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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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プロスペクト 完



大犬亭まであと少しの場所でオドは立ち止まる。


「どちら様ですか?」


周囲に人影はなく、オドは目線を変えず誰もいない路地に向かって静かに言葉を発する。


しばらくの沈黙の後、後ろの路地裏から音もなく1人の人物が出てくる。


「あーあ、バレちゃったか。」


オドが振り返ると、そこにはフワフワな大きな尻尾とピンと立った耳を生はやした栗鼠人(リスの獣人)の女性が立っていた。身長はオドと同じくらいで小さいが大人の雰囲気を纏っている。


「、、、最初から気付いてましたよ。」


「容赦ないなぁ。少しはカッコつけさせてくれよう。」


そう言って女性はオドに近づく。殺意は一切感じられない。


「、、、僕に何か用ですか?」


女性はオドの目の前まで歩み寄ると、小さな紙きれを渡してくる。


紙切れには“組合公認 情報屋 アーリ”と印字されている。


「情報屋?」


「そ、情報屋。と言ってもタイムスに寄稿するためのネタ集めがメインの仕事だけどね。」


そう言われてオドは何となく相手の素性を察する。


「そうでしたか。、、でも僕は何の情報も持っていませんよ。」


「いやいや、君自身が我々の格好のネタなんだよ。」


「はあ。」


オドは余りピンと来ていない表情を浮かべる。


「歩きながらでいいから質問に答えてもらってもいいかい?」


そんなことは気にせず、アーリはオドに近づく。オドが困惑気味に頷くと暗い夜道でもわかるくらいニッコリと笑う。


「オーケー。それじゃ最初に、君の名前はオド・カノプス君で間違いないかい?」


オドは頷く。


「君は先日、クラン・クロウの幹部、パウ・ガリス氏と共に大量の魔石を持ち込んだ少年で間違いない?」


オドは頷く。


「君は今日、パーティー【鷹の爪】と黒梟エヴィエニスのダンジョンに潜入していた弓を持った少年で間違いない?」


オドが頷く。


「、、、ありがとう。」


アーリはそう言って頷くと、手に持っていた紙とペンをしまう。


「どこで僕の名前を知ったんですか?」


オドが気になって聞いてみると、「簡単なことだよ」とアーリが笑う。


「直近の移住者リストで“獅子の爪”に入居して、かつ身寄りのない若者の名前を調べるっていう単純な作業だからね。すぐにわかったよ。」


「僕のことを知ったのは今日ですか?」


「いやいや、君がパウ氏と魔石を持ち込んだ日に、ギルドの受付嬢の話を聞いて君の事を知ったんだ。後はギルドに張り込んで君を探すだけ。ネタ集めの極意は、地道な努力だよ。」


アーリは事も無げにそう言うと、立ち止まってオドに銀貨3枚(3000トレミ)を差し出す。


「何ですか?」


「情報料。それと、これからよろしく料。これでも君のこと高く買っているからね。今後とも情報屋アーリを御贔屓に。」


アーリはなかば無理やり銀貨を渡すと、そのまま半歩さがり夜闇に消えていく。


オドは一瞬追いかけようか迷うが、ぐんぐん遠ざかる気配にそれを諦め、大犬亭に戻る。



◇ ◇



「オド、おいで。」


翌日の朝、オドが素振りを終えてリビングに降りるとティミーに声を掛けられる。


オドが近づくと、ティミーが手に持っているタイムスを見せてくれる。


「見てごらん。」


ティミーはそう言ってタイムスの下の方の欄にある“期待の若手(プロスペクト)ランキング”を指さす。オド・カノプスの文字が55位にランクインしている。


「早速だね。」


オドからアーリの話を聞いていたティミーはそう言ってタイムスを眺める。


ランキングにはオドの知っている名前も入っており、34位にコリン、11位にユーグ、そして1位にはユキの名前が記されていた。



ここまでご覧になって頂きありがとうございます。

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