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剣契(前) ⑧



オドが集落に戻る頃には日も傾き、集落が騒がしくなってくる。


「おー、オドー、今日も角鹿探しかー?」


オドが集落に入ろうとすると今日の獲物を抱えたカイとムツに声をかけられる。


「いや、カイ。あれを見ろ。」


ムツがオドが手に持っているものに気が付く。カイもそれに気が付き驚いた表情を浮かべる。


「オド。手に持ってるのは角だよな。お前、もう角鹿を仕留めたのか!!」


オドが頷くと二人は歓声を上げる。


「そりゃ凄い。流石はオドだ。なあムツ。」


「凄い。オドとは言えこんなに早く仕留めるとは。」


「おう。こうしちゃいられない。コウさんに報告だ。行こう、ムツ。オドはローズさんに見せてきなよ。」


そういって二人はあっという間に走り去っていく。一人残されたオドもローズの待つ家へと足を速めるのだった。



◇ ◇ ◇



「ただいま。」


オドが家に帰るとローズが出迎えてくれる。


「おかえり、オド。おお、角鹿を仕留めたか!!」


ローズはオドが掲げた角を見て声を上げる。


「そうか、そうか。流石はわしの孫じゃ。オドは凄いな。」


そういって頭を撫でてくれるローズにオドは少し照れくさうにする。


「ん? オドはそんな弓を持っていたかい?」


ローズはオドの持つ見慣れない弓に気が付く。オドは今日洞窟で起こったことをローズに話して聞かせる。ローズは静かに孫の話に耳を傾け、頷く。


「そうか、そんなことが、、、。」


ローズはしばらく黙ると、ゆっくりと口を開く。


「オド、お主が体験したことはきっと素晴らしいことだ。今日の記憶が、その弓が、いずれオドの運命を拓いてくれるだろう。」


オドは静かに頷く。


「だが、なるべく今日起きたことは周りに話さないようにするべきだ。わかったかい。」


ローズは諭すようにいう。


「わかったよ。爺ちゃん。」


オドも何となく緑鹿との時間を他人と共有したくないと感じていたため、素直に頷く。


「うむ。」


ローズは微笑んで頷くと、再びオドの頭を撫でるのだった。





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