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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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自由都市での新生活 ⑤



冒険者ギルドを出たオドはそのまま“獅子の爪”へと向かう。


道には相変わらず冒険者が溢れている。

急いでいないオドは前回と違う道を行ってみようとノースウェスト錬金術の中へと入っていく。

大きな工房の脇を抜けると石畳の中央広場に出る。広場には露店が並び、ベンチでは休憩中の錬金術師や冒険者が談笑している姿もある。更にはオドと同世代や年下の子供たちがはしゃいでいる姿もあれば、休日なのか家族で露店を巡っている一家もいた。そんな人々をどこか眩し気に眺めオドは広場を通り過ぎるのだった。



「うん。迷った。」



錬金術区を抜け“獅子の爪”に入ってからしばらく経ち、オドは諦めたようにそう言う。

乱雑な街並みに加え、違う道を使ったのがたたり、オドは完全に迷子になってしまっていた。しばらく周辺を手当たり次第に回るが完全に抜け出せなくなってしまった。


「うーん。」


しばらく迷っていたオドだったが、そう言うと意を決したように顔を上げ、脚に力を込めると真上へと跳躍をする。オドは建物の3階程の高さまで跳び上がると、目の前にあった建物の屋根に着地する。もちろん屋根の上の世界に人はなく、下の路地とは違った世界が広がる。


「うん。こっちの方が探しやすい。」


オドはそう言うと屋根と屋根の間を飛び移るようにしながら大犬亭を探し始める。

ヴィルトゥスの街の中央にそびえる冒険者ギルドを目印にオドが大犬亭を探すと、それは木造で目立つというのもありすぐに見つかった。オドは路地には降りず、屋根伝いに大犬亭に近づくと屋根から一気に飛び降り大犬亭の目の前に着地する。


「おお、来たんだね。待っていたよ。」


着地の音で気づいたのか扉が開きティミーが顔を出す。


オドがティミーに続いて大犬亭に入るとオドが来るのを分かっていたのかのように既に紅茶が用意されていた。オドは武器を置くとティミーに進められ机に座り、ティミーもオドに向かい合うように座る。


「よく大犬亭ここが見つけられたね。相当分かりづらかったでしょう。今度は地図を渡してあげるから屋根の上を歩くのは程々にね。」


ティミーがそう言って紅茶を啜る。


「はい、すいませんでした。」


屋根の上を移動していたことが見透かされたようでオドが謝る。


「いやいや、いいんだ。僕も昔は同じことをやっていたからね。まあ、やるならあんまり人に見られないようにね。たまに苦情が来たりするから。」


ティミーはそんなことを言いながらオドにクイーン地区(“狼の牙”&“獅子の爪”)の地図を渡してくれる。そこには詳細な地図と共に店の名前や道の名前など様々な情報が書かれていた。


「ありがとうございます。」


オドは地図を受け取り内容を確認するとティミーにお礼を言う。


ティミーは再び紅茶を啜ると、椅子から立ち上がり奥の書斎へと入っていき、すぐに紙を持って出てくる。ティミーは椅子に戻るとオドに紙を差し出す。そこには大犬亭入居に関する契約事項が書かれていた。


「まず家賃に関して話そう。大犬亭では初期費用として敷金30万トレミを預かる。これは“獅子の爪”で平均的な相場で、オド君の退去に合わせて返還される。ただし、居住期間の間に部屋の破損があれば敷金よりこれを補填する。理解できたかな?」


オド君は初めて聞く単語に少し混乱し、曖昧な顔を浮かべる。


「つまり、オド君が2階の部屋を傷付けたり、壊した分の修理費はこの30万トレミから出す。もし、何事もなければ30万トレミはそのままオド君が大犬亭を出ていく時に返してもらえるということだ。これで分かったかな?」


噛み砕いた説明にオドは頷く。


「よし。次は家賃についてだが、月9万トレミを請求する。これは“獅子の爪”の平均より少し低い位の相場だね。ここは中堅冒険者やベテラン冒険者の多い地域だからオド君にとっては少し高く感じるかもしれないが、それがヴィルトゥス冒険者の大体真ん中から少し上のレベルだ。早く家賃に見合った報酬を得れるように頑張ってほしい。これも問題ないかな?」


オドは頷くと契約書にサインをする。


「うむ。よろしい。これで君は今日より大犬亭の住人だ。」


オドから敷金、家賃の計39万トレミを受け取るとティミーは椅子から立ち上がりオドに手を差し出す。オドもつられる様に立ち上がると、ティミーと握手を交わす。


その後、改めてオドはティミーから2階の説明を受ける。普段ティミーの使用するエリアは全て1階にあり、2階部分は3人分の部屋が用意されていた。その中でオドには東側の部屋があてがわれた。どうやら西側の部屋には住人がいるようだったが、その姿を見ることはできなかった。1人分の部屋はそこそこ広く、クローゼットと洗面台が用意されていたが家具は据え置きのベッドしかなくどこかガランとしていた。また、ティミーは1階しか使用しないとのことで、屋上は2階の住人に解放されていた。


「オド君、家具を買ってくるといい。これは僕からの入居祝いだよ。」


ティミーはそう言うとオドに金貨5枚(5万トレミ)を差し出す。


「多分、ノースイースト商業区のニック商業ギルドに顔を出せば家具屋を案内してくれるだろう。それと、夕方くらいに“狼の牙”のダッグ・パフという店に行けばクルツがいると思うから顔を見せてあげるといい。」


ティミーから金貨を受け取ったオドにそう言うとティミーは1階へと降りていく。


オドは一度、武器を置くと短剣だけ装備して再び昼下がりの街へと繰り出すのだった。





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