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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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自由都市での新生活 ⑦




「いえいえ、オド様。是非、護衛を。」


「いや、大丈夫です。」


商業ギルドの前でそんなやり取りが繰り返される。


家具の会計をしオドが帰ろうとするとリオンはオドに護衛を付けると言い出した。

オドは当初、購入した家具は後日大犬亭に届く手筈になっているため手ぶらで帰れると断ったが最後にはリオンに押されニック商業ギルドの雇っている冒険者と共に帰ることになった。


「坊主はどこぞのお坊ちゃまなのかい?」


オドが護衛の30歳位の冒険者と一緒に歩いていると、護衛が声を掛けてくる。


「いえ、そんなことは無いです。どちらかと言えば、これから冒険者を目指しています。」


「ほう、そうか。それじゃあ、先輩として一つ教えてやろう。」


護衛の冒険者はそう言うとオドを見ると人差し指を立てる。


「冒険者には2つの種類がある。1つは名誉を追う者(フェイム・チェイサー)。こいつらはタイムスに名前が載って、ヴィルトゥス全体に名が知られているような、謂わば超エリート冒険者達だ。ボス・スレイヤーという名誉、そして殿堂冒険者という最高の栄誉を目指して日々ダンジョンに潜り、大金を稼ぐ。いわゆる皆が憧れる冒険者だ。」


オドが頷くのを見て護衛の冒険者は中指も上げる。


「もう1つは職業冒険者。これは、そんな超エリートになれなかった冒険者のことだ。名誉の為じゃなく、日々の生活の為に依頼をこなして報酬を得る、そんな多くの冒険者のことだ。まあ俺もその一人なんだがな。なんせニック商業ギルドに雇われてからは一回もダンジョンに潜っていないからな。もちろん依頼を受けて毎日ダンジョンに行く職業冒険者もたくさんいるがね。」


護衛の冒険者はそう言って笑う。


その時、細い路地に入った2人に声を掛ける集団がいた。男が10人程、2人を囲むようにして立っている。


「やっと見つけたぞ。ニック商業ギルドに入ったみたいだな。お前さんに恨みはないが、、、うっ!!」


スキンヘッドの大型の男がオドにそう声を掛けるが次の瞬間護衛の冒険者の大剣によって吹き飛ばされ気絶する。


「少年、君の強さは知らないがこれは仕事だからな。雇先(やといさき)に恩は作らせたくない。助太刀はしないでくれよ。」


護衛の冒険者はそう言うと残りの集団に襲い掛かる。

大剣で叩きつける。大剣を投げつけて蹴り飛ばす。殴り倒す。気づけばあっという間に護衛の冒険者は敵を全員気絶させていた。護衛の冒険者は特に疲れた様子もなく飄々とオドの下に戻ってくる。それ程に彼は強かった。


「これで一件落着だな。」


そう言ってニカッと笑う冒険者にオドはヴィルトゥスの冒険者の層の厚さをしみじみと感じるのだった。



◇ ◇



大犬亭に戻るとティミーが食卓にいた。


「お帰り、オド君。」


ティミーはオドに向かって一枚の封筒を差し出す。


オドが封筒を開けてみると、中には『冒険者研修のご案内』と書かれた紙が入っており、そこには朝にターニャから聞いた冒険者研修の内容や期間そして初回の集合時間と場所が書かれていた。


「頑張っておいで。」


内容を確認したオドがティミーを見るとティミーはそう言ってオドの肩を叩くのだった。


「はい。」


オドは力強く頷くのだった。




夕方になるとティミーとオドは“獅子の爪”の一角にある近くのパブに出かける。


普段の大犬亭では食事は各々で取る事になっているそうだが、今日は入居祝いということでティミーが奢ってくれることとなった。パブは騒がしく、ティミーは常連のようで他の常連から声を掛けられ、その度にオドのことを紹介してくれた。料理も美味しく、オドは特に子牛肉のステーキが気に入った。


「若いうちは食べすぎるくらい食べなさい。」


料理にがっつくオドを見てティミーはニコニコとそう言うのだった。


明るく、賑やかに、夜は更けていくのだった。



◇ ◇ 



翌朝、新たな部屋での最初の夜を過ごし、オドが大犬亭の1階に降りると、既にティミーが起きていてライリー同様タイムスを広げていた。


「おはようございます。」


オドが声を掛けると、ティミーはオドを手招きして呼び寄せる。


オドが横に行くと、ティミーはタイムスを広げて、微笑みながら出生欄の下にある入居欄を指さす。オドがそこを見ると、そこにはしっかりと「オド・カノプス、12歳、獅子の爪」と書かれていた。


「これはオド君が取っておくといい。」


そう言うとティミーはタイムスをオドに渡す。


オドは感謝を述べて紙面を受け取る。

オドは部屋に戻るとタイムスの他の欄も読んでみることにした。





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不審な目撃情報再び。


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昨日、ノースイースト商業区の一角にある施設に務める女性Jさんより不審な目撃情報が報告された。昼頃、施設の4階にいたJさんは窓を下から上に向かって通過した謎の影を目撃した。その影は大きく、ゆうに人ほどの大きさがあったが、Jさんは余りに瞬時の出来事だったためしっかりとその姿を確認出来なかったそうだ。4階の高さを上に飛べる生物は鳥しかありえないが、それ程大きな鳥はヴィルトゥス近郊で見つかってはいない。またJさんは足のようなものがあったと証言しており、この謎の生物の謎は深まるばかりである。同様の目撃証言は“獅子の爪”からも上がっており、今後も目撃が出るかもしれない。つい最近、ヴィルトゥス上空を浮遊する謎の白く丸い物体をタイムスで報じたが、それとの関連も気になるところだ。


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目撃証言があれば情報組合まで通告されたし。


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