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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第二章 西のザリィール
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第二十四話 オアシスの用心棒

 荒野を抜け、『メララートの砂漠』へと足を踏み入れたメノウ一行。

 さすがに先ほどのカツミのような人物も砂漠には現れなかった。

 しかし、そんな砂漠のの中に佇む一つの町があった。

 その町の名は『イオンシティ』、この町はオアシスの周りに作られているのだ。

 水も豊富にあり砂漠を行きかう人々の交通の要となっている。

 単なる砂漠のオアシスにできた町とは思えないほどの活気がここにはあった。


「凄い…僕の住んでたセンナーとは比べ物にならないくらい活気がある…」


「オアシスにできた交易都市…というところじゃの」


 町は周囲を深く掘られた堀でおおわれており、正面のメインゲート以外から入ることはできない。

 さらに、メインゲートには検問所があり危険人物は入ることはできないようになっている。

 この町は交易が盛んな街、それくらいの警戒は当然か。

 とりあえず検問所の前に並ぶメノウ達。

 まだ前には数人並んでいる。


「今日は干物を持ってきた、魚や肉に果実。たくさんだ!」


「よし、通れ」


 検問所の審査員が旅の商人の品物を眺めながら言った。

 …商人の持っていた商品の中にあった一枚の干し肉を抜き取りながら。


「次はそっちのお嬢ちゃん達か」


「私は神に使え、ありがたい教えを国に広めて回っている者です。こちらは私の付き人じ…です」


 普段とは全く異なる口調で淡々と語るメノウ。

 そして持っていた荷物の中からキレイな宝石のような物を取り出す。


「教えと共にありがたい石を販売して…」


「ああわかった、わかったよ。いいよ通って!」


 審査員が投げやりな態度で言った。

 宗教家などの、面倒な人物はある程度自由に通れるようになっているようだ。

 門をくぐり、町の中へと入ることができた。

 あまり変な教えを広めすぎるな、と言われたが。


「メノウさん、さっきのは…?」


「いろいろ旅をしてると、妙なことまで身につくものじゃ」


「さっきの石は?」


「これか?暇なときに磨いた石じゃ。こんな物に価値など無い」


 そう言って、先ほど審査員に見せた石を懐にしまうメノウ。

 町の中は馬や乗りものに乗るのは禁止されているため、町外れにアゲートを結んでいく。

 町には多くの店が立ち並び、屋台や路上で商売をしている者達が多くいる。

 常に人が行き交い、その流れは絶えることが無い。

 さすがに生鮮食品はほとんど売ってはいないが、それ以外の物ならば何でもそろうのではないか?

 そう思えるほどこの市場には物が溢れていた。


「このような賑やかな町は久しぶりじゃ…」


「それにしてもいろいろな店がありますね…あ、お水屋だ!」


 冷水屋で水を買い、それを飲みながら歩く二人。

 ツッツは、まさか気温の高い砂漠の中で冷たい水が飲めるとは思いもしなかった。


「冷たい水…?何でこんなに冷たいんだろう?」


「冷気魔法の類というわけではないのぅ…」


「そうですね」


「へへ、不思議だろ」


 とその時、後ろから何者かの声がした。

 後ろにいたのは十六、七歳ほどの少年だった。

 ボロ布を全身に纏い、顔や肌を隠している。

 できる限り砂漠の熱射に当たらないようにし、熱中症になるのを防いでいるのだろう。

 …もしかしたらそれ以外の理由があるのかもしれないが。


「…お前さんは?」


「俺はタクミ、『タクミ・ウェーダー』。アンタらと同じく今日この町に着いた」


「ワシはメノウ、こっちはツッツじゃ」


「よろしくな、嬢ちゃんとボーヤ」


 先ほどの検問所でのやり取りをウェーダーは見ていたらしい。

 メノウが宗教家の振りをしてこの町に入ったことも、彼はすぐに見抜いた。

 しかし、だからと言って彼はメノウと敵対するわけではない。


「俺は権力やお偉いさんが嫌いなんだ、お前らみたいな面白いヤツは好きだけどな」


 ウェーダーが笑みを浮かべながらツッツに言う。

 どうやら彼もいろいろと訳ありな人物のようだ。


「この水は地下から汲んでるんだよ」


「へぇー」


「ところでウェーダー、お前さんは何故にこの町へ?」


「俺か、俺は…」


 ウェーダーの話によると、この町は盗賊の討伐のため用心棒を探していたらしい。

 この町の近くには二つの盗賊集団がありこの町や周辺の村を脅かしているという。

 もともと二つの盗賊集団は対立していたが利害の一致から対立を一時中断。

 現在、二つの組織の対立は沈静化しているのだ。

 そのためこのイオンシティは二つの組織から常にカモとして狙われることとなった。

 この先旅を続けるための金を稼ぐため、とりあえず用心棒として雇ってもらうことにしたという。


「仕事の間は住む場所や食料も提供してくれるらしいし悪い話でもないと思ってな」


「旅を続けるには金が必要じゃからのぉ」


「そういうことだ。まあ後で一応町長に顔出しとかねぇとな…」


 一時的とはいえ町で雇ってもらう以上、顔出しくらいはしておかなければならない。

 町長の住む建物へと三人は足を進めた。


「何で二人ともついて来るんだ?」


「気にしない気にしない」


「そうそう」


 町長と言っても決して偉い立場というわけではない。

 町はずれの少し広めの小屋。

 そこの小さな居住スペースが町長の部屋だった。


「用心棒を募集していると聞いて来たんだが…」


 そう言って部屋のドアを開けるウェーダー。

 中にいた初老の男性は軽く一礼すると、三人に椅子を出した。

 古びた小さな木の椅子だった。


「よく来てくださいました、こんな砂漠のど真ん中に…」


「今、用心棒としているのは俺だけということか…」


「は、はい…」


「まぁいいさ。その代り報酬は弾んでくれよ」


「ええ、それはもちろん」


「で、敵の規模はどれくらいだ?二つの組織があると聞いたが…」


 町長の話によると、二つの盗賊組織はそれぞれが二十人から三十人ほどのメンバーで構成されているという。

 戦力が均衡しているだけに、無駄な争いを最近はしなくなった。

 そのため、少しずつメンバーも増えているらしい。


「この町は交易によって支えられている町。あのような者達に何度も来られては経済が破綻してしまいます」


「大丈夫、お…」


「ワシ達にまかせろ!」


「え、お前が?」


 その言葉に驚くウェーダー。


「メノウさんは結構腕もたつんですよ」


「魔法も使えるぞ」


 以前の荒野の盗賊少女、カツミとの戦いからメノウの強さを知ったツッツ。

 彼女が並みの戦士などとは比較にならないほどの力を持っていることをあの戦いで理解した。

 単なる盗賊ならメノウの敵では無いだろう。


「はぁ…」


「お前も用心棒やるってか?」


「おう!その代り、ワシにもお金頼むぞ!」


 メノウが言った。

 砂漠の交易都市イオンシティ。

 そこには意外な出会いと戦いが待っていた。



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