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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第一章 不思議の少女 メノウ
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第十七話 南ザリィールの最も長い夜(前編)

テリーの放った迫撃砲による攻撃。

それはイーガリスに当たることは無かった。

この距離で外すわけがない。

彼は何が起こったかわからず、動揺を隠せぬようだ。

迫撃砲の爆風の中から現れたのは、イーガリスを守るように立つ一人の黒い騎士。


「軍閥長は殺させない」


彼が四重臣最後の一人『黒騎士ガイヤ』だ。

これまでの三人とは明らかに実力が違う。

今の砲撃も彼が何らかの方法で避けたのだろう。


「下がってろ」


そう言うと、ガイヤはテリーを軽く睨み付ける。

その眼には冷たく、感情がこもっているのかどうかも分からない。


「軍閥長の犬が!さっきは何をしやがった!」


ガイヤのいる高台を目指し階段を上りながら、テリーが叫んだ。

だが、それをガイヤは一蹴した。


「知る必要は無い」


その声と共に、一瞬ガイヤの姿が消える。

だが、メノウは辛うじてその動きを捕えることはできた。

実質的なスピード自体は以前出会ったヤクモとそう変わりは無い。

だが軽量な装備のヤクモに対し、ガイヤは鎧を纏い剣を所持。

さらに魔法による縮地法を使うヤクモと、純粋な脚力による高速移動。

どちらが上かなど比べられるはずがない。


「(超高速移動…!)」


ガイヤが姿を現したと同時に、テリーの身体が宙を舞う。

彼の担いでいた迫撃砲は真っ二つに切断されていた。

ガイヤの持つ剣が抜いたかどうかまでは見えなかった。

だが恐らくその剣で切断されたのだということがわかる。

テリー自身は外傷自体は無いものの、切断の際の衝撃波で床に叩きつけられた。


「よくやった!コイツは明日処刑だ!」


「く…そッ…」


「じゃあ、次はあのガキの相手も頼む」


イーガリスが言った。

それを聞き、一瞬ガイヤの表情が曇る。

ここにきて初めて、彼の感情が見えた気がした。


「だが相手はまだ子ども…」


「俺様に逆らうとどうなるか…?分かっているな?」


イーガリスが不気味な笑みを浮かべる。

それを見たメノウがガイヤに問う。


「お前さんは何故あんなのに従う?」


「いきなりどうした?」


ガイヤほどの力があれば、わざわざ誰かの支配下に着くことも無い。

イーガリスを倒し、自身が軍閥長になることもできるだろう。

少なくともイーガリスよりははるかに頭の切れる人物でもある。

それ程の男が何故、軍閥長の部下などをしているのか。

その問いに対しガイヤはこう答えた。


「軍閥長は俺達を助けてくれたからだ」


「『達』…?」


「俺と俺の妹だ」


そう言うと、彼はこれまでの経緯を語りはじめた。

数年前ガイヤはかつて、ザリィール帝国直属の親衛隊に所属していた。

だがとある事情で除名され、唯一の肉親である妹と共に流浪の旅に出たガイヤ。

しかし…


「旅の途中で妹が病気を患ってしまったんだ…」


まだ幼かった彼女は、旅の疲れや衰弱などから謎の風土病になってしまった。

有用な薬はほとんど存在しない。

特殊な風土病の薬など…


「全身の毛や肌が段々と白くなっていく奇病だった。どこの村医者も匙を投げた…」


そんな彼の前に、イーガリスが現れた。

当時、四重臣のメンバーを集めていた彼。

マーク将軍からガイヤの噂を聞きつけてやってきたのだった。

高い給料といい生活を保障するから仲間になれ、彼はそう言った。

ガイヤはそれに加え、妹の治療を要求。

イーガリスはそれを了承した。


「…今、妹さんはどうしてる?」


「療養中だ」


面会謝絶ではあるため直接会えてはいない。

だが、この城に専門医を何人も集めてくれたおかげで回復に向かってるらしい


「…そうか」


何とも言えない、不思議な表情を浮かべるメノウ。

一体彼女は何を考えているのだろうか…?

そのようなことは一切気にも留めす、ガイヤは『ある提案』をメノウに叩きつけた。


「できれば子供は殺したくない。お前、俺たちの仲間にならないか?」


「何?」


「ヤクモと俺、お前の三人で…」


「あんなヤツの下でなど働きたくないわ!」


「ガイヤ!ソイツを殺せ!」


「…ッ!悪く思うな!」


それを聞き、ガイヤは自身の持つ剣を抜いていく。

黒い柄と不気味に輝く緑色の剣身。

それを見てメノウは理解した。

先ほど感じた嫌な気は、この剣から発せられていたのだと。


「な、なんじゃ…その剣は…」


その美しい見た目からは想像できないほどの凶器を秘めたその剣。

このような禍々しい剣は見たことが無い。

それの持つ業に圧倒され、無意識のうちに数歩後ずさりしてしまうほど。


「あれは邪剣『六夜王権』、世界四大宝剣の内の一振りです」


その言葉と共に現れたのはヤクモ。

いつの間にかこの戦いを影から観戦していたようだ。

高台からガイヤとメノウの二人を見下ろすように語り始める。


「邪剣『六夜王権』…」


「大昔に東方大陸の鍛冶師が生み出した妖剣です」


東方大陸の鍛冶師が伝説のディオンハルコス合金を元に生み出した剣。

それが『六夜王権』だった。

強大な力を持つが、持つ者に呪いをもたらす。

それゆえに邪険とも呼ばれる。


「それを軍閥長はどこからか入手し、ガイヤに渡したというわけです」


「そ、そんなものを持って、お前さんは平気なのか!?」


メノウがガイヤに問う。


「正直かなりキツイさ。少しでも油断したら一瞬で精神が崩壊するほど…」


そう言いながら、ガイヤが地を蹴りメノウに向かって突進する。

先ほどのテリーの時と同じく一撃で仕留めるつもりだ。

それを後ろに身体を移し間一髪避けるメノウ。

だが、邪剣『六夜王権』の放つ衝撃波により弾き飛ばされてしまう。

着地する寸前に何とか受け身を取るも、全身の骨が砕けるほどの衝撃が走る。


「うぅ…!」


ただの衝撃波だけでこの威力。

メノウの主な戦闘パターン、それは近接戦闘による高速の連撃により相手を倒すことにある。

だが、ガイヤに近接戦闘はほぼ不可能。

まず間違いなく、近づいただけであの剣にやられる。

それ以外の戦術となると、メノウが使える魔法ということになる。

だが、魔法など出す前にやられるのがオチだ。


「やれ!ガイヤ!」


イーガリスが物陰から叫ぶ。


「…終わりだ!」


剣がメノウに向かって構える。

直接当てるまでも無い、衝撃波だけで倒せる。

そう考えての判断だった。

だがその時、ガイヤの顔が一瞬歪んだ。

彼の手に投擲された『何か』がぶつかり剣を手放しそうになる。


「ッ!」


投擲されたモノ。

それは…


「あれは…ミーナの三節混!?」


「そのとーり!おまたせ」


「アズサから全部聞いたぜ、メノウ!」



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