新たな土地、新たな人々 ②
オドが警戒を解かないまま二人の間に沈黙が流れる。
男性は観念したように笑うと、口を開く。
「君は話したくないようだから、私から話そう。」
オドはジッと男性を観察する。
男性は50代位の人間で背が高く、身体もガッシリとしていて分厚いイメージだ。
服はピッシリとした正装でキメているが、身体の厚みが隠しきれていない。
しかし、そんな強靭な肉体からは想像できない程、男性の銀色の瞳には理性的な光が宿っている。
「まず、私の名前はエリック・ライリー。一応、この街で冒険者ギルドのギルドマスターをしている。君のことは街の北東にある精霊の森で倒れている所を見つけたんだ。あの日は、、、」
ライリーは話を続けようとするが、オドにはある言葉が引っ掛かる。
「精霊の森?」
オドが小さく口にした疑問にライリーが答える。
「そうだ。精霊の森だ。精霊の森は知っているだろう。ここ周辺では最も大きな森だ。」
「それは霧の森の間違いではないですか?」
オドが返すとライリーは大きく笑う。
「ハハハ、あそこが霧の森な訳ないだろう!! 霧の森は大陸の遥か北にある森だよ。こんな大陸の南の果てから霧の森へはいけないよ。」
ライリーの言葉にオドは硬直する。
ライリーは今ここを“南の果て”と言った。オドの最後の記憶はあくまで大陸の北、大星山周辺での出来事のはずだ。
「すいません。馬鹿な質問かもしれないですが、、、ここはどこですか?」
オドの突然の質問にライリーはきょとんとするが、オドの真剣そうな顔を見て真面目に答える。
「ここは自由都市ヴィルトゥス。ダンジョンと冒険者の都市。実力と運、そして栄誉の支配する土地だ。」
ライリーの答えにオドは衝撃を受ける。
そんなオドの様子を見てライリーが声をかける。
「どうした少年。そんな異国の地に飛ばされたような顔をして。そうだ、君の名前を教えてくれ。」
そう問うライリーにオドは相手に敵意がない事を察して口を開く。
「オド。、、、オド・シリウスです。」
オドの答えにライリーの眉がピクリと動く。
「オド君だな、よろしく。差し支えなければ、君があそこで倒れていた経緯を教えてくれないかな。」
ライリーは先ほどまでの軽い表情から少し真面目な顔になりオドに聞く。
「実は、、、」
オドはライリーに自分が天狼族の一員であり大星山に住んでいたこと、何者かに集落が襲われたこと、逃亡の末に霧の森に迷い込んだことを話した。もちろん、2つの洞窟での出来事や剣契での出来事はライリーに語らなかった。
ライリーはオドを話を聞き終えると少し考え込む。
「ふーむ。実は君が倒れているのを見つける日の朝、精霊の森付近の結界に異変があったんだ。もしかしたら、それが君が精霊の森に現れたことと関係があるのかもしれないな、、、。」
それだけ言うとライリーは再び考え出す。
「オド君。」
暫くしてライリーは口を開き、オドと目を合わせる。
「君には一つ選択をしてもらわなければならない。」
銀色の瞳が真っ直ぐオドを捉える。
「一つは、この街を去って君の故郷である大星山に帰るという選択。けれどヴィルトゥスから大星山までは砂漠、草原、湿原、異国を越えて行かなければならない。12歳の君一人では途中で野垂れ死ぬかもしれないし、大星山に帰っても焼け野原しか、そこにはないかもしれない。」
オドが頷く。
「もう一つは、この街に残って自由都市ヴィルトゥスの市民の1人として暮らすという選択。ここは移民の都市だ。君を受け入れてくれるだろうが、このまま君は二度と大星山の地を踏むことができなくなるかもしれない。」
オドが固まる。
そんなオドを見て、ライリーも頷く。
「うん。君の人生だ、君が選べ。その傷が癒えるまでは君をギルドの客人としてもてなそう。魔剣も君の傷が癒えた時に返すよ。」
そう言うとライリーはオドに背を向ける。
オドは「ありがとうございました。」と倒れている所を助けてくれたことに感謝を述べると部屋を出ようとドアの方に歩く。
「オド君。」
後ろからライリーの声が聞こえる。オドが振り向くとライリーがこちらを見ている。
「これは忠告なんだがね、君のファミリーネームは隠しておいた方がいい。もし偽名に迷ったのなら“カノプス”という姓を名乗るといい。僕の友人もそうしていたよ。」
それだけ言うとライリーは軽く手を挙げて再び窓の外を眺めてしまう。
ドアを開けるとターニャと呼ばれた女性がオドのことを待っていた。
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