新たな土地、新たな人々 ①
「ウッ、、、」
呻き声と共にオドの目が開かれる。
オドの視界にぼんやりと見慣れない天井が映る。
オドは咄嗟に起き上がろうとするが、左肩に走る激痛に再び呻き声を上げて倒れてしまう。
「クッ、、、!!」
オドは何とか上体を起こすと右手で左肩を抑え、痛みに歯を食いしばる。
、、、痛い。でも、ちゃんと痛みを感じている。自分は、生きている。
左肩の痛みはオドに自らの生存を激しく主張する。
オドは自分が生き延びたことに安堵すると同時に、自分の身に起きた出来事を思い出す。
オドは慌てて周囲を見渡すが、そこは見覚えのない白い壁に木のドアと窓が付いた部屋だった。オドはベッドに横たわっており、ドアも窓も閉じられていた。
オドは自分は捕らえられたのではないかと眉をひそませ、ひとまず武器を手に取ろうとベッドの周りを見る。
「、、、ない。」
その時、オドは『コールドビート』が無くなっていることに気づく。
オドが装備していた武器や衣服はキレイに畳まれてベッドの横に置いてあったが、『コールドビート』だけがその場から無くなっていた。
オドが慌ててベッドを降りようとした刹那、部屋のドアが開かれる。
「意識が戻ったのね!!」
ドアから入ってきたのは大人の女性が入ってくる。
女性は駆け寄るようにオドに近寄ってくる。
「剣はどこだ!!」
オドは咄嗟に女性に向けて短剣を構える。
女性は一歩後ろに飛び退くと、敵意はないとばかりに両手を広げる。
「心配しないでも大丈夫よ。貴方の剣はギルドマスターが保管しているわ。それより、まだ安静にしていないとダメよ。左肩も痛むでしょう。」
女性はオドを諭すように言うがオドは構えた短剣を降ろさない。
「そのギルドマスターとやらの所に連れていけ。あれは大事な剣なんだ。」
警戒を解かないオドを見かねると女性は溜息とともに「ついてきなさい。」と言って部屋を出る。
オドは最大限の注意を払いながら女性の後に付いていく。絨毯の敷かれた長い廊下を進み、女性は最奥にあるドアの前で立ち止まる。
「ここにギルドマスターがいらっしゃるわ。さあ、お行きなさい。」
女性はいつの間にかオドの背後に立ち、オドの背中を押す。オドは促されるようにドアを開ける。
ドアを開けると1人の男性がオドに背を向けるようにして窓の外を眺めていた。
オドは短剣を片手に男性に駆けよろうとし、振り向いた男性と目が合う。
刹那、オドは剣を喉元に当てられているような感覚に襲われ、その場で急停止しようとする。しかし、バランスを崩し、そのまま尻もちを着く。
尻もちの衝撃が身体に響き、再び左肩に激痛が走る。
「ほう。」
左肩を抑えて呻くオドを男性はまじまじと興味ありげに見つめると、オドのもとに歩み寄る。
男性は持っていたステッキでオドが落とした短剣をドアの方へと弾き飛ばす。短剣は滑るように飛んでいくと、オドを案内した女性の目の前に止まる。
「ターニャ、あとは任せてくれ。短剣は彼の部屋に。」
男性は女性にそう言うとオドを見下ろす。
オドは男性の発するオーラに圧倒され、未だに立ち上がれないでいた。
「君はいい感覚を持っているようだね。初手で死線に気付いたのは君が2人目だよ。」
男性は優し気な眼差しをオドに向ける。
すると、さっきまでのプレッシャーが嘘のようにオドの身体が軽くなる。もうオドに歯向かう余地はなかった。
「これが君の剣だろう。」
そう言うと男性は蓋がガラスになっている木箱を取り出す。
見ると、そこには絹の布と共に『コールドビート』が置かれていた。オドが頷くと、男性は木箱をオドに渡さずに後ろにある自分の机の上に置く。
「大丈夫だよ。これは君に返すし、そもそも君しかこの魔剣は使えないよ。」
そう言って男性は微笑む。
それでも疑いの眼差しを止めないオドに男性はガハハハと笑う。
「そもそも、君が倒れていて奪われてもおかしくない物をわざわざ保管しておいてあげたんだ。盗むならとっくに盗っているよ。」
そう言うと男性はオドを起こして手前のソファーに座らせる。
「少し話をしようじゃないか、少年。」
そう言って男性は不敵に微笑むのだった。
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