プロスペクト ⑩
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ダンジョンに入った【鷹の爪】とオドは予定通りモンスターが最も弱い1階層で慣らす事にする。
5人の潜入している黒梟のダンジョンは鳥系のモンスターがメインとなっておりスピード感のあるモンスターが多い。そしてこのダンジョンの一番の特徴は中央が吹き抜けになっており、その周りをぐるりと螺旋状に階層が下へと続いていく構造にある。このダンジョンは、まさにぽっかりと空いた大きな穴であり、穴は下に行くほど細くなり、その中心にそびえる針のような岩からモンスターが出現する。もちろん下に行けば行くほどモンスターは強くなるが、穴の中心から飛行して冒険者を襲うモンスターにとって階層を隔てる物はなく、稀に下の階層相当のモンスターが上層まで飛んでくる場合があるという危険をはらんだダンジョンでもある。
「何度来てもここは壮観だねー。」
ハーザーが“穴”を見下ろす。中央にある針のような岩は天井に空いた穴からの光が当たり、暗い洞窟内に浮かび上がるように照らされている。他のダンジョンの例に漏れず、洞窟内の鉱物はダンジョンに冠された名前の色と同じ黒色でダンジョン内の自然光は天井からの光だけである。
「少し進もう。後ろがつっかえても迷惑だしね。」
ユーグがそう言って歩き出す。ユーグの言葉通り洞窟に入ってすぐの空間は人が溢れていた。
階層の歩ける部分は横幅が大体20m程で顕層階の最下層まで一本道で繋がっている。螺旋を1周で1階層分に当たり、螺旋は13周している。
「この辺でいいか。」
とは言えダンジョンは巨大で、10分も歩けば冒険者は外壁を歩く先に進む者以外はまばらになる。
オドはジッと中央の岩を見つめる。
オド達の立っている場所から岩までは大体800m程の距離がある。オドは試しにと普通の矢を番つがえると、思いっきり弦を引き絞ってから矢を放つ。
「おお」
コリンをはじめ、近くで見ていた冒険者から声が上がる。
勢いよく飛び出た矢は大体オドと中心の岩の真ん中くらいまで飛んでいき、そこから徐々に落下していく。この結果に周りからは少し落胆にも似た声が上がり、立ち止まっていた冒険者は先へと進んでいく。
「流石に遠いか、、、」
ユーグもそんな言葉を漏らすが、オド自身はむしろ出ごたえを感じていた。
オドにとって矢の飛距離は想定済みであり、それよりもオドにとっての成果は矢がオドの想像した放物線を完璧になぞるように飛んでいた事だった。洞窟という密閉された空間は風がまったく吹かず、矢を中心に戦うオドにとっては理想的な場所であり、オドは納得するように頷く。
“hoooooo”
突然、地響きのように梟の鳴き声がダンジョンに響き渡る。
「来るぞ――――――!!」
誰かの叫び声と共に冒険者達の顔つきが変わる。
次の瞬間、ダンジョン中央の岩から一斉に鳥型モンスターが飛び立つのが見え、遅れて羽音が届く。
オドが横を見ると既に【鷹の爪】の面々も臨戦態勢に入っていた。オドは再び弓を持つと矢を番える。
オドはこちらに向かってくる魔力を纏った鳥型モンスターに狙いを定めて矢を放つ。矢はモンスターに命中し、モンスターはそのまま消滅した。オドはすぐに狙いを変えてモンスターを射抜き、冒険者達のいる階層部分にモンスターが届く前に4匹程撃ち落とす。
「いいぞ!!」
コリンが叫んでオドの背中を叩く。
「コリン、そろそろ。」
そんなコリンにユーグが指示を出すと、コリンはスッとオドの前に入り盾を構える。
鳥型モンスターは冒険者達との距離を詰めているため既にオドの適正な間合いよりも接近されていた。
「今度はユーグの適正距離だ。」
コリンがそう言ってオドにユーグを見るように目配せをする。
「“炎鷹”」
オドがユーグを見ると、丁度ユーグが魔法を放ったところだった。
ユーグは巨大な鳥型の炎を迫ってくるモンスターに向かって発動し、10羽程がそれに巻き込まれて消滅する。攻撃範囲と攻撃力を兼ね備えた圧巻の魔法だった。
「何度見てもこれは凄いな」
コリンが小さく呟きユーグを眩しそうに見つめる。
既にオド達の前にモンスターはいなかった。
オドが周囲を見渡すと案外モンスターと戦っている冒険者は少なく、せいぜい3分の1程度のパーティーしか戦っていない。そして、戦っていないパーティーはただ戦っているパーティーを見るだけで加勢しようとはしていなかった。
「案外モンスターは少ないんですね。」
「一斉に飛び立つと多く見えるが、ダンジョンの外周も冒険者の数も相当多いからな。それに、オド君やユーグみたいに長距離の攻撃手段を持っている奴らもいるからね。」
オドの問いにコリンが答えてくれる。
「なんで他のパーティーは戦闘に加勢しないんですか?」
「それが冒険者同士のマナーだからだよ。パーティーの成果を横取りしない。助太刀すけだちの要請がない限り他人の戦闘にすることはないよ。例え彼らが全滅したとしてもね。」
コリンの言葉にオドは目を丸くする。
「そうなんですね、、、。」
「そうだ。とはいえこのダンジョンは特殊で、他のダンジョンだとそもそも戦闘中に他の冒険者パーティーが近くにいることの方が珍しいからね。このダンジョンだけのルールみたいなもんだ。」
オドとコリンが話していると、ユーグがオドの肩を叩いてきた。
「オド君、あれが見えるかい?」
オドが振り返るとユーグ中央の岩の一点を指さす。
ユーグの示す先には顔部分に鉄の仮面のような物を付けたフクロウのモンスターが見えた。
「はい。見えます。」
「あいつを見れるのは運がいい。あれは定期的に出現する階層ボスだ。位置的に恐らく2層階だろう。」
ユーグの言葉を聞いてオドはビンスの新人研修の座学を思い出す。
階層ボスは定期的とはいえごく稀に出現する各階層のモンスターを統べるモンスターであり、その強さはその階層の大体2層下のモンスターと同等レベルだと言われている。その為、いまユーグが指さしているモンスターは4階層レベルのモンスターだと言える。
「ここから狙えるかい?」
ユーグがそうオドに問う。
「戦うんですか?」
「ああ。こんな機会は滅多にない。冒険者ギルドからも4階層までの潜入が認められているんだ。大丈夫だよ。最悪、オド君だけ逃げてもいい。」
「分かりました。」
オドはユーグの目を見てそれを受け入れる。ユーグの目には爛々とした闘志に燃えていた。
「ありがとう、オド君。」
「では少し移動しましょう。ここからでは届きません。」
そう言ってオドは仮面のフクロウを見下ろすのだった。
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