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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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新たな土地、新たな人々 ⑧


結局、オドが眠りにつけたのは外がぼんやりと明るくなり始めてからだった。

眠りについたオドは深く熟睡し、昼過ぎになってようやく目を覚ます。ベットの横の机の上にはメモが置いてあり、そこには「腹が空いたらダンの所へ行くべし。」と書かれている。


「朝食の用意をしていてくれたのかな、、、。」


オドはターニャに申し訳ない気持ちを抱きながらベッドから立ち上がる。

どれだけ気分が落ち込んでいても腹は減るもので、オドは少し腫れた目を擦りながら部屋を出て、長い階段を降りていく。



1階のエントランスは人で溢れかえっていた。


ダンの店も席が埋まっていて沢山の冒険者が仲間と共にワイワイと昼食を取っている。


オドがカフェスペースに入るとエプロンを付けた猫人(猫の獣人)の女性が声を掛けてくる。


「君がオド君かい? ダンから話は聞いてるよ。座るところは、そうね、、、。」


オドにそう言うと女性はツカツカと食後の若い冒険者たちが談笑している席へ歩いていく。


「あんたら、いつまでペチャクチャ喋ってんだい。仕事に行ってこい!!!」


女性はそう言うと「あと少し」とごねる若手達を「はよ働け」と席から立たせる。周りの席の冒険者も「食ったら出てけ」と若手冒険者達を野次ってからかう。若手冒険者達もヘラヘラしながら「行ってきますよ」と言ってカフェスペースを出ていく。そんな彼らに店の女性が「毎度あり」と声を掛け、周りの冒険者も「気を付けてけよ」と声を掛けて彼らを送り出す。


「名前を伝えてなかったね。私はミアン。ダンのパートナーよ。さ、席に座って。」


ミアンと名乗ったその女性はオドを先程まで若手冒険者達が座っていた席に座らせると、「ちょっと待っててね」と言って店の奥に消えていく。


「坊やはこの店は初めてかい?」


オドが緊張気味に座っていると近くの席の冒険者グループの1人が声を掛けてくる。オドに声を掛けた冒険者はドワーフの男性でオドはミアンに続き初めてみる種族の人物に驚く。


「いや、一回だけ食べたことがあります。」


オドがそう言うと「そうか、旨いよな!!」とドワーフの男性はうんうんと頷く。


「それじゃ俺達もそろそろ。」とドワーフの男性と一緒に座っていたグループが立ち上がり店を出ていく。しばらくすると、ミアンがお盆に大量の料理を乗せてオドのもとに持ってくる。


「さ、どうぞ。おかわりもあるからね。料金はライリー持ちだから好きなだけ食べな。」


そう言うとミアンは店の奥へと戻っていく。

オドは空腹もあり、再び始まったフードファイトに果敢に挑むのだった。



◇ ◇



オドは何とか出された料理を食べきる。

その頃には多くの冒険者が昼食を終えており席が空いてきている。オドはすぐ下にエントランスの見える席に移動してぼんやりと1階を眺める。


よく見るとオドと同じ狼人やミアンのような猫人、兎人などの獣人やドワーフ、エルフ、人間ノーマンなど様々な種族の人々がいることに気付く。仕事も冒険者はもちろん、受付や荷受けやおろしの指示などをしているギルド職員や商人、鍛冶師らしき人もいて様々である。そこにいる人々に共通しているのは、みながそれぞれの仕事を忙しそうにしていることである。


「ここは“勇敢なる放浪者”の集まる地だ。」


気付くとエプロンを外したダンがオドの前に座っている。


「かつて、この街を最初に築いた人々は迫害を逃れて砂漠を、湿地を、深い森を越えてきた者達だ。以来、この街は放浪を越えて辿り着いた者達の住処となっている。」


オドはダンの言葉に耳を傾ける。


「だからこそ、ここには過酷な過去を抱えた者も多い。君のようなね。この街は全ての人を平等に受け入れる。仲間を、仕事を、忙しさを、それを求める者に与えてくれる。」


ダンはエントランスに目を向け、オドもつられて下を見る。


「君は、まだ若い。過去を受け入れ、消化するのは辛いことだ。けれど、おのずとその時は来るものだ。それまで、日々の忙しさに逃れるのも、いいと思うのだがな。」


そう言うとダンは再びオドに目を向ける。


「俺が言いたいのはそれだけだ。じゃあな、少年。」


臭いセリフに照れたのかダンは立ち上がると、オドの肩をポンと手を乗せ店の奥へと消えていく。



◇ ◇



オドが部屋に戻るとターニャが部屋の前にいた。


オドは朝のお礼を言って部屋に入る。

オドは夕食を早めにとることにし、すぐにシャワーを浴びて眠る支度を整える。


「おやすみなさい。」


そう呟きオドはベッドに潜り込む。いつもより遥かに早くベッドに入ったオドは外から微かに届くヴィルトゥスの街の喧騒に耳を傾けながら目を閉じるのだった。

ここまでご覧になって頂きありがとうございます。

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