第十八話 南ザリィールの最も長い夜(中編)
「あれは…ミーナの三節混!?」
「そのとーり!おまたせ」
「アズサから全部聞いたぜ、メノウ!」
壊された扉の前に立つミーナとショーナ。
アズサからメノウが城に殴り込みをかけることを聞いた二人は彼女の制止を振り切り駆け付けたのだった。
「黙ってて欲しいと言ったのに…」
そう呟くメノウ。
だがその内心は逆だった。
一人で戦うことに限界を感じていたところに、二人が来てくれた。
それだけで嬉しかった。
彼女の折れかけていた心に再び火が付いた。
「メノウ、大丈夫かよ!」
「あ、あんまり…」
二人が来てくれたとしてもガイヤに勝てるかどうかは分からない。
仮に逃げたとしてもヤツは確実に、どこまでも追ってくるだろう。
つまりここでケリをつけるしか未来は無い。
しかし正攻法で戦っていては勝てない…
「…ミーナ、あやつの妹は知っとるか?」
「え、何で急に…」
「早く答えてくれ!」
「あ、ああ。知ってるさ…」
普段とはまるで違う剣幕で叫ぶメノウ。
その剣幕に圧倒されるミーナ。
一応、かつては同じ四重臣として活動していただけありミーナも多少は知っているようだ。
「どこにいる?」
「あの奥に治療室が…」
ミーナが部屋の隅の扉を指さす。
「頼む…」
「え、なに?」
「時間稼ぎ頼む!」
ミーナの多節混を拾い上げ、彼女に渡すメノウ。
それとほぼ同時に、ダッシュで部屋の隅の扉を目指し飛び込んだ。
ガイヤと、何故かイーガリスが血相を変えメノウを止めようと叫ぶ。
「あのガキ!」
「と、止めろ!」
ガイヤの妹を人質にする気だろうか?
一瞬そう思うショーナ。
だが、メノウがそのような性格ではないことは彼が一番よく知っている。
では何故…
「や、ガイヤ!早くアイツを!」
「当然だ!」
「おっと、アンタの相手はアタシだ!」
ミーナがガイヤの前に立ちはだかる。
剣を振りかざし、ミーナを真っ二つにしようとするもそれを三節混で受け止められる。
…いや、正確には『三節混の内部ワイヤー』に、だ。
「こいつは内部にディオンハルコス合金製のワイヤーを通した特性の三節混さ!…ってどっかで言ったなこのセリフ!」
「何!ディオンハルコス合金だと!」
「そう、その剣と同じ素材だ!」
三節混の中央で剣の直撃を回避。
衝撃波を両サイドの混で受け流す。
対ガイヤにおいての回避としては理想的な方法だった。
「が、ガイヤ!さっさと始末しろ!」
「わかってる!」
ここにきて焦りが見え始めるガイヤ。
勝負を急ぐあまり、戦術が一気にお粗末になる。
先ほどまでとはまるで別人のように動きが単調になっている。
それとは別に、ミーナの目的はあくまで時間稼ぎ。
とにかく逃げては受け流し、の繰り返しだ。
「絶対に通さない!アイツのために!」
そういうと、ミーナが棒を構え突進してきた。
小手調べとばかりに、棒で連続突きを繰り出す。
ミーナの連続突きを軽く避け続けるガイヤ。
「全部避けたか、結構やるじゃない」
「くうぅぅぅ!」
そう言うと、ミーナが再びガイヤに向かって突進する。
身軽な動きでガイヤを翻弄する。
猫のような素早さ、身軽さで敵を翻弄し混乱させたのちに敵を倒す。
それが彼女の必勝戦法。
しかし今日だけは違う。
メノウを先に通す、そのための戦い。
時間を稼ぐための戦いだ。
「確かに早い。だが、見切れんほどでもない!」
「そうかな!?」
ミーナが棒を、ガイヤの頭上から思い切り叩きつける。
当然、その攻撃もガイヤは避けた。
だが…
「あ、かぁ…!」
頭上からの攻撃をガイヤは体を右に移動させることで避けた。
しかしその瞬間、ミーナの持っていた棒が割れ、ガイヤの横腹に叩きつけられた。
脇腹を抑え、後ろに下がるガイヤ。
鎧を身に纏っているとはいえ、完全に意識外からの攻撃を受けてしまった。
時間を稼ぐために余裕ある戦いを展開するミーナ。
先へ進むために勝負を焦るガイヤ。
二人の関係は今、『朝日のような白色』と『闇夜のような黒色』のように対照的だった。
「や、ヤクモ!お前があいつを止めろ!」
「はい、では…」
「させるか!」
「なんと…ッ!」
ショーナがヤクモに飛び掛かる。
高台にいた彼はショーナと共に階段を転がり落ちていく。
「行け、メノウ!」
「おぉ…痛い痛い…」
「妙な動きはするな!頭ぶち抜くぞ!」
ヤクモの頭に剣を突きつけるショーナ。
これはお手上げだ、とでもいうようにヤクモは両手と上げ首を横に振った。
「マーク、俺様と一緒に来い!アイツを止めるぞ!」
「さ、させるかよ!」
先ほどまで気絶していたテリー。
彼が最後の力を振り絞って起き上がり、壁に飾ってあった装飾槍を手に持つ。
そして、イーガリスに向けて投擲した。
直撃はしなかったものの、その槍は彼の足元の床に突き刺さった。
「ひぇっ…」
その槍を前に腰を抜かすイーガリス。
テリーの執念が彼の足を止めた。
「こうなりゃ手でも足てもなんでも貸してやる!行けぇ!」
叫ぶと同時にその場に崩れ落ちるテリー。
意識自体はハッキリとしているが、もうほとんど動けないようだ。
一方で、腰が抜けたイーガリスはその場から立ち上がれないでいる。
「ま、マーク!お前だけでも…」
「もう遅いわ」
そう言って、メノウが扉から姿を現した。
その手には、何かを抱えているようだった。
「ル、ルナァ!」
それを見たガイヤが叫ぶ。
あれが先ほど彼が言っていた妹なのだろう。
以外過ぎる行動に呆気にとられるショーナ。
「め、メノウ」
「おっと、油断は禁物ですよ!」
「うおッ!?」
その隙にショーナの剣を弾き飛ばし、ヤクモが彼から距離を取る。
そしてイーガリスの元へと移動する。
「なるほど、それがコレの名か…」
「き、貴様!ルナから…妹から手を離せ!」
「離してほしいか?」
「当たり前だ!」
「そうか…」
そう言うとメノウは…
ガイヤの『妹』を思い切り床に叩きつけた。
鈍い音が部屋に響き渡った。
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