第二十五話 西の戦士 メルケイン・クーガー
砂漠の交易都市イオンシティにて。
この先の旅の資金を稼ぐため、メノウは町の付近に出没する二つの盗賊集団の討伐を買って出たのだ。
二つあるうちの片方の『砂漠の盗賊団』のアジトの偵察に赴いた。
同じく用心棒を買って出た青年、タクミ・ウェーダーと共に。
「あの岩場が奴らのアジトだな」
「あそこか」
岩場をくりぬいて作られた洞穴。
常に太陽が輝く砂漠の中で生きるにはそういった施設が必要なのだろう。
その中には十数人の人間がいるようだった。
もちろん、全員が『砂漠の盗賊団』の団員だ。
その岩場を近くの別の岩場から観察する二人。
「どれ、ちょっと頭の顔でも拝むとするかのぉ」
「これが手配書だ、探してみろ」
ウェーダーがイオンシティの町長から貰った手配書をメノウに渡す。
スキンヘッドに筋骨隆々の男のイラストがそこには掲載されていた。
それを頼りに、アジト内を見渡すメノウ。
アジトの敷地内では、賭博をするものや武器の整備をしている者などがいる。
砂漠の真ん中では娯楽も少ないのだろう。
「お、アイツか!?」
「いたか?メノウ」
「ほれ、あの崩れた部分の…」
「あ、ホントだ」
アジトとして使用している岩場が一部分が風と砂により脆くなっていたのだろう。
壁が崩れている部屋があった。
その部屋に『砂漠の盗賊団』の頭である男『ティラー・ウッド』はいた。
床に布を敷き、大口を開けて昼寝をしている。
「ヤツらの盗賊集団は夜襲や奇襲に長けたチーム、さしずめ今はその準備中ってところだな」
そう言うと、ウェーダーは岩場の高台から降りた。
今回はただの偵察、あまり時間をかけている余裕はない。
もう片方の『馬賊集団』の偵察も残っている。
メノウの駆るアゲートの背に乗り、もう片方のアジトへと向かう。
一時間ほど砂漠を進んだ先に、それはあった。
盗賊団の物とは違い、大岩の近くに複数の小さなテントを張っている。
「同じような奴らが同じようなことをしてるだけじゃの…」
「まーなー」
一応こちらの方も頭の顔を確認しておくべきだと思い、リーダーを探す。
一人だけ離れた場所で金の勘定をしている男がいた。
とりあえず手配書に掲載されたイラストを確認する。
どうやらその人物がリーダーの『ツーシー・ペック』のようだ。
先ほど見たティラーとは違い、ツーシーは比較的整った顔をしている。
盗賊には似合わない長身の美形の男だ。
ティラーとは違い頭も回る男である。
直接的な略奪行為よりも作戦を練った場の方が得意なのだという。
「直接戦ったらティラーには勝てないからな、今の停戦を持ち込んだのもアイツの方さ」
「ほう」
「けど作戦を練って不意打ちを喰らわせればティラーなんて目じゃない。まぁ、面倒な奴らだよ」
そう言うウェーダー。
討伐を買っては出たものの、いざ二つの盗賊集団を目にすると上手く戦えるかが不安になる。
狭い岩場におびき寄せ、爆弾で一掃する。
底無し流砂地帯て全滅させる。
などの作戦を彼は思い描いていたが、果たして通用するかどうか…
「不安になったかの?」
「…別に」
あくまで今日は二つの組織のアジトを確認し、構成メンバーや構造などを把握するだけにとどまった。
思っていたよりも二つの組織を相手にするのは難しいものだ。
そう思いながら、アゲートに乗り一旦帰路に着く二人だった…
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丁度その頃、イオンシティにて。
この田舎の街には珍しい、とある『客』が足を踏み入れていた。
それは『西ザリィール四人衆』と呼ばれる集団の一人。
捕縛の達人『メルケイン・クーガー』だ。
以前の南ザリィール四重臣であるブルーシム、ミーナ、ヤクモ、ガイヤと似たような立場の者達である。
この砂漠の都市には合わない帽子と袖の長い軍服、そしてマント。
冷たい目をしたその青年、そんな身なりにもかかわらず、汗一つも書いていない。
「町長の元に案内してくれ」
町は周囲を深く掘られた堀でおおわれており、正面のメインゲート以外から入ることはできない。
さらに、メインゲートには検問所があり危険人物は入ることはできないようになっている。
この町は交易が盛んな街、それくらいの警戒は当然。
当然、クーガーはそれを知っている。
検問所の係員に身分を明かし、案内をさせる。
「町はずれの少し広めの小屋に町長がいます」
「ありがとう」
涼しい顔をしながら、案内をしてくれた係員に軽く一礼をする。
そして町長の元へ。
「盗賊集団が屯してると聞いて来た。メルケイン・クーガーだ」
「メルケイン・クーガー!?西ザリィール四人衆の!」
「そうだ。本当はもっと早く来るつもりだったのだが…」
別所での事件の解決に時間がかかってしまった。
遅れてしまったことを町長に詫びるクーガー。
「い、いえいえ!そんな…」
「軍の兵士をこちらに向かわせている。数日もしたら盗賊の鎮圧を…」
「あのう、それなんですが…」
町長は、これまでの経緯をクーガーに話した。
用心棒を募集していたこと。
その用心棒として二人の人物を雇ったこと。
その人物たちが今、偵察に向かっていること…
「二人?その程度の人数で?」
「はい」
「盗賊団は数十人いると聞いた。この依頼を受けた者はよほどの実力者か、ただのバカか…」
そう言うクーガー。
しかしその時、ちょうど買い出しに出ていたツッツが戻ってきた。
これまでの経緯を知らず、メノウが馬鹿にされたと思ったツッツはそれに反論した。
「メノウさんはバカじゃないです!」
「…メノウ?」
その名前にクーガーは聞き覚えがあった。
数か月前、南ザリィールでの反乱。
その争乱の中にそのような名前の人物がいたということを聞いたことがある。
外見的特徴、当時の服装は…
「目立つ緑色の髪と目をした少女…」
「知ってるんですか?」
「ああ、『知ってる』」
まだ幼い少女ながら、南ザリィールの悪政を終わらせた人物。
クーガーはそのメノウに興味があった。
どのような人物なのか?
その強さは?
ぜひその眼で見てみたい。
「町長!」
「は、はい」
「兵士たちの到着には数日かかる。それまでは貴方の雇った傭兵たちに仕事を任せてもいいか?」
メノウとウェーダー。
二人の傭兵に発生する賃金は西ザリィールの軍が代わりに支払う。
そう条件を付け、今回の仕事をメノウたちに任せることを提案した。
数日後に兵士が到着するその時までは。
「え、ええ」
「ふうん」
南ザリィールの悪政を終わらせたという少女、メノウ。
その実力がどれほどのものか。
じっくりと見せてもらうことにしよう。
クーガーはそう考えていた。
「街の宿でしばらく休息をとる。もし何かあった時は連絡をくれ」
「はい」
「それと一つ、オレが来たことをその二人には話さないでおいてくれ」
「わかりました」
「ありがとう」
クーガーの部下の兵士たちが到着するには数日はかかる。
それまで、彼は待機することを決めた。
メノウの実力を図るために…
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