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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第一章 不思議の少女 メノウ
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第十五話 ここがシークマント 業人の巣食う街

 南ザリィール軍の猛攻に次ぐ猛攻。

 メノウたちは陸戦部隊を次々退けることに成功。


 あの猛攻撃から数日が経った…


 ヤクモの言った通り追手なども現れなかった。

 メノウたちは『死亡』扱いとなったため、その時点で追跡自体が解除されたらしい。

 そのおかげもあり、メノウたち三人は意外と早くシークマントに到着することができた。


「意外と早く着いたのぉ」


「へへ、想定外だったな!」


 ショーナが言った。

 道中で出会ったB基地司令官のヤクモとも戦わずに済み、わずか数日でたどり着いたのだった。

 シークマントは南ザリィール最大の街。

 またザリィール帝国内では『東ザリィールの港町』に次いで二番目に大きい港町でもある。

 そのため、東ザリィールほどでは無いが他の国からの移民も比較的多い。


「おー、まるで別の国みたいじゃ!」


「本当だ、こんな大きな街見たことないぜ…」


 シークマントの街並みを見てはしゃぐメノウとは反対に、思わず圧倒されるショーナ。

 多くの人が行きかう大通りや、レンガ造りの大きな建物など今まで見たことも無い物ばかり。

 一方でミーナは、司令官時代に何度かシークマントに召喚されている。

 そのためそれほど驚くものも無かった。

 だがそんな彼女が、唯一気になる物が街の一角にあった。

 それは…


「シークマントの東洋街(オリエントタウン)、何度見てもここは飽きないねぇ」


「おり…えん?」


 聞き慣れない単語に戸惑うメノウ。

 東洋街(オリエントタウン)はこのシークマントの街に作られた移民の街。

 東の国から移り住んできた者達が暮らしているらしい。

 木や紙で作られた建物が多く立ち並んでおり、ひときわ異彩を放っている。


「オリエント、つまり東方大陸からの移民が多いのさ」


「東かぁ~、いつか行ってみたいのぉ…」


「東ねぇ…」


 そう言いながら、東洋街(オリエントタウン)へと入っていく三人。

 店が多く並び、喧騒と活気づいている。

 道を行く人々は見慣れない服を着ている者が多い。

 少し疎外感を覚えるショーナ。

 だが、それとは反対にメノウは初めて見る東洋の文化に興味津々のようだ。


「この店は何じゃ?」


「オイオイ!それは!?」


 メノウがとある店を指さす。

 そこは少し妖しい雰囲気のある大人の店。

 俗に言う『遊郭』というヤツだった。


「なぁ、ミーナ!この店…」


「知らなくていいよ!」


 ミーナが叫ぶ。

 ショーナも最初はその店が何かわからなかったが、その様子を見てなんとなくではあるが店の正体を察した。


 …だがここで一つ気になることがあった。


 周囲を改めて見回してみると、似たような店が多いことに気付く。

 街を歩く者達も、よく見ると派手な格好の女とその連れの男といった組み合わせが多い。

 遊女とその客、といったところだろう。


「なぁ、ミーナ。この辺りって…」


 ショーナがそう言いかけたその時、道の曲がり角から何者かの叫び声が聞こえた。

 空を切るような金切り声が辺りに響き渡る。


「なんだ!?」


 一旦会話を後回しにし、その現場に向かう三人。

 あの叫び声はただ事ではない。

 事故か、事件か…?

