠の都市には合わない帽子と袖の長い軍服、そしてマント。

 そんな身なりにもかかわらず、汗一つも書いていない。

 冷たい目をしたその青年。

『西ザリィーム四人衆』の一人、クーガーだ。

 数日前にこの街を訪れ、応援の兵士が到着するまで待機していたのだった。


「なんじゃお前さんは?」


「オレはクーガー、『西ザリィーム四人衆』の一人、『メルケイン・クーガー』だ」


「西ザリィーム四人衆…!?」


 その言葉を聞き、思わず身構えるメノウ。

 彼女は以前、南ザリィームで出会った南ザリィーム四重臣を思い出したからだ。

 そのうちの一人、ミーナとは和解できたものの他の三人は敵だった。

 西ザリィーム四人衆というものがどういう集団化は分からない。

 しかしどうしても以前の南ザリィーム四重臣をメノウは連想してしまった。

 このクーガーという人物も、ブルーシム、ミーナ、ヤクモ、ガイヤと似たような立場の者達であることに間違いはないだろう。

 メノウはそう考えた。

 しかし…


「ありがとう」


 クーガーは深々と頭を下げた。

 盗賊団を捕縛したメノウとウェーダーの二人に。


「本来ならば我々がもっと早く動かねばいけなかったのだ」


 この西ザリィールは治安がいいとは言えない地区だ。

 支配体制側も対策はしているものの、イタチゴッコが続いているという。

 支配地域の広さに対して、体制側の人員が圧倒的に足りないのだ。

 少ない人数でどうにかしようにも、移動にはどうしても時間がかかる。


「礼金はこちらから払わせてくれ。大幅に上乗せする」


「それはありがたいな。よろしくたのむぜ」


「盗賊どもの始末はこちらに任せてくれ。我々の部隊で連行する」


「ああ、そっちもたのむ」


 クーガーとウェーダーの会話をよそにメノウは出発の準備をツッツと共の進めていた。

 メノウとしては報酬さえもらえればそれでいい。

 西ザリィーム四人衆に所属するというクーガーが、南ザリィーム四重臣とは違うことを確認できた。

 それで十分だった。

 と、その時…


「ッ…!」


 捕縛されていたティラーが縄を引きちぎった!

 たまたま古い縄が使われていたこと、結び方が緩かったこと。

 街の警備兵が一瞬目を離したこと。

 最悪の状況が重なってしまった。


「え、しま…」


「どけッ!」


「うあ!」


 警備兵ほ殴り飛ばし、彼の持っていた剣を奪い取るティラー。

 その彼の叫び声で周囲もようやく異変に気付いた。

 ティラーは剣を持ったまま、クーガーに襲い掛かった。

 剣を構え、クーガーに思いきり斬りかかる。


「どきやがれ!」


「…!」


 それを軽く避けるクーガー。

 そんな動きにもかかわらず、汗一つも書いていない。

 その青年の冷たい目はあいかわらずだ。


「動くな」


 ティラーに対し手の平を向けるクーガー。

 その一瞬だった。

 この砂漠の都市には合わない、『寒気』がその場を吹き抜けた。

 立った一瞬でティラーは動きを止め、その場に倒れた。


「うぅ…」


「今度は丈夫な縄で縛っておけ」


 クーガーはそうとだけ言った。

 それを見て驚くツッツとウェーダー。

 一体何が起こったのか、二人は理解していなかった。

 唯一、メノウだけは彼が何をしたのかを理解していた。


「(魔法か…)」


 クーガーの使ったのは、恐らく戦闘用の魔法だ。

 恐らく冷気を操る魔法。

 クーガーは、そのほんの一端を使ったに過ぎない。


「(単なる衝撃波の類では無いな)」


 以前、メノウは風を操る少女カツミと交戦した。

 彼女の技のかけ方と、今のクーガーの力は似ているようにも思えた。

 しかしそれは形だけ。

 その技の本質は全く違うようだ。




 --------------------



 それから数時間後…

 クーガーからは多額の礼金をもらうことができた。

 これでしばらくは旅の資金繰りに困ることは無いだろう。

 イオンシティの中央広場にてウェーダーと会話するメノウ。

 旅の支度はツッツに全て任せてある。


「なぁメノウ、お前はこの先どうするんだ?」


「う~ん…まだ決めておらん…」


「この先の砂漠を抜けると港町がある。そこを目指してみたらどうだ?」


 ウェーダーによると、その港町は西ザリィールで最も栄えている街だという。

 景色は良く、魚介類が新鮮で美味しい。

 遊ぶ所もあり、住むならばまさに理想の街と言える。

 古い街並みがいまだに残っていることでも有名だ。

 それを聞いたメノウはさっそくその街を次の目的地へと決めた。


「砂漠を抜けて一番最初に着く街だから、嫌でも立ち寄ることになるだろうけどな」


「ほうほう!」


「俺はしばらくこの町にいるよ。少し滞在してまた旅を続ける」


 そう言うウェーダー。

 とその時、遠くからアゲートを連れたツッツの声が聞こえた。

 どうやら、買い出しが終わったようだ。


「メノウさーん!準備が終わりましたー!」


「わかった、今いくぞー!」


「じゃあな、メノウ!」


「お前さんもな、ウェーダー!」


 そう言ってメノウはこの砂漠の交易都市イオンシティを後にした。

 次の目的地は港町だ。



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