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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第一章 不思議の少女 メノウ
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第一話 不思議の少女 メノウ

 


「ッは!?」


 どれくらい時間が経っただろう。

 先ほど湖に沈んだはずのショーナは何故か地上で目を覚ました。

 少し起き上がり辺りを見回す。

 古い遺跡のような建造物があたりに点在している。

 ということはここは…?


「ここはまさか…古代遺跡…?」


「そうじゃよ」


「えっ!?」


 ショーナの声に便乗するように一人の少女が遺跡の中から現れた。

 歳はショーナと同じくらいだろう。

 透き通るような白い肌。

 そして同じく白いローブとベールを羽織った神官のような姿をしている。


「お、お前は一体…!?」


 この古代遺跡には不釣りあいな清潔感のあるその姿。

 整えられた長く深緑の髪。

 しかし、なぜこんな古代遺跡に少女がいるのだろうか…?


「まぁまぁ、とりあえず落ち着け」


「お、おう…」


 そう言われ、ショーナは少し平静を取り戻した。

 それにしても妙な喋り方をする。

 ショーナと同じく、年齢は12~13歳程度だろう。

 にもかかわらず高僧のような奇妙な言葉遣いをする。

 顔はかわいいが、何を考えているのかは分からない。

 神官の少女とはこういうものなのだろうか?