 その現場では、ガラの悪いならず者とそれに絡まれている少女がいた。

 そしてその傍らにはならず者の男のツレらしき人物が倒れている。


「よくも俺のダチを!」


「はじめに絡んできたのはそっちでしょ!」


 建材と思われる木の棒を片手に少女が言った。

 恐らく先ほどの叫び声はあの倒れているならず者の男の声だろう。

 どうやらこのならず者の三人組は、町で遊女の卵を探していたらしい。

 この少女に声をかけたところ、それを断られ襲うも返り討ちにあった…といったところか。


「こ、このアマぁ! やりやがったな…!」


 先ほどまで倒れていた男が起き上がり、鞘から刀を抜く。

 さすがに少女は腰が抜けたのか、尻餅をついてしまう。

 このままでは少々まずいことになる、そう思ったショーナは二人の前に少女を守るように立ちはだかった。


「おい、女の子一人相手にそうムキになるなよ!」


「いいとこで邪魔するな! お前も斬られたいか!」


「…チッ、白けたな。おい行くぞお前ら」


「へ、へぇ…」


 ならず者の男が苛立って刀をこちらに向け威嚇する。

 しかしショーナの乱入で白けたのか、兄貴分の男がそれを制止した。

 ならず者たちは刀をゆっくりと納め、その場を去って行った。

 ショーナはその場で尻餅をついている少女の方に目をやり、手を伸ばす。


「もう大丈夫みたいだ。立てるか?」


「ありがと…いてて…」


 足首を押さえ、唸る少女。

 どうやら、尻餅をつく時に捻挫したらしい。


「しょうがねぇなぁ、おぶってやるよ」


 ショーナは顔を少女に振り向け、背中を少女に向けた。

 この少女の家がどこかは知らないが、格好からして東洋街(オリエントタウン)の住人には違いない。

 そう遠くでもないだろう。


「家どこだ?」


「あっちの方」


 そう言いながら、少女の指さす方へ歩いて行くショーナ。


「アイツ、結構やるじゃん」


 ミーナとメノウも二人の後を追った。

 どうやら少女の家はそう遠くではないらしい。

 道を少し進み、曲がり角を二つ三つ曲がるとすぐについた。

 だがそこは…


「ここだよ」


 少女が指差した場所、そこは遊郭だった。

 さきほどメノウが見た遊郭ほど大きなものではないが。

 思わずショーナが声を上げる。


「お前、遊女か…?」


「いや、あたいはただの手伝い!裏方のね!」


「あ、そっかぁ」


 さすがに正面から子供が入っていくのはいろいろとマズイ。

 少女に言われ裏口に回り、そこから店内に入っていった。

 店内といっても、裏方の作業所兼寮のような場所だが。

 住み込みで働いている者達のための部屋が何個かあり、そのうちの一室に案内される。

 靴を脱ぐように言われ、言われるままに上がるメノウ達三人。


「さっきはありがとう、おかげで助かったよ」


 そう言いながら、少女は茶と菓子をメノウ達三人に出した。

 狭い部屋なので、座った姿勢でも少し動けば置いてある者に手が届く。

 菓子はよくわからない東洋の物、茶は以前の飲み残しを温め直したものだ。


「そう言えば自己紹介まだだったね、あたいの名はアズサだよ」


「え~っと、俺たちは…」


「知ってるよ、ショーナくんにメノウちゃん、ミーナ元司令官でしょ?」


 アズサがニヤリと不気味に笑いながら言う。

 新手の追っ手、あるいは賞金稼ぎか?

 追跡が消えたとはいえ、まだそれを知らない者もいる。

 武器を構えるミーナと、辺りを見回すショーナ。

 だが…


「な~んて、ごめんね。別にあなた達をどうかしようってわけじゃないから安心して」


 アズサは以前、この店に訪れたザリィール帝国兵士からメノウたちのことを教えてもらったことがあるらしい。

 もちろん、普通の手配書なら記憶にも残らない。

 だが、自分と同じくらいの少年や少女ということが特に印象深かった。

 そのため記憶していたようだ。


「この街の住人は統治者の軍閥長に対してあんまり良く思ってないから、あなた達を売るようなことはしないよ」


「…この遊郭を建てたのも軍閥長の指示。違うか?」


 メノウが言った。

 この街シークマントは元々は商業が盛んな移民の多い港町として有名だった。

 軍港でもあるため、軍人や船乗り、漁師等も多く店を訪れ街は活気に溢れていた。

 しかし、先代から今の軍閥長に変わってその状況は一変した。


「ヤツは、この街を自分の好きなように作り変えていったの…」


 軍閥長が最初に作ったのは、自分に逆らった者を公開処刑するための『処刑場』だった。

 数人が見せしめで殺され、恐怖政治が始まった。

 逆らうものや文句を言うもの、自分を敬わなかったものを捕え、処刑していった。

 その後、処刑された者達が持っていた財産や土地を没収しその場所に自分の好みの店や建物を建てた。


「軍閥長の恐ろしいのは、自分が『悪』であると自覚していないところさ」


 その後、軍閥長はならず者をザリィール帝国軍人として独断で雇い遊郭等の施設を作るために利用した。

 人攫いなどに彼らを使ったのだ。

 また、南ザリィールの各地方でもならず者を雇い各基地を設立させた。

 そのせいで街にならず者が増え、シークマントからは以前の活気は無くなってしまったというのだ。

 思わず、服をぎゅっと握りしめるアズサ。


「あたいは遊郭なんかで男の相手はしたく無い。裏方で働いてはいるけど…」


 そう言い、しばらく沈黙が続く。

 シークマントの街の裏の顔を知り何とも言えない気分になるショーナ。

 この活気に溢れた街にそのような秘密があるとは思いもしなかった。


「…でも、それさえ除けば嫌な街ってわけでもないよ」


 先ほどはああいったが、シークマント自体は決して悪い街ではない。

 名所だってたくさんある。

 できれば客人であるメノウに悪い印象は持たれたくはなかった。

 そこでメノウの提案により、街を観光することになった。

 手配は現時点で解除されているため、捕まる心配も無い。


「おーい、ショーナ達はどうする?」


「俺はいい、少し疲れたよ」


「アタシは何回か来たことあるし、パスだ」


 二人は街の観光を断った。

 ならばと、メノウとアズサは二人を残し出かけていった。

 万が一のことを考え、メノウは代わりの服を借り簡単な変装をすることにした。

 アズサから借りた着物をきて、元々来ていたローブとベールを袋に入れる。

 部屋に残された二人には土産を買ってくる、そう言い残して二人は出て行った。


「遅くなる前に帰って来いよー」


「おう!」


 暇つぶしに本でもないかとショーナは部屋を見回す。

 だが、読めない言語の本しかなかった。

 仕方がないからそのまま寝ることにした。

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