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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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プロスペクト ③



オドはいつもより長めに素振りをする。


少なくともユキの歌声が聞こえる間は素振りを続けようと木刀を振り続ける。


「暇だな。」


素振りを終えて水浴びをしたオドは部屋のベットに腰掛け顎に手を当てる。


今日からダンジョンに行けるが、Fランク以上の同伴がないと依頼を受けられない以上、オドは一緒にダンジョンに行ってくれる仲間探しから始めなければいけない。


「とりあえず、冒険者ギルドに行ってみるか。」


オドは冒険者ギルド行ってみることにする。


既にオドの手持ち金は2万トレミ程しか残っていない為、とにかく稼ぐことがオドの今の目的である。オドは持っている武器を装備し、灰色のコートを羽織る。ふと、オドは腰に装着している矢入れ袋に目を落とす。


「そう言えば、ヴィルトゥスで弓を装備してる冒険者に会ったことないな。」


オドは小さく呟いて緑鹿りょくろくの弓を掴み、肩に掛ける。


オドにとっては弓は一番得意な武器であり、天狼族の生活に欠かせない象徴的なアイテムでもある。そんな武器である弓を他の冒険者が使っていないという理由だけで装備しないという判断はオドにとって選択肢になかった。


「行ってきます。」


オドはティミーに挨拶をして家を出ると、冒険者ギルドへと歩いていく。


途中、オドが肩に掛けた弓が珍しいのか、ジッと見る冒険者やコソコソと見て笑う者もいたがオドは対して気にはならなかった。実際、オドの身体が小さいこともあってオドは道で目立つ存在だったのは事実である。



◇ ◇



冒険者ギルドに着いたオドはいつものようにダンの店へと行く。


「おはようございます。」


「おはよう。早速ダンジョンに行くのか?」


オドがダンに挨拶するとダンが声を掛けてくれる。


「実はまだクランに入っていなくて、一緒にダンジョンに行く仲間がいないんです。」


「そうなのか? オドに声を掛けないなんてスカウトに行った奴らの目は節穴なのか?」


「いえ、クラン・ドラギとクラン・クロウの方には声を掛けてもらったんですけど、何となく気乗りしなくて。特にクラン・クロウのパウさんには熱心に勧誘して頂いたんですけど。」


オドがそう言うとダンが腕を組む。


「クロウか、あそこは良くも悪くも厳しい所と噂だな。新人やベテランを問わず努力と献身を求める競争の激しい場所だが、その分、成長も著しい。後はパウはじめクランの幹部に賢くて優秀な奴が多い。俺としては悪くないクランだと思うぞ。パウも最近は余り聞かないが世代を代表する冒険者の1人だよ。」


そう言ってダンはうんうん、と頷く。オドはライリーと親しいダンがクランに否定的じゃない事に少し驚く。


「ダンさんはクランを余り悪く言わないんですね。」


「ん? ああ、ライリーやクルツナリックさんは大規模クランに否定的だからか。確かにオドだとそういう話を聞く方が多いよな。まあ、俺はあの人たちよりは若いからな。才能と運があれば多少無茶のできるクラシックな名誉の追い方も良いと思うが、堅実に手堅くクランの中で結果を出していくやり方も悪くないと思っているよ。」


ダンはそう言って微笑む。


オドはそんなダンを見て、ダンもまたランクSSに到達したボス・スレイヤーである事に思いを巡らす。オドはダンの現役時代を知らないが、何となくダンにはそう思わせるだけの器の大きさと心強さがあった。


「とりあえず朝飯だな。」


ダンはそう言って厨房へと戻っていく。


陽が出て間もない早朝なこともあり、まだ店に客はいない。オドがしばらく待っているとダンが皿を2つ持って来るとオドの前に座る。どうやらダンもオドと一緒に朝食をとることにしたらしい。


