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侵略者 ①



オーロラの出現から一夜明け、剣契で不在のオドを除いた全ての天狼族が集められた。


昨晩の出来事もあり天狼族の面々は何か大きなことが起こる予感の中、集落の中央に集まる。静寂と注目の中、まずは現在の天狼族のグランであるタージが立ち上がる。


「みんな、おはよう。朝早くからすまないね。まず俺から一つ発表がある。」


タージの発言に皆が少しざわめき始める。


「いや、俺のは皆が思うような大した話じゃない。昨晩の件を受けて俺は借り物である、この指輪を兄貴に返すことにし、兄貴もそれに同意した。」


そういうとタージはローズを呼び壇上に上がらせると、天狼族の皆の前で自らの指のシリウス・リングを外しローズに渡す。指輪を受け取ったローズは12年ぶりに手元に戻ったそれを少し見つめると、意を決したようにそれを指に嵌める。


「今、この瞬間より、我らが天狼族のグランは再びローズ・シリウスとなる。異のあるものはいるか!! いれば立ち上がり名乗りを挙げろ。」


タージがそう叫び、皆を見渡す。立ち上がる者はなく、ローズのグラン再任が決定した。


「異議がないのはそれはそれでつらいな。まあ、俺の人望なんてこんなもんだ。これから頼むよ、兄貴。」


タージはそう言うとポンとローズの肩を叩いて壇から降りる。


壇上にはローズだけが残り、皆の注目が集まる。ローズは皆を見渡すと、ゆっくりと口を開く。


「ローズ・シリウスだ。再びグランとなる運びとなった。よろしく。」


そういうとローズはタージを見る。


「まず、我が弟よ。今日まで我々天狼族を正しく導いてくれたことに感謝する。こんな不甲斐ない兄の我儘を受け入れてくれて、そして再び儂を奮い立たせる機会を与えてくれて、ありがとう。心からの敬意と称賛を。」


ローズは指輪が新たに輝く右手を左胸に当てて、タージに感謝と敬意を示す。それに続くように天狼族の皆からタージに向けて拍手が鳴り響く。



拍手が鳴りやむのを待って、再びローズが口を開く。


「オーロラを見たものは多いだろうが、ここで一度皆に宣言する。」


ローズは一呼吸置き、皆を眺める。


「昨晩、キーンとタマモの息子、オド・シリウスに対し天狼王様による御加護と啓示が与えられた。彼の祖父として誇らしい事ではあるが、これは同時にかつて天狼王様が退けた闇の復活を示すものでもある。我らは天狼王様の血を引き継ぐ北天の護人もりびとである。今が、今こそが、我らの使命を果たす時である。」


しんとした空間にローズの声が響く。


“北天の護人”


これこそが彼ら天狼族が人里離れた超高地に世俗を避けるようにして生活する理由である。


彼らは、かつて世界から闇を祓い世界を星の下に統一した一匹の狼、天狼王リオの直系の子孫であり、再び闇が世界を支配しようとした時にそれを防ぐ為に闘うという使命を与えられている。

剣契などの様々な儀式もその為のものであり、彼らは今や御伽噺おとぎばなしとなっている天狼伝説の生き証人なのである。


天狼王シリウスの血をこの身に宿す者達よ。覚悟の時だ。」


ローズが鼓舞するように声を張り上げる。


ザッという音ともにタージが立ち上がり、ローズがしたように右手を左胸に当てて直立し忠誠を示す。それに続くようにして他の者達もその男女に関わらず、皆タージにならって忠誠を表明する。


最後にローズが大星山の山頂に向かって忠誠を示す。


「皆、ありがとう。くれぐれも忘れるな。皆が抱いている忠誠心は皆自身の身体に流れる血への忠誠だ。いずれ来る闇に、備えよう。以上だ。」


ローズが壇を降りる。


緊張か、もしくは滾る血の為か、ローズは震える手を固く握りしめるのだった。





ここまでご覧になって頂きありがとうございます。

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