侵略者 ⑤
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「またも、手勢を失った、、、。」
部下達の待つ大星山麓まで撤退したドーリーはそのまま手勢と共に船に乗り込みゴドフリーが2万の軍を敷いている陣へと戻っていった。帰りも行きと同様に、霧の中をひたすら漕ぎ続けること数時間で自分達が出ていった地点に戻ることができた。
ドーリーがすぐさま上司であり枢機卿親衛隊隊長であるヴァックスに報告に行くと、ヴァックスはドーリーの帰還に少々驚いたようだった。それもそのはずで、ゴドフリーやヴァックスのいる陣から見える大星山は霧の森を越えた遥か先にあり、数時間で行けるような距離には見えないからである。ドーリーはヴァックスに霧の森の危険性から今回大星山に到達した方法、大星山やそこに潜んでいる獣人の特徴などを事細かに伝える。
「うむ、承知した。」
ヴァックスは一通り報告を聞くとドーリーを下げる。
「あの場所もまた、“我らの時代”より変わらない神秘の場所なのだな。」
ヴァックスは目の前に広がる霧の森とその奥に鎮座する大星山を見ながら小さく呟く。その瞳にはどこか怪しげな光が宿っている。
翌日、教会軍には敵を過小評価せず全軍での攻撃を行うことと、それに伴い必要となる軍船の到着を待つことが発表され、2万の教会軍は暫く自陣での待機となった。
◇ ◇ ◇
一方でローズをはじめとする天狼族の面々も今回の侵略者の到来を重く見ていた。ローズの家にタージとコウの戦闘で指揮を執る2人が集まり話し合いが行なわれた。
「コウの話によれば、敵は改めて我々を攻撃してくる心づもりのようだ。問題はどのくらいの規模で攻めてくるかだが、、、。」
ローズの発言にタージが同意する。
「兄貴の言う通り前回と一緒なら大した問題にはならないが、それより多ければキツイぞ。それに今回は偶然ムツが敵を早くに発見してくれたから上手くいったが、次は分からん。そもそも敵は何処から攻めてきているんだ?」
タージの疑問にコウが答える。
「回収した敵の遺体を確認したところ、敵の装備にはドミヌス帝国の紋章がありました。それだけで断定はできませんがドミヌス帝国の軍勢かと。北の麓から上陸したとなると霧の森を避けたようですね。冬なら海が凍って来れないのに、タイミングの悪い。」
「とりあえず、敵の規模を把握するためにも一度、偵察を送るべきだな。後は交代で前回の上陸地点に見張りを置こう。」
ローズが纏めると皆が無言で頷く。
「よし、決まったからには善は急げだ。すぐに見張りのローテーションと偵察部隊を決めよう。」
こうして天狼族側でも来るべき戦闘に向けた準備が行われ始めた。
◆ ◆
その頃、オドはカイ、ムツ、ルナの3人と一緒に狩りに出ていた。
前回の戦闘に参加していなかったオドは3人に戦闘について聞いていた。カイとルナの2人はタージの率いる部隊に、ムツはコウの率いる部隊に参加していた。その為本格的な戦闘に参加したのはこの中ではムツだけだった。
「ムツのやつ、俺らの中では一番の手柄だぜ。敵を見つけるし、戦闘に参加もしてるんだからなあ」
カイが言うとルナも頷く。
「そんなことをないよ。」
ムツは余り感情を出さずに謙遜する。普段からムツは寡黙な方だが、感覚の鋭いオドにも今日のムツはいつにも増して感情が読めなかった。
「俺も早く戦闘に参加したいな。最近は稽古でもムツの調子がいいからな、負けてられないぜ。」
カイが呟き、ムツの肩を叩く。ムツは何か考えていたのかビックリしたように肩を揺らし、そんなムツを見てルナが微笑む。そんな3人組をみて、改めてオドは同世代の仲間がいたらと思わずにはいられないのだった。
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