自由都市での新生活 ①
眠っていたオドはハッと目を覚ます。
直前まで見ていた大星山での最後の記憶の夢から逃れるようにオドは首を振ってベッドを這い出る。
据え置きの洗面台で顔を洗うとオドは窓の外を眺めると、まだ夜が明けて間もないようで外は薄暗かった。
「着替えるか。」
これ以上寝る気になれなかったオドは着替えを済ますと廊下に出る。
ライリーとの約束には早すぎるがオドは誰かに会いたい気分になり冒険者ギルドの階段を降りていく。オドの足音だけがカツカツと暗い階段に響き渡る。
「、、、ん?」
オドが自分の足音に耳を澄ましていると途中から別の足音が混ざる。
その足音は徐々に大きくなり、オドの方へと階段を登っている様だった。足音はどんどん大きくなり、遂にもう一つの足音の人物が現れる。
「、、あ。」
オドの視界に現れたのは屋上で見た白銀の髪をした少女だった。
少女はオドを見ると目を見開くが、すぐにオドから視線を逸らすとオドの横を通り階段を登って行ってしまう。オドは初めて少女を近くで見たが、どうやら年齢は近いようで、身長は少女の方が少し大きかった。
冒険者ギルドの2階に降りると、オドは何となく1階のロビーを見下ろすが流石に冒険者の姿は無かった。オドはその足でダンのカフェへと向かうと、そこには既にライリーの姿があった。
「おはようございます。」
「ああ、おはよう。オド君。」
オドが挨拶をするとライリーも挨拶を返す。
ライリーはダンを呼ぶとオドの分の朝食を注文する。ライリーは既に朝食を済ませたようで机の上には飲みかけのコーヒーカップとびっしりと文字の書かれた大きな紙が置いてある。
「お待ち。」
すぐにダンが朝食セットを持ってくる。
皿には程よい焦げ目の付いたフレンチトーストがレタスの上に並びシロップが添えてある。一緒に出された紅茶はその名に恥じない美しい赤を白いカップに映している。
「相変わらず美味そうだな。もう一つ頼むべきか、、、。」
「お前はもう食ったろ。」
オドの皿を見てそう言うライリーをダンは一蹴するとダンは奥へと下がっていく。
オドが朝食を食べている最中、ライリーはコーヒー片手にニコニコとオドを見ていたが、すぐに手元に持っている大きな紙に目を落とす。
「その紙は何ですか?」
「ああ、これか。これはタイムスと言って、情報屋が集めたヴィルトゥスや他の地域の情報を書いて売ってるものだよ。タイムスにはダンジョン情報や新居者の名前、空き家情報や冒険者の戦果、依頼情報も載ってたりするんだ。ノースイースト商業区に情報屋組合があってそこから発行されるんだ。」
オドが気になってライリーに問うとライリーはそう言って内容を見せてくれる。
そこには小さな字で様々な情報が書き込まれている。
「まあ、このサイズのタイプは沢山作れないからこれよりも大きいものを冒険者ギルド内の掲示板に毎朝、張り出すんだ。ほら、あそこ。」
ライリーの指さす方を見ると、確かに依頼掲示板の横に大きな紙が張り出されている。
それからしばらく、オドとライリーはたわいもない話に花を咲かせ、オドの朝食が終わる。
「ごちそうさまでした。」
オドはそう言い、カウンターにいるダンに皿を返す。ライリーも立ち上がると、フード付きの長いコートを羽織る。
「それじゃあ、行こうか。」
オドがライリーのもとに戻るとライリーは深々とフードを被り、オドにそう言うのだった。
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