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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第一章 不思議の少女 メノウ
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第十九話 南ザリィールの最も長い夜(後編)

 漆黒のトバリが降り、既に空は黒く染まっていた。

 この永遠に続くかと思われた夜もやがて終焉を迎えることとなる。

 南ザリィールの最も長い夜が終わりを迎える…


「ル、ルナァ!」


「なるほど、それがコレの名か…」


「き、貴様!ルナから…妹から手を離せ!」



 メノウが抱えるモノを見てガイヤが叫ぶ。

 あれが先ほど彼が言っていた妹なのだろう。

 以外過ぎる行動に呆気にとられるショーナ。

 そしてその次にメノウが取った行動。

 それは驚くべきことだった。


「離してほしいか?」


「当たり前だ!」


「そうか…」


 不敵に笑うメノウ。

 手に力を入れた彼女。

 そのまま彼女は…


「や、やめろ!」


「ずあ!」


 メノウは抱えてきた黒騎士ガイヤの妹を思い切り床に叩きつけた。

 鈍く、重い音が部屋の中に響き渡る。

 あまりにも突然の出来事に、その場の皆が一瞬固まる。

 …ただ一人、ヤクモを除いて。


「どうしたガイヤ?妙な顔をして?」


 メノウが言う。

 それを聞き、先ほどまで組み合っていたミーナを弾き飛ばすガイヤ。

 彼女もメノウの行動に虚を突かれ、避けきれなかったのだ。

 ガイヤはメノウを睨み付けると、妹の下へ向かおうと駆けだす。


「これを渡してほしいなら…くれてやるわ!」


 そう叫ぶと、メノウは先ほど床に叩きつけたガイヤの妹を彼めがけて蹴り飛ばした。

 それを慌てて受け止め、メノウに憎悪の目を向けるガイヤ。

 妹の安否を確認しようと彼女の顔を見る。

 だが…


「な、なんだ…『コレ』は…!?」


 ガイヤの顔色が変わる。

 メノウが蹴り飛ばした『モノ』…

 それはガイヤの妹などでは無い。

 ただの精巧に作られた『人形』だった。


「やはり気付いて無かったか…」


「どういう意味だ?」


 ガイヤが問う。

 勝機が無いと悟ったメノウが妹を人質にとった。

 最初はガイヤもそう考えた。

 しかし改めて考えてみると、その人質を粗く扱う意味が解らない。

 その人質だと思っていたモノが人形だったことも。


「(分からない、どういうことだ…?)」


 混乱するガイヤ。

 状況が掴めない。

 そんな彼に対し、メノウは話を続けた。


「お前さんは妹の病気をこう言った。『全身の毛や肌が段々と白くなっていく奇病』と…」


「…それがどうした?」


「あッ!…それって!?」


 それを聞いたショーナが叫んだ。

 彼はこの病気に心当たりがあったのだ。


「知っておったか、ショーナ」


「その病気の名前は『白亜病』、致死率は99%、現代の技術や魔法の類でも治せない不治の病だ」


「意外と物知りじゃの」


「あ、ああ。以前の旅の途中、偶然知ったんだ…」


 この『白亜病』という病は極々一部の地域でしか発病しない病。

 それゆえこの病気を知る者は、この世ではほとんどいない。

 ガイヤの言った通り、全身の毛や肌が段々と白くなっていく奇病だ。

 対人感染はせず、現在の技術や魔法では治療は不可能。

 そして、この病気を患った者の余命は…


「もって半年の命、普通は二、三か月といったところじゃな」


「ふ、ふざけるな…そんなこと信じられるわけ…」


「信じる信じないは勝手じゃ。だが恐らく、本物の妹はもう…」


 残酷なほど冷酷に言い放つメノウ。

 一方、ガイヤからは先ほどまでの覇気はすっかり失せている。

 メノウの言うことを必死で頭の中で否定しようとする。

 だが、彼女の言うことは全て辻褄が合っている。


「(そう言えば俺はここ最近直接会っていなかった…)」


 会おうとするとイーガリスに止められ、仕事を渡された。

 またあるときは面会謝絶だと言われた。

 そして彼が妹と最後に会ったのは発症から数か月後のとある日だった。

 やはり妹は既に…


「軍閥長!将軍!どういうことか説明してもらおうか!」


 ガイヤが二人に向かって叫ぶ。

 剣を構え、答えなければ切るとでも言っているようだった。

 それを見たマーク将軍が必死で弁明する。


「わ、私は何も知らん!すべて軍閥長が…」


「この南ザリィールの実質的No.2の男が何も知らない訳無いだろう!」


「いや、将軍は本当に何も知らないよ!」


 ガイヤの声を遮るように、何者かの声が部屋中に轟く。

 その声の主、それは忍装束に身を包んだアズサだった。

 それを見たショーナが驚いた様子で叫んだ。


「わ!アズサか!?なんだその恰好!アレか?過激派宗教組織なのか!?」


「ちがう!これはくノ一!昼は店のお手伝い。夜はくノ一。なんてねっ」


 そう言いながら軽く印を結ぶふりをするアズサ。

 元々あの東洋街(オリエントタウン)に住む者達は『サムライ』や『ニンジャ』といった者達の末裔が多い。

 彼女も実家が代々の隠密をしているのだ。


「ショーナくん達二人にはばれなかったけど、メノウちゃんには一発で見破られちゃった」


「そこの女ニンジャ!将軍は何も知らないとはどういうことだ、ビックリさせてくれるなぁ!?」


 ガイヤがアズサに向かって威嚇するように吠える。

 妹に対する思いが暴走し、もはや半ば正気を失いかけているガイヤ。

 だがアズサはそれにも全く動じない。

 幼いながらもその胆力は大したものだ。


「ガイヤさん、将軍もあなたと同じってこと」


「将軍が俺と…?」


「そ、それはどういう意味だ?」


 ガイヤとマーク将軍の二人か同時に叫ぶ。

 名君と言われ、民衆からも慕われていたニック公。

 そのような男が、イーガリスを次の軍閥長にするとはメノウにはどうしても考えられなかった。


「将軍、いえこの南ザリィールそのものを軍閥長であるイーガリスは欺き続けていたのよ!」


 この城に入る前、メノウは隠密であるアズサに『あること』を依頼した。

 それは前軍閥長である『YK・ニック公』の身辺調査だった。

 ニック公はあの屋敷に監禁され、イーガリスに都合のいいように利用されているのではないか?

 メノウはそう睨んだ。

 もしそうであれば、彼を救い出しイーガリスの呪縛から解き放って欲しい。

 そうアズサに言ったのだ。

 だが…


「メノウちゃんの予想は半分当たっていて半分はずれてたわ」


「お、それはどういう意味じゃ?」


 アズサの言葉に目を丸くするメノウ。

 てっきり自分の予想はほぼ当たっていたと思っていた。

 だが、半分違うとはどういうことだろうか?


「ニック公は…既に死んでいたのよ」


 アズサの衝撃の発言。

 それを聞いたすべての者が、その場で凍りついた。

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