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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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新たな土地、新たな人々 ④



「そういえば、君の名前は? 待ってても全然教えてくれないじゃない。」


ふいにターニャがオドに問いかける。

オドはハッとターニャを見て、自分が名前を名乗っていなかったことを思い出す。


「ごめんなさい。すっかり忘れていました。僕の名前は、、、」


瞬間、オドは先ほどライリーに言われた言葉を思い出す。

何故かあの時のライリーの真剣な瞳が記憶に強く残っていた。


「オド。、、、オド・カノプスです。」


ターニャは一瞬ジッとオドを見てからニッコリと頷く。


「オド君ね。よろしく。」


オドは余り嘘をつくことがないため内心ホッと胸を撫でおろし、今度から自己紹介はファーストネームだけにしようと決心するのだった。


「オド君、こっちへ来てみて。」


ターニャは屋上の西側へオドを誘う。

オドが行くと、正面に繋がった2つの丘が見える。


「あの2つの丘の左側が白鯨ソピアーダンジョン。右側の2番目が銀狼コースティティアダンジョンよ。」


オドは白鯨はくげい銀狼ぎんろうというワードに少し驚く。白鯨、銀狼はかつてオドが遭遇した緑鹿、青蛇と同様に天狼伝説に登場する八神獣の名前だった。ターニャの説明は続く。今度は屋上の北側にオドを案内する。


「さっきの丘の右側、3番目の丘が金羊アフィティビトスダンジョン。更にその右、4番目の丘が黒梟エヴィエニスダンジョンよ。」


オドは頷く。金羊きんよう黒梟こくきょうもまた八神獣に登場している。しかし、ここでオドに疑問が生じる。丘が神獣を司るなら、丘があと2つ必要なはずであるが、この街には丘が5つしかない。


そんなオドの考えを知ってか知らずかターニャは最後の丘の名前を言う。


「南東に見える最後の5番目の丘が青龍ポルタダンジョン。この、、、」


「え!?」


ターニャは説明をしようとした所をオドの声が遮る。


オドはつい間抜けな声を出してしまう。

なぜかと言うとターニャの言った青龍せいりゅうは八神獣ではないからだ。また剣契の際にオドに『コールドビート』を授けた龍も自分を青龍と名乗っていたことがオドの頭をよぎる。


「どうかした?」


不思議そうにオドを見るターニャにオドは慌てて「なんでもないです。」と返し、再び視線をヴィルトゥスの街並みに戻す。


「、、、そう? この5つのダンジョンにはそれぞれ特徴があって、出現する魔物やドロップするアイテムの傾向も違うの。ダンジョンの名前はそのダンジョンのボスが由来になっているのよ。」


ターニャの説明が一通り終わる。


「それじゃあ少しだけ冒険者ギルドの中も案内するわね。」


ターニャはそう言うと階段のある屋上の出入り口へと歩き出すのだった。




◇ ◇ ◇




1つわかったことはオドの寝ていた客人用の部屋もライリーの執務室も相当高い場所に設計されていたことだ。


ターニャとオドの2人は長い階段を降り冒険者ギルドの2階までくる。


冒険者ギルドは広く、また活気に溢れていた。

1階は全面がエントランスとなっており中央に受付窓口がある。東西南北に入り口があり、絶えず人が行き来をしている。

2階は吹き抜けになっており1階の様子を上から見れるようになっている。1階とは階段で繋がっており、カフェテラスや酒場、バーなどのスペースや情報掲示板、VIPルームや会議室、多目的室などがある。壁には大きな窓ガラスが張られており天井はかなり高い。2階の四隅に3階に行くための階段が設置されているが、その前には衛兵が控えていた。


「1,2階は今度詳しく案内するわね。」


ターニャはそう言うと再び階段を登りだす。


日が暮れ始めたのか巨大なガラス窓からはオレンジ色の光が差し込んでいた。



◇ ◇



オドがターニャに挨拶をして部屋に戻ると軽めの食事が用意されていた。


白いパンにスパイスの効いた鶏肉の照り焼きとレタスが皿に乗っていた。

どれもオドにとっては初めての料理だったが、久し振りの食事であることも相まってオドはあっという間に食べきる。


皿を片付けようと廊下に出るとメイド服を着た女性が持って行ってくれた。

オドは集落でそうだったように部屋の灯りを消す。窓から見えるヴィルトゥスの夜景は明るく、陽が暮れても賑わっている様だった。


オドは窓のカーテンを閉めると今日あった出来事を思い出す。


次第に夜が更けていく。

街の灯りも殆ど消え、部屋に静寂が流れる。



オドは大星山での出来事を思い出していた。

オドの見つめる手にはローズに託されたシリウス・リングとタマモの形見であるサファイアの指輪が握られている。


オドの胸には、遠く異国に来てしまった寂しさや唯一人生き残ったことへの葛藤、突然全てを奪っていった侵略者への怒りがごちゃ混ぜになって押し寄せる。

段々オドの息は途切れ途切れになり、吐き出せない孤独感が膨らんでいく。


一筋、また一筋と頬を涙が伝い、オドは肩を震わせて泣くのだった。



ここまでご覧になって頂きありがとうございます。

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