 そう思い、ショーナは深くは考えなかった。


「訊きたいことがあるんじゃろう?一つずつ順番に答えてやるから、言ってみろ」


 少女が言った。

 確かに、ショーナには聞きたいことが山ほどあった。


「まずお前の名前は…?」


「メノウじゃ」


 きょとんとした顔で言うメノウ。

 じっとショーナの顔を見つめる。

 少々照れくさくなってしまい、ショーナは思わず顔を背けてしまった。


「わ、わかった、じゃあ次。俺はどうしてここに?」


「湖でおぼれていたのをワシが助けた」


 そう言われてショーナは先ほどの出来事を思い出した。

 湖で化け物に襲われたことも。

 もしこの少女、メノウが居なければ今頃どうなっていたか…


「あ、ありがとう…!助かったよ!」


「礼には及ばんよ。たまたま…」


「ううん、命の恩人だよ!」


 そう言われ照れくさくなったのか、先ほどのショーナの様に顔を背けるメノウ。


「なはは…」


「そういえば、おま…キミは…」


「メノウでいい」


「そ、そうか…?」


「ああ。呼び捨てで構わんよ。あまり気を使わんでくれ」


 一通りのやり取りを進め、さらに話は進んだ。

 詳しくは話してはくれなかったが、どうやらこの少女『メノウ』は古代遺跡の『とある秘密』を握る存在らしい。

 その秘密が何かとショーナは尋ねた。

 だかメノウは複雑な言葉や言い回しを多用し、それを話すことは無かった。

 しかし、それ以外のことは聞けた。


「以前、ザリィーム帝国の調査隊が来たときに奴らはこの遺跡にある秘宝を持ち去ったんじゃ」


「秘宝…?」


「昔の石版とか石碑とか…まあいろいろじゃ」


 その後もメノウは詳しく話してくれた。

 どうやら持ち去られた物はかつて儀式に使われた物やミイラ化した当時の偉人の遺体などだという。

 確かに歴史的な価値はあるのかもしれないが、簡単に金に換えられるものでは無い。

 見世物にでもするのだろうか。


「それら以外に盗られたものとかは無いのか?」


「特には無いのぅ」


 それを聞き内心喜ぶショーナ。

 どうやら王国の調査隊は遺跡の調査だけを済ませ、他のものは手つかずのまま帰ったらしい。

 それならば、古代人の残した宝物などが残されているかもしれない。

 神官?であろうメノウには悪いが少し頂こう。

 そう思うショーナだった。

 しかし…


「一応言っておくけど、遺跡には金銀財宝なんてないからな」


「お、おう…」


「まぁ、その代わりにいいものをやろう」


 そう言うと、メノウは懐に手を入れある物を取り出した。

 そしてそれをショーナに投げつける。


「おっとっと…」


「それだけでも、ここまで来た価値があるというものじゃろう?」


「これって…金か!?」


「売れば結構な値段がすると思うが?」


 メノウの渡したもの、それは金でできたナイフだった。

 同じく黄金で作られ、宝石で装飾された鞘に入っている。

 刃は実際には入ってはおらず、単なる装飾用の物のようだ。

 黄金としてもかなり純度の高い、超高価なものだろうということは容易に想像できた。


「それをやる代わりに一つ、頼みごとを聞いてもらいたい」


 ショーナに対し、不思議の少女メノウに言い渡されたある条件とは…


「ワシを遺跡の外に連れ出してくれ」


「え…?」


「しばらく外には出て無くてのぅ」


「は、はぁ…」


「身なりを見る限り、お主は旅人じゃろう?」


 ずっと遺跡に一人でいて退屈なのだろうか。

 確かに気持ちは分からなくもない。

 しかし、一人だけでも大変なのにさらにこんな変な喋り方の少女まで連れては面倒な旅になる。

 第一、ショーナの持ち物には一人分の生活用具しか…


「持ち物…あ、俺の荷物!」


 肝心なことをショーナは忘れていた。

 先ほど湖で化け物に襲われた際、荷物を湖に落としてきてしまったのだ。

 回収などとても不可能。そもそも水没してしまっている。

 これでは旅を続けることができない。

 いや、その前にこの遺跡の森から出ることさえできない…


「そうだった…あんなのがいるんじゃあ、この森から出ることすら…」


「森から出る方法ならあるぞ」


「それは本当か!?」


 メノウの言葉に飛びつくショーナ。


「ああ、古代遺跡は地下にも広がっておってのう。森から外に出る通路もあるんじゃ」


「本当かよ!」


「ああ、その代わり外に出たら一緒に旅について行ってもいいか?」


「いいぜいいぜ!」


「よし、では早速森の外に続く通路を案内してやる。来い」


 古代遺跡のある、森の地上には恐ろしい化け物がたくさんいる。

 しかし、地下ならばそれも無い。

 安心して通れるというわけだ。

 急造の松明を使いながら地下の通路を進んでいく。

 石でできた遺跡とはいえ、作りは非常にしっかりとしている。

 崩落の心配はなさそうだ。

 やがて地下通路の天井から光が差している部分があった。

 その部分の石を外し外に出る。


「意外と早く出れたな」


「ほぅ、今の外の世界はこんな感じになっているのか」


 出たのはちょうど数時間前、賊に襲われた場所の近くだった。

 森を横断する道の入り口付近だ。

 日は沈みかけ、もうすぐ夜のとばりが降りようとしていた。

 と、その時…


「おい、ガキ共!」


 どこか聞き覚えのある声があたりに響き渡る。

 ショーナが振り向いたその先にいた人物、それは先ほど襲い掛かってきた賊の男だった。

 どこからか連れてきたのか馬に乗っていた。

 ショーナの逃亡能力の高さから、追跡用に馬を用意したということだろう。

 馬から降りると、賊の男が刀を抜きながらこちらに歩いてくる。


「へへ、ここで会ったのも何かの縁だ。さっき盗り損なった黄金をいただく!」


「く、くそぉ…」


「ガキ、女も一緒に連れてたのか?ならソイツもいただくぜ」


「誰がお前なんかに!メノウを渡さない!」


 ショーナが叫んだ。

 道に落ちていた太い木の棒を拾い、構える。

 脚と手は震えている。

 いつもなら逃げ出していたかもしれない。

 しかし、何故かそれができなかった。


「うるせぇ!死んで後悔しやがれ!」


 賊の男が飛び掛かる。

 その瞬間、一陣の風が吹いた。

 何かがショーナを横切る。

 彼の手から太い木の棒が消えた。


「え…?」


 ほんの瞬き一、二回の間だっただろうか…?

 信じられないことが起きた。


「グッ…ア…」


 賊の男は吹き飛ばされ、遥か先の石壁に叩きつけられていた。

 そして先ほどまで賊の男がいた場所には、太い木の棒を持ったメノウの姿があった。


「メノウ、お前は一体…?」



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