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最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第一章 不思議の少女 メノウ
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第十四話 南ザリィール最強の男

 

 あの攻撃作戦から数日後。


 シークマントの軍閥長の城。

 そこでは、軍閥長であるイーガリスがマーク将軍から喜々として戦果を聞いていた。

 陸軍第一陣の侵攻は失敗。

 しかし第二陣の攻撃により森は焦土と化した。

 その報告を確認する限りでは、いくらあの三人と言えども生きているわけがない。

 彼はそう確信した。

 だがその一方で、マーク将軍の顔は暗い。


「やったなマークよ!見事な手腕よ」


 珍しくイーガリスが部下を褒め称えている。

 しかしマークは素直にはよろひべなぃ。

 報告を聞く限りでは、作戦の伝達にミスがあったのは明白。

 そしてその理由がイーガリスにある、ということも。


「しかし陸軍側の被害が甚大です。これでは…」


 最初はマークや各部隊の隊長たちが中心となり作戦を立てていた。

 しかし、その途中でイーガリスが乱入。

 自分も作戦を立てたい、と言ってきたのだ。

 彼は軍事作戦などはド素人も同然。

 しかし軍閥長の命令だ、断ることは出来ない。


「勝利は勝利だ」


「しかし…」


「うるさい!さっそく宴の用意をしろ!もちろん、女もな」


 あまりの傍若無人さに声も出ないマーク将軍。

 もしこの男に何の権力も、富も無ければこのような事態は防げたのかもしれない。

 もし彼が前軍閥長の息子などでなければ。

 そう思うと何とも言えない、やるせない気持ちになる。

 しかし逆らう訳には行かない。

 宴の準備を部下に任せ、その場から退室するマーク。


「ヤクモ、お前はどうする?」


「失礼、私はまだ仕事が残ってるので…」


 そう言うと、ヤクモは一人部屋を後にした。

 彼は確信していた。

 あの攻撃であの三人が仕留められるはずなど無い、と。


「(恐らくあの三人は…)」


 ふとした気まぐれから、彼はそれを確かめたくなった。

 城を出る際に、部下に馬と少しの食糧を用意させる。

 周囲に悟られるよう、内密に。


「数日で戻る、軍閥長には資料集めだとでも言っておいてくれ」


「わかりました!」


 このシークマントから縮地法を何度も重ねて使い、メノウたちのいた場所を目指す。

 元々彼は縮地法、つまりは一種の瞬間移動の魔法を戦闘に織り交ぜた闘いを得意としている。

 それを馬での移動に応用しているのだ。


「どっちから行くか?」


 メノウたちのいた場所に至る道は二つある。

 一つはわき道や裏道を通る方法。

 整備があまりされておらず、道中で盗賊が出るかもしれない。

 しかし、早く着く。

 もう一方は整備された旅のための大通りだ。

 旅の往来であり、商人や旅人などは通常はこちらを利用するのだ。

 大通りを通っていくか、それとも裏道で行くか。


「あのメノウという少女がもし、私の思う人物であるなら…」


 裏道から行くか。

 ヤクモがそう思いながら馬を走らせる。

 と、その時…


「どうするんだい?」


「…ほう!」


 ヤクモの後ろでよく聞き慣れた声がした。

 振り返る必要もない、その声の主を彼は一瞬で理解できた。

 そして、その声の主が何をしようとしているのかも。

 瞬間移動により声の主から間合いを取りその正面に立つ。


「やはり、生きていましたか…」


「当たり前だ!」


 声の主、それはかつての仲間ミーナ。

 もちろん、メノウとショーナも共にいる。

 あの攻撃を三人は掻い潜ったのだ。


「ああ、あそこまでするとは正直思わなかったけどね」


「ふふ、そうですか…」


 ヤクモが静かに笑う。

 ミーナは知っているが、このヤクモという男は戦闘の気配を一切相手に悟らせない。

 逆に言えば、素の状態から一瞬で攻めに移ることができるのだ。

 メノウもこの男が中々の力を持つ男だとは感じている。


「お前さんの目的はなんじゃ?ワシらと戦いたいのか?」


 率直に聞くメノウ。

 これ以上無駄な駆け引きは必要ない。

 そう感じたヤクモは軽く両手を上げ降参のポーズをとる。

 そして静かに語り始めた。


「あの攻撃は全て軍閥長の指令です」


「やっぱりな」


「あなた達を仕留めた、そう軍閥長は確信しています。シークマントに行くのなら油断している今がチャンスですね…」


 敵であるはずのヤクモ。

