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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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新たな土地、新たな人々 完


オドが部屋に戻ってしばらく経ってライリーが部屋に入ってくる。


「街の見学はどうだった? ヴィルトゥスは広かったろう。」


「はい。とても広かったですし、沢山の人がいました。」


オドが慌てて立ち上がって答えるとライリーは笑って「座っていいよ」と手を振る。


「そうだろう、そうだろう。自分に合いそうな街は見つかったかい?」


ライリーの質問にオドは少し考え、意を決したように口を開く。


「最初は“梟の左翼”にしようと思ったのですが、今は“獅子の爪”がいいなと思っています。」


「そうか、“獅子の爪”か。」


ライリーは呟くように言い、何かを懐かしむように窓の外を見つめる。


「うん、いいと思うよ。“獅子の爪”になら僕も馴染みがある。良い宿アパートを紹介しよう。」


ライリーは再びオドを見てそう言うと、ポケットから羊皮紙を巻物を取り出す。

ライリーは羊皮紙を机の上に広げると、オドを呼びよせる。オドが見てみると、それは自由都市ヴィルトゥスへの市民登録に関わる書類だった。


「本当は1階の受付でやることではあるんだが、まあいいだろう。まずは、、、」


最初にライリーが行ったのはヴィルトゥス市民になるに当たっての禁止事項や確認事項の説明だった。

羊皮紙8枚にびっしりと書き込まれた様々な条項は冒険者ギルドのギルドマスターも含め何人たりとも変更することのできない謂わば鉄の掟であり、特に自由都市からの退去、情報の流出防止、市民の持つ義務に関して多く記載がされていた。


「、、、これで全てだ。疑問や質問はないかい?」


ライリーはその全ての事項を一つ一つ照らし合わせてオドに確認を取り、わざわざ羊皮紙に下線やチェックを書き込んでいく。オドがいまいち理解できない部分は言葉を尽くして説明し、オドが完全に理解したのを確信するまで説明を続け、気づけばこの作業だけで2時間半ほどが経過していた。


「はい、問題ありません。細かいことまで、ありがとうございます。」


オドはライリーに時間を取らせてしまい申し訳ない気持ちで感謝を述べる。


「うむ、問題ない。この作業は全ての入居者に行っているからな。むしろオド君はその年では早い方だよ。ひどい時は丸一日かかることもあるからな。」


ライリーの言葉に自分の為に易しく説明してくれたと思っていたオドはこの作業を全ての人にやっていると言われ心底驚く。


「それじゃあ、次はこれだ。」


そんなオドの様子に気付いてか気付かずかライリーは素知らぬ顔で新たな羊皮紙を取り出す。オドの目の前に置かれた羊皮紙には確認事項同意書と書かれている。


「説明した確認事項を理解し受け入れるなら、ここにサインしてくれ。」


そう言ってライリーはインク瓶とペンを差し出す。

オドは改めて確認事項に目を通すと同意書にサインを始める。“オド”とまで書いたところでライリーが「こっちにはカノプスと書いてくれ」と言いオドはそれに従う。


「ありがとう。」


ライリーはそう言うと新たな羊皮紙を取り出す。

見るとそこには入居者署名一覧と書かれおり、びっしりと人の名前と日付が記載されている。名前の筆跡からみてこれも入居者全員がそれぞれ署名しているようだった。


「次はこれの、最後に書かれた人物の下に署名と今日の日付を記入してくれ。申し訳ないがこっちもカノプスの表記でお願いする。」


オドはライリーの指示に従い署名をしようとして、ペンを止める。

ここに署名をすればもう大星山には、故郷には戻れないかもしれない、そんな思いが頭をよぎる。しばしオドは羊皮紙をジッと見つめるが、最後には意を決したように署名をし、日付を書き込む。


「うん、これでいい。これで君も自由都市の民だ。そして最後に、、、」


そう言ってライリーは一冊の本を取り出す。本のサイズはあまり大きくないが、その装丁が凄かった。分厚い皮に金属で装飾が施されており、鍵が背表紙以外の三箇所に掛けてある。ライリーはそれを開くと、ある1ページを開く。


「オド君、このページに君の本当の名前を書いてくれ。」


ライリーはそう言って本を差し出す。オドは頷いてそのページに“オド・シリウス”と書き込む。ライリーはそれを確認すると、オドに見せないようにしてサッと何かを書き込むと本を閉じ鍵を閉める。


「これで全てだ。オド君、今日はヴィルトゥス市民としての君の門出だ。」


ライリーはそう言うとオドと握手をし、部屋を出ていく。


「明日の早朝にダンのカフェに来てくれ。それじゃあ、おやすみ。」


ライリーは扉まで見送るオドに思い出したようにそう言うと廊下へ出て、執務室の方へと去っていく。



ベッドに入ったオドは何となくシリウス・リングを見つめるのだった。

ここまでご覧になって頂きありがとうございます。

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