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侵略者 ⑦



天狼族の集落では着々と決戦に向けた準備が進められていく。


皆が忙しそうに集落内やその周りを走り回っている。

そんな最中さなか、オドとローズは集落の北にある高台にきていた。


かつてタマモが我が子の出産を祈念した高台に立ちオドとローズは集落を見下ろす。


「オド、いくさの支度をしている皆が見えるな? 彼らはみんなオド、お前の命の為に自らの命を投げ出してもいいと思っている。それは儂も同じだ。」


何か言おうとするオドを制止してローズが続ける。


「これこそが我ら天狼族の使命なんだ。儂自身も皆で大星山を去り生き延びる方法もあると分かっている。それでも、ここに長く暮らした儂らはこの道しか選ぶことができないし、この地の為に闘い、使命を果たして散れるならそれが本望だよ。」


ローズはオドの頭を撫でる。


「オド。お前は流星の下に生れ落ち、オーロラの夜に天命を授かった。これからの人生で向き合うべき天命に気付き、困難に直面するだろう。その時、我らはオドの傍には居れないかもしれない。それでも、これだけは忘れないでくれ。誇り高き天狼の血がその身体に巡っていることを。この大星山の地で過ごした日々を。我らが常にオドと共にあることを。」


高台と共に映る2人の影が伸びていき、陽が沈んでいくのだった。




◆ ◆ ◆




一方、枢機卿親衛隊の陣においても軍議が行われていた。


親衛隊隊長ヴァックスとドーリーを始めとする7人の副隊長が集まっていた。枢機卿ゴドフリーの姿はなく、上座には細身長身のヴァックスが座っている。


「枢機卿猊下はオーロラの原因の抹殺をご所望である。ドーリーの報告によれば、それはかつてその剣才で名を轟かせたキーン・シリウスなる人物ではないかということだ。違いないか?」


そう言ってヴァックスはドーリーに目を向ける。


「っは!! かつてヤツの所持していた魔剣の色があのオーロラに似ていました。」


「そのキーン・シリウスという者の髪は何色だった?」


ヴァックスがおもむろにドーリーに問いかける。


「私の記憶の限りでは暗い灰色に金の髪が混ざっていました。先日交戦した敵も皆その髪色です。」


予想外の質問にドーリーが慌てて答える。


「そうか、、、。」


ドーリーの答えにヴァックスは少し黙り込む。


「、、、うむ。そのキーン・シリウスに限らず魔剣を持つものがあればそれを始末しろ。加えて、もし戦場、若しくは山中にて金に反射する暗い紫色の狼、もしくはその色をした髪を持つものを見かけたら、それも始末しろ。手柄には報酬だ。いいな。」


「「っは!!」」


ヴァックスはそう言い7人の副隊長達は勢い良く返事をするのだった。





7人の副隊長が退出した後、奥から枢機卿ゴドフリーが姿を現す。


その姿は依然として悪魔の姿をしている。ゴドフリーはどこかイライラとした雰囲気を醸し出す。


「いかがなさいました? 枢機卿猊下。」


「うるさいぞ、ヴァックス。お主も我と同じ悪魔だろう。何故そんな悠長にしていられる。魔王様の復活が妨げられたのだぞ。」


「ゴドフリー、お前はそう言うが、本当にシリウス・リオが復活したのだろうか?していたのなら我ら悪魔の生き残りなどとっくに喰い千切りに来ていないか? それこそ部下の言ったようにリオの血を引く者が天啓を得ただけなんじゃないか?」


ラフに話し始めたヴァックスにゴドフリーが忌々し気に返す。


「それが分からんから困るのだ。数少ない我ら生き残りがノコノコと山に攻めていって喰い千切られては目も当てられない。リオが復活していなければ兵力で押し切れるだろうよ。もしリオの血を引く者や天啓を受けた者がいるなら全滅させろ。」


「わかっているよ、ゴドフリー。それより内政掌握は大丈夫なのか?」


軽い返事をし、からかうように自分を見るヴァックスにゴドフリーは心底嫌そうな顔をする。


「お前は本当に食えない奴だな、ヴァックス。帝都の皇帝や貴族どもは問題ないが、教会内部は未だ反発勢力が潜んでいる。それに加えて、教会軍が手薄なのをいいことに北東部の獣人で反乱を企てている者もいるそうだ。こんな時に、本当に煩わしい。」


「枢機卿猊下は大変でございますね。」


そう呟くヴァックスを睨み、ゴドフリーは奥に下がっていく。


その時、陣幕に伝達兵が駆け込み、軍船が到着したことをヴァックスに伝える。


開戦の時は刻一刻と迫っていた。





教会軍の編成は枢機卿親衛隊1000(隊長に300の手勢、副隊長が7人、1人につき100の手勢)+北の都市や街にの教会に駐在する教会軍の計2万です。枢機卿親衛隊は中央にいるエリート集団という感じの認識です。

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