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剣契(後) ①



オドが剣契の日を迎える。


オドは天狼族の正装である黒シャツに黒のスーツ、黒地に金の刺繡が施されたネクタイをまとい、ローズと共に家で待機をしている。腰には緑鹿の弓と青蛇の短剣が収められており、手には鞘に納まったキーンの剣とタマモの戦槌が重なるように握られている。


「そろそろだな。」


そういうとローズは立ち上がる。


ローズは緊張した面持ちのオドの肩を優しく叩くと、後ろを向くようにオドを促す。


「オド、オドが子供としてこの家の門をくぐるのは今日で最後だ。次、オドがこの家の門をくぐる時には君はもう立派な大人だ。」


そう言いながらローズはこんの長いコートをオドの肩に掛けてくれる。


「今日のオドの姿を見てようやくタマモとキーンとの約束を果たせたように感じるよ。天にいる2人もきっとオドの門出を祝っているはずだよ。」


オドの背中越しにローズの声が聞こえてくる。


オドは振り向くことなく、いつものようにキーンの剣を背負い、タマモの戦槌を右手に握る。


家の扉がノックされる。出立の時間が来た。


「オド、儂の自慢の孫。胸を張って、いってらっしゃい。」


ローズの言葉に背中を押される。


「、、、今日まで、ありがとう、爺ちゃん。行ってきます。」


扉が開かれ、オドは家の門をくぐる。






剣契は約一週間掛けて行われる儀式である。


これは一人の子供が大人となるための旅であり、その過程で剣に生涯の誓いを立て、その責任をその生涯をもって引き受ける事となる。


新成人はまず、遠吠えをする狼の形をした二つの山頂を持つ大星山の狼の下顎に当たる低い方の山頂に昇る。そこにあるしも祭壇にて座禅をし、天に祈りを捧げることで啓示を得る。そののちに、狼の鼻先に当たる高い方の山頂に昇り、そこにあるかみ祭壇にて一晩、天の大星天狼星に剣舞を披露する。夜明け、山頂に剣を突き立て血の誓いを立てて剣契は終了し、あとは下山するのみである。


大まかな流れはこの様になっており、その中でも細かに内容が決まっている。






オドは現在、集落の中心で集落のグランであり、ローズの弟であるタージから儀式の流れの説明を改めて受ける。一通り説明が済むと、タージはオドに頷いて、白い袋を手渡す。ここには儀式に使う道具と食料が入っており、儀式の道具にはオドが洞窟にて獲得した角鹿の角と海蛇の脱殻ぬけがらも含まれている。また、食料と言っても山頂の祭壇での飲食はできないため主に移動中に食する最低限のものである。


「ありがとうございます。それでは、行ってきます。」


オドは袋を受け取るとタージに一礼すると大星山の山頂に至る道のある集落の東門へと歩いていく。


門への道の沿道には天狼族の面々がオドの門出を見送る。その中にはカイとムツや、コウとルナの姿もある。各々が弟分であるオドに激励の声をかけている。


彼らの声を受けてオドは集落の門をくぐり、約一週間の旅に出る。




オド・シリウスの剣契が始まった。





ここまでご覧になって頂きありがとうございます。

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