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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第一章 不思議の少女 メノウ
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第二十話 漆黒の騎士よ、永遠に…

「ば、馬鹿な!そんなこと…!」


 アズサの証言を声を荒げて否定するマーク将軍。

 だがここで、先ほどの彼女の言葉を思い出す。


 将軍とガイヤが同じ…


 妹を生きていると言われ続けていたガイヤ。

 そして、ニック公が生きていると言われ続けていたマーク将軍。

 あの言葉はそう言う意味だったのだ。

 確かにマーク将軍も最近ニック公とは会っていない…


「ミイラ?って言うのかな、こういうの?」


 そう言ってアズサはとあるものを取り出しマークに投げつけた。

 それは帽子だった

 彼と旧知の友であったマーク将軍たからこそ分かる。

 ニック公がよくかぶっていた帽子だ。


「私が見たところ他殺では無かった。たぶん自然死ね」


 恐らく、イーガリスは父であるニック公が何らかの原因で死亡したのを目撃。

 自分だけがそれを知っているのを利用し、彼の屋敷の周囲を都市開発区域とすることで人足を遠ざけた。

 次の軍閥長にイーガリスを任命するとの偽装文章と共に『YK・ニック公』の死を隠した。

 マーク将軍とは代筆屋の手紙でやり取りをしていた。

 …と言ったところだろう。


「ぐ、軍閥長!どういうことだ!ニック公は本当に…」


「く、くうぅ…」


「説明できるわけ無いよね?ガイヤも将軍をも欺き、そして南ザリィールの民を全員欺いてきたなんて…」


 それを聞き、マーク将軍が腰の剣を抜きイーガリスに突きつける。

 装飾用の剣で切れ味は低いが、殺傷能力は十分にある。

 だがその分、受ける痛みも大きいだろう。


「ま、マーク!」


「気安く呼ぶな!」


 もはや彼は、化けの皮を剥がされた偽りの支配者。

 この場に味方など誰一人としていない。

 いや…


「や、ヤクモ!お前が行け!」


 唯一の味方とも言えるヤクモに救いを求めるイーガリス。

 床を這いつくばり、彼の下へと駆け寄る。

 確かに彼はマーク将軍やガイヤとは違う立場の人間。

 だが…


「何でも好きなものをやる!全員片付ければ将軍の地位だって…」


「自分でやれ」


「…へ?」


 冷たく言い放つと、イーガリスを足蹴にしヤクモはその場から消えた。

 得意の縮地法を使ったのだ。

 全ての失態を晒したイーガリスに愛想を尽かしたのだろうか。


「これでお前さん一人…じゃな?」


「テメーのせいでどれだけ苦労したと思ってるんだ…」


「アタシ達を倒すためにあんなことまでしやがって…」


 メノウ、ショーナ、ミーナがイーガリスを取り囲もうと彼に近づく。

 だが、それを制止する者がいた。


 …ガイヤだ。


 俺にやらせてくれ、とでも言っているようだった。

 剣をイーガリスに向けてゆっくりと構える。

 怒髪天を突くように彼の髪が逆立っているように見えた。


「お、おおお落ち着け!」


「俺の怒りは収まらん!」


 そう叫ぶと、ガイヤは剣を思い切り振りかざした。

 刃は空を切り、衝撃波となってその行く手を遮る物全てを切り裂く。

 だが、ガイヤが切ったのはイーガリスでは無い。


 彼が切ったのはこの城そのもの。


 イーガリスの立っている場所からちょうど後ろが斬撃により切り裂かれた。

 ガイヤ達のいる半分を残し、もう半分の城が音を立てて崩れていく。


「俺の怒り…妹の悲しみをその身に刻め!」


「ああひゃぁぁぁぁ…」


 間抜けな断末魔、そして城の残骸と共に闇に消えていくイーガリス。

 全てを欺き、独裁を続けた男の哀れな末路だった。

 あの一撃を喰らってはまず助からないだろう。


「お、終わったか…」


 そう呟き、その場に座り込むショーナ。

 これまで張りつめていた緊張の糸が一気に緩んだのだろう。

 しかし、事はそう簡単では無かった。


「い、いかん!今の一撃で城全体が崩れ始めるぞ!」


 マーク将軍が叫ぶ。

 城の半分が崩れた事により、もう半分の残った城もバランスを崩し始めた。

 このままでは残りの半分の城も崩壊する。

 もってあと一時間と言ったところか。

 城に残った兵士たちに避難命令を出すマーク将軍。

 残りの者達も急いで避難を始める。


「テリー、立てるか?」


「すまない将軍…」


「ガイヤ、お前は…」


 先ほどの一撃を放った後、ガイヤはその場に呆然と立ち尽くしていた。

 マークのその声を聞いたと同時に、彼の手から邪剣がゆっくりと抜け落ちる。

 高い金属音が崩れゆく城の轟音をかき消すように響き渡った。

 彼の身体からすべての力と生気が抜け、その場に崩れ落ちていく。


「が、ガイヤ!」


「お、おい!」


 皆がガイヤに駆け寄る。


「邪剣の呪いか…」


 邪剣である六夜王権は持つ者に強大な精神的負担をかける。

 今まで彼は、それを妹への思いで無理矢理抑えてきた。

 完全に制御してきたわけでは無いのだ。

 イーガリスの欺きを知ったことにより、これまで抑えてきた六夜王権の呪いが一気に押し寄せてきたのだ。


「あ、ああ…」


「ワシが妹のこと…伝えない方がよかったか…?」


「いや…あんな奴に利用され続けるくらいなら…死んだ方がマシだ…」


 そう言うと、ガイヤは抜き身だった六夜王権を鞘に納めた。

 良く見ると鞘には呪印のようなものが刻まれている。

 鞘に収まっている間は安全ということか。

 既に彼の眼からは光が無くなっている。

 もうまともに眼も見えなくなっているのだろう。


「頼む…誰か…これを…」


「え、あ…ああ」


 それを聞き、ショーナが六夜王権を慎重に受け取る。

 鞘から抜け無いよう慎重に。


「この剣を…封印…してくれ」


 この剣は決して、二度と人の手に渡らせてはいけない。

 もし何者かの手に渡れば大きな災いを引き起こす。

 ガイヤはそう言った。


「こんな面倒なことを押し付けてすまないな…」


「いいよ!もう喋るな!」


「うぅ…」


 ショーナの手を握り締めたまま、ガイヤの命は尽きた。


「…行こう」


 ミーナのその言葉を聞き、彼の遺体を残し皆は部屋を後にした。

 遺体を運んで外に脱出するのはもはや不可能。

 この城が彼の墓標となった…


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