表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最高級の最下級少女  作者: 剣竜
第一章 不思議の少女 メノウ
14/94

第十三話 猛攻!そして…

 少し離れた地点に陸軍の簡易前線基地が作られていた。

 そこで指揮を執るのは陸軍の若き勇者、テリー。

 僅か24歳という若さでこの地位まで上り詰めた男だ。


「奴らを逃しただと!?」


「は、はい…」


 部下からの報告を聞き、顔をゆがめるテリー。

 先ほどの二つの部隊は陸戦部隊の中でも特に実力のある部隊。

 そして腕の立つ傭兵部隊も戦力として投入していた。

 この三つの部隊をこうも簡単に退けるとは…


「森にはまだ幾つかの部隊が残っているな?」


「はい、まだ五つの部隊が待機しています」


「よし、そいつらも向かわせろ!」


 それらの部隊でもメノウたち三人に勝算があるかどうかは分からない。

 三人の進行したルートから、次に向かわせる部隊を選ぶ。

 逃げられないような場所にメノウたちをうまく誘導し、そこで複数の部隊を一気にぶつける作戦だ。

 メノウたちが逃げた先にあるのは湿地帯。

 となれば…


「…よし、次は西の部隊を向かわせろ!」


「は!」


「さらに援護として後方支援隊を…」


 部下に指示を出すテリー。

 待機中の部隊に指令を飛ばし、メノウたちのいる地点に向かわせる。

 だがそこに新たなる報告が別の部下から舞い込んだ。


「テリーさん!」


「どうした?」


「国境警備部隊の部隊が勝手に攻撃を開始!森を火の海に変えています!」


「なんだと!?」


 テリーが叫ぶ。

 国境警備隊の『マレカ・クーツ』の部隊はテリーの援護のために呼ばれた。

 確かに国境警備隊はこの作戦で攻撃を開始するとは言っていた。

 だが、テリーの部隊の出撃の時間と噛み合わないように要請したはずだった。

 それが何故…?


「どういうことだ!?」


 火の勢いは止まらない。

 既にテリーたちのいる前線基地まで迫っていた。

 他の部下たちはすでに炎に呑まれてしまったかもしれない。


「ノザキ!お前は逃げろ!」


「テリーさん!あなたは!?」


「他の部下共を助けに行く!」


 まだ炎の中に部下はいる。

 それを見捨てて逃げることなどできない。


「けど…」


「早く行け!」


「…はい」


「待ってろ…待ってろよ!みんな!」


 そう言って炎の中に飛び込むテリー。

 それとは逆に、炎が迫る前線基地を後にする部下のノザキ。

 ノザキは炎を放った国境警備隊のマレカ・クーツの元へと向かった。

 息も切れ切れに、彼のいる前線基地を目指す。


「おい、どういうことですかマレカ・クーツさん!」


 川の向こう岸に待機していた国境警備隊。

 そこにいたマレカ・クーツに殴りこみに行った。

 だが、当のマレカ・クーツは何故彼がそこまで怒っているのかが理解できていないようだった。


「どういうこととは?」


「森にはまだ他の部隊がいます!軍閥長経由で伝えているはずです!」


「バカな!そんなことは軍閥長から聞いていない…!」


 それを聞き、二人のは全てを理解した。

 全ての原因はこの作戦を行う前に開かれた作戦会議にあった

 作戦会議中、それぞれの軍があらかじめそれぞれの作戦内容を確認し合った。

 だがその時、予定を確認し合う際に重大な『ミス』があった。

 軍閥長であるYK・イーガリスが連絡を怠ったのだ。

 そのせいでテリーの陸戦部隊と国境警備隊の作戦決行時間にズレが生じてしまった。


「クソッ!あの無能軍閥長が!」


 マレカ・クーツが叫ぶ。

 通常ならばこんなミスは起こらない。

 だが、今の軍は『テリー・ヤック』、『ドン・バーグ』、『マレカ・クーツ』の率いる部下たちを即席で集めた急造の軍。

 そこに民間の傭兵なども投入しているため、全軍の動きを把握することが困難になってしまっている。

 各部隊での統制は取れているが、別の部隊との統制が全く取れていなかったのだ。


「今すぐ国境警備隊には攻撃を中止させる!」


「お、お願いします…」


 お互いに作戦の変更を確認し合う二人。

 だが時すでに遅し。

 既に多大な被害が出た後だった。

 さらに森林火災により逃げ場を失った陸軍兵士たちの救助などもしなければならない。

 ノザキは頭を抱えながら椅子に座りこんだ。


「せめてこれで奴らがくたばっててくれればいいけど…」


 ノザキが小声でつぶやいた。

 だが、彼の思いとは裏腹に、メノウたちは無事だった。

 急な国境警備隊の爆撃から逃れるため森の中の洞窟へと避難していたのだった。

 比較的大きな洞窟であったため崩落の心配はなさそうだ。

 皮肉なことに、この森林火災により敵の追っ手を撒くこともできた。


「まさかここまでしてくるとは思わなかったな…」


 ミーナが言った。


「しかし森の中にまだ仲間がおったというのに攻撃するとは恐ろしいのぅ…」


「あいつら、仲間を何だと思ってるんだよ」


 怒りを露わにするメノウとショーナ。

 これだから帝国の人間は、とでも言いたげな顔だ。

 だが、ミーナがそれを訂正した。


「いや、軍が味方を攻撃するなんてありえない…」


「どういうことだよ?」


 南ザリィーム四重臣の率いる各基地は軍閥長の兵士たち。

 一応所属はザリィーム帝国の兵士だが、その実態は訓練もされていない単なるならず者が殆ど。

 隊長や司令官などがそれらを統括しているに過ぎない。

 だが、南ザリィーム軍は違う。


「南ザリィーム軍はこのザリィーム帝国が配備した兵士、四重臣の率いる兵とは根本的に違うんだ」


 南ザリィーム軍に所属する兵士はザリィーム帝国に選ばれた者達。

 国と国民に対する忠誠を持つ兵士たちだ。

 正規軍としての教育と訓練を受け、誇りを持って任務を全うする。

 四重臣の率いるならず者に毛が生えたような兵士とは格が違う。


「督戦隊などの例外を除いて味方を攻撃するなんて…?」


 不可解な作戦に疑問を覚える。

 そもそもよく考えてみれば、たった三人のためにここまでの大規模な部隊が動いたこと自体が『不可解』。

 確かにメノウたちを倒すためには大きな戦力がいる。

 だがここまでの部隊を動かすほどの事態でもない。

 思いが交錯する中、ミーナはあることを確信した。


「まさか全て軍閥長の…」


「どうした、ミーナ?」


「いや、なんでもない。ショーナ…」


「ミーナ、あいつら一体何がしたかったんだ?」


「わかんないよ。でもまだ森が燃えてるし、しばらくこの洞窟で足止めか…」


 そう言いながら洞窟の奥へと足を進める三人。

 奪った馬、二匹も一緒だ。

 軍馬として調教されているため、ある程度は人の言うことをきくようだ。

 洞窟の奥には広めの場所があった。

 近くには水も流れている。

 しばらくはここで火災が止むのを待つしかない…



感想、評価、誤字指摘などいただけると嬉しいです

ブクマもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