 だが、彼は軍閥長の手の内を晒した。

 さらに彼は、軍閥長が街に待機させていた海軍を撤退させたこと。

 軍全体の士気が下がっていることなどもメノウたちに伝えた。


「…と、何か質問ありますか?」


「一つ聞いていいか?」


「…そこまで話すアンタのメリットは何だ?」


 確かに、軍閥長の手の内を晒してヤクモに得など何もない。

 味方を裏切ることになるのだから。

 だが、その理由についてミーナはある程度は理解していたし、共感もできた。

 それは…


「ふふ、まぁ『好きだけど、嫌いだから』とでも言っておきましょうか…」


「なんだそれ…?」


「まぁ、今はこれだけしか言えません。では…」


 そう言うと、ヤクモは馬と共に姿を消した。

 先ほどまで使っていた瞬間縮地法を使ったのだ。


「何だったんだ、あいつ…」


 南アルガスタ側でありながら、妙な態度と様子だったヤクモ。

 彼もマーク将軍と同じく今の軍閥長には何か思うところがあるのだろう。


「ミーナ、さっきの変なのは誰じゃ?」


「あいつはヤクモ、B基地の司令官さ」


「ということは、この先にB基地があるのかのぅ?」


 メノウがミーナに尋ねる。

 ミーナはヤクモとは既知の仲だが、メノウとショーナはそうではない。

 二人にわかりやすいようにミーナがヤクモとB基地について説明を始めた。


「いや、B基地はヤクモと数人の伝達兵しか所属してない。だから基地もシークマントの城の一室にあるだけさ」


 B基地は軍閥長の参謀や諜報をする役職の者が所属している。

 しかしだからと言ってヤクモの実力が低いわけではない。

 その実力はミーナ以上は確実だという。


「まぁ、アタシは直接戦ったことは無いけど」


「ふーん、じゃあ、あいつより上のA基地司令官ってどんな奴なんだ?」


 ショーナがふと気になりミーナに尋ねた。

 しかし、それを聞き突如彼女の顔色が変わった。

 あのミーナがこうなるとは、A基地の司令官はよほど凄い者なのか…?

 やがて彼女はゆっくりと口を開き始めた。


「A基地か…」


「あ、ああ…」


「A基地に所属しているのはたった一人の騎士…」


「一人だって?」


 それを聞き、驚くショーナ。

 シヴァの率いるD基地はそこそこの兵力があった。

 ミーナのC基地は最大の兵力を持つ基地だったという。

 ヤクモのB基地は元々戦闘が任務の基地ではないため人数が少なくても仕方がない。

 そして最後のA基地は、軍閥長の命令に忠実動く『たった一人の騎士』が所属しているという。

 なぜA基地はたった一人しか所属していないのか?


「なんで一人だけしかいないんだよ?」


「簡単さ、ヤツは強すぎるんだよ」


「ヤツ…」


「強すぎるんだ、南ザリィール最強の男『黒騎士ガイヤ』は…」


 ミーナが話していたA基地隊長『黒騎士ガイヤ』。

 彼は軍閥長を守る南ザリィール最強の男。

 命令を確実に遂行し、立ちはだかる敵を全て殲滅する。


「アタシは以前、ガイヤと練習試合で戦ったことがある、軍閥長の城でね…」


 それはかつて、南ザリィール四重臣が結成された当初のことだった。

 それぞれの強さにおけるランク付けのため、四重臣の四人での練習試合が城で行われたことがあった。

 軍閥長であるイーガリスの見守る中、黒騎士ガイヤとミーナの戦いがはじめられようとしたのだが…


「アイツは他の三人を同時に相手するって言い出したんだ」


「他の三人って言うとブルーシム、ミーナ、そしてさっきのヤクモか」


「ああ…」


 黒騎士ガイヤ一人と対ブルーシム、ミーナ、ヤクモの三人の戦いで練習試合は始められた。

 彼は普段は黒い甲冑を纏い、その姿には似合わない東洋の刀を一振り下げている

 だが、この時は練習試合。

 甲冑を脱ぎ、木刀を刀代わりに握る。

 ミーナもこの時はいつもの多節混ではなく、単なる訓練用の棒を使っていた。

 彼女は多節混以外にも、一応棒術も使えるのだ。


「結果はどうだったんだよ?」


「…惨敗だよ」


 練習試合が始まると同時だった。

 ガイヤは一瞬でブルーシムの胸元にまで間合いを取り彼を地面に叩きつけた。

 そして、その勢いのままミーナに木刀を振りかざし、壁に叩きつける。

 二人が再起不能となったところで、ヤクモは勝機が無いことを確信。

 そのまま降参した。


「黒騎士ガイヤはザリィール帝国騎士団に若くして所属していた…」


「あのザリィール帝国騎士団に!?」


 黒騎士ガイヤ、A基地司令官であり南ザリィール最強の男。

 その力はどれほどの物なのか…?


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