「今日はこれだ。」


そう言ってダンが出してくれたのは一本の長い玉子焼きだった。


ダン曰く、普通の玉子焼きは切り揃えて食べるようだが、この玉子焼きはそのままかぶりつくように食べて欲しいそうだ。実際、玉子焼きの表面はしっかりしていて形が崩れたりはしなかった。


「それでは、いただきます。」


オドがそう言って巻かれたそのままの玉子焼きに噛り付くと、柔らかな玉子焼きから出汁が染み出て口内に流れ込んでくる。味付けは甘すぎず、出汁と玉子本来の味がしっかりと出ている。美味だった。


「では、俺も。」


そんな客オドの様子を見てから、ダンも自分の玉子焼きに嚙り付くと、満足げに頷く。


シンプルだからこそ、細やかなこだわりと技術が出る、そんな一品だった。2人はあっという間に玉子焼きを平らげてしまうと、ダンはコーヒーをオドは紅茶を飲む。話は色々な方向へと広がる。


「先程、パウさんも凄い冒険者だと言ってましたがどんな方なんですか?」


「パウは基本的には防御を担うタンク役がメインの盾使いだが、本来の仕事も優秀なうえで攻撃のバリエーションを豊富に持っている、物理攻撃と物理防御が主流だった頃の盾使いの進化版と言った所かな。後パウは特徴的な武器をいくつも使う器用な冒険者でもあるな。」


「そうなんですか。」


「今は時代の流れで魔法使いが戦闘のメインになるようになってきてるからな。パウは縁の下の力持ちタイプの冒険者の中では一番の実力者だよ。それこそ俺より前の時代はゴリゴリの前衛と剣士だけの編成も珍しくなかったんだけどな。俺としては最低限の武術は身に着けて置くべきだとは思うぞ。魔法だけじゃ切羽詰まった時に精神の影響がもろに出てしまいかねない。この辺の考え方は俺もまだまだ古いのかもしれんけどな。」


そう言うとダンはテラスの方へと目を向ける。


「お、噂をすればパウじゃないか?」


ダンが指す方を見ると、そこにはパウの姿があった。

大きな盾と中世風の鎧を身にまとったパウはカールした髪と顎鬚も相まって騎士のように見える。背が高いせいかスッキリとした見た目をしている。オド達が見ているとパウもこちらに気付いたようで、階段を登ってカフェへと向かってくる。


「おはようございます。ダンさん、オド君。」


パウは2人に挨拶すると、ダンに話しかける。


「ダンさんは彼とは知り合いだったのですね。」


「ああ、ちょっとしたツテでね。それよりパウ、最近調子はどうだい。」


「最近は全然ですね。何となく、引退前に貴方が言っていたことが分かるようになってきました。」


「そうか? なんか言ったっけな。」


「ええ。自分の名誉よりも後輩や若手の成長が嬉しくなってくるという言葉が最近身に染みてわかるようになってきました。」


どうやらダンとパウも知らない仲ではないらしく、親し気に会話をしている。


ダンはパウの先輩冒険者として面倒を見ていたようで、改めてダンの器の大きさにオドは感心する。そんな時に、ダンはいきなりオドの肩を掴む。


「それなら、この有望な新人冒険者とダンジョンに行ってきたらどうだ? ちょうど一緒にダンジョンに行く仲間がいなくて困ってるみたいだぞ。」


ダンがそう言うとパウはジッとオドを見るが、すぐに笑顔になる。


「もちろんご一緒させていただきますよ。もちろんオド君次第ですが、僕も昨日の稽古を見て彼に興味を持っていたんですよ。」


そう言ってパウはニヤリと笑う。


「おいおい、ダンジョンに行っても無理やりクランに勧誘したりはするなよ。」


「もちろんです。ここは自由都市ですからね。」


そう言ってダンとパウの2人がオドに目を向ける。


「よろしくお願いします。」


そう言ってオドはパウに頭を下げるのだった。


ここまでご覧になって頂きありがとうございます。

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