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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第2章 自由都市ヴィルトゥス(中)
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怪しい雰囲気④


「9階層も大体これくらいだな。」

ユーグがそう言って手元のダンジョンマップを覗き込む。

「遂に10階層到達か!!」

「…ギルドで許可が降りてからだけどな。」

喜ぶコリンをユーグが宥める。

「そうはいっても今日は8,9階層でとことん狩りまくったからな。ランクも上がるだろ。」

「そうだね!! 今日の成果で僕がランクBに、コリンとユーグがランクAに昇格できるはずだよ。」

「ランクA、上級冒険者の仲間入りか。」

「まだわからないぞ。それに、まずは生きてダンジョンから出よう。」

各々の昇格の期待感を口にするコリンとハーザーにユーグはそう言って歩き出す。

その時、オドの耳に遠くでの戦闘音が聞こえた。

「ユーグさん。この先で戦闘が起きてます。」

「オド、ありがとう。9階層(ここ)にいるくらいだから冒険者サイドに余裕はあるだろうが、、、一応向かうか?」

ユーグが振り返ると、他のメンバー達が頷く。

「よし、なら向かおう。」


“鷹の爪”の5人がしばらく進むと、冒険者が戦闘をしているのが見えてくる。

青い巨大ガニのモンスターと戦う7人の冒険者達は白地に青で統一された装備を身に着けており、前衛の持つ盾に刻まれた象徴的な瞳が彼らがクラン・アイのメンバーであることを示していた。

「一番デカいクランの面々だ。こりゃ俺らの待機はいらんな。」

カルペラがそう言って盾を下ろす。

“鷹の爪”に気付いたのか、後衛の1人が手を挙げて“大丈夫”というように手を振る。

「カルペラさん、手を挙げた彼の名前は分かりますか?」

「奴はボギーだな。俺達6~8年目の世代ではピカイチだ。ランクは…確かSランク。」

ユーグの問いにカルペラが答える。


ボギーは戦闘に参加せず、他の6人を見守るように後方に控えている。

「どうやら今日はお守らしい。」

「つまんねえな。」

ユーグの言葉にコリンが毒づく。

戦闘している6人は中級冒険者のようで、善戦しているが決定打に欠けるような状況が続く。

「ジリ貧だ。なかなか厳しい。」

「甲羅の防御力を打破できないんだな。破壊力不足はどうにもならない。」

「コリンの大斧やオドの戦槌なら一撃だな。」

「たりめーよ。」

ユーグとコリンがそう言って戦況を眺める。


遂に状況を打破することはできず、冒険者達は撤退し、ボギーと入れ替わる。ボギーは余裕のある表情でモンスターの正面に立つと、短く詠唱をする。

「“毒蔓”」

突如、地面から生えてきたつるがモンスターに巻き付き始める。

モンスターは蔓の拘束から逃れようと藻掻くが、蔓がモンスターを離すことはない。

さらに、蔓の巻き付いた部分から滲み出る毒が甲羅を徐々に浸蝕し溶かしはじめる。

「毒の魔法なんて初めて見た。」

驚くコリンの横でユーグはボギーの戦闘をジッと見つめる。一方、オドはかつての緑鹿との稽古を思い出していた。

「“バール・ダンプ”」

再びボギーが詠唱し、今度は巨大な棍棒が出現する。

モンスターは危険を察知したのかハサミをボギーに突き出すが、蔓でできた盾によって阻まれる。

出現した巨大な棍棒がモンスターに振り下ろされ、浸蝕されていた甲羅が砕け散る。

そのままモンスターも消滅し、その場に静寂が訪れる。

「、、、」

圧倒的な結果にその場にいた誰もが黙り込む。

「これが、ランクS冒険者、か。」

「俺らもまだまだ、だな。」

ユーグの呟きにコリンがそう返し、ユーグは黙って頷く。

ボギーはそんな“鷹の爪”に一瞬目を向けると、振り返って仲間と共に歩き去っていく。

品定めするようなボギーの視線の意図をオドは肌で感じ取っていた。



白鯨ソピアーのダンジョンを出た"鷹の爪"の面々はギルドに向かう。

「いやー、凄かった!!」

コリンがそういって伸びをする。

「まあパウさんもSランク冒険者ではあるんだけど、全盛期真っ只中のSランク冒険者の戦闘なんて滅多に見れないからな。いや、いいものを見た。なあ、ユーグ。」

「ああ。それに課題も見えたしな。」

ユーグの発言にコリンも頷く。

久々のダンジョン探索はオーバフローを通した自分たちの成長とともに、"単体での戦闘力の幅"という課題点を実感させた。単体での戦闘力が必須の深層階が現実的な目標になってきた"鷹の爪"にとって、ユーグとコリンの尖った性能の難点が明確なものになりつつあった。

「地道にやっていくしかない。」

カルペラがそういってユーグの肩をたたく。

一方、オドはどこか上の空のような表情で歩いていた。

冒険者ギルドが見え始め、5人の足取りは速まるのだった。



冒険者ギルドは大勢の冒険者達でごった返していた。

"鷹の爪"はさっさと魔石の買い取りを終わらせると受付に続く長蛇の列に加わる。

オドも一緒に並ぶが、ふと遠くからの狙うような視線を感じて顔を上げる。

「どうかした?」

何かを探しているようなオドにハーザーが声をかける。

オドは視線の正体を掴むことはできず、ハーザーに「大丈夫です。」と返して前を向く。

「あっ、オド。あの冒険者、弓を持っているよ。」

再びハーザーに声をかけられてオドが顔をあげると、弓を装備した冒険者の姿が見えた。

「オドが注目されるようになってから偶に見かけるようになったよな。」

コリンもそういって弓を装備した冒険者を見る。

「そうなんですね。」

「最近、前衛職の飛び道具として注目されてるんだ。」

「まあ、それでちゃんと戦えているのはオドくらいだ。」

オドが驚いたように言うと、ハーザーとコリンが教えてくれる。

「とはいえ、試行錯誤は大切だ。思い切ってやってみるのも大事だからな。」

受付の順番が近づきコリンが呟くようにそういって前を向く。


結果的にランク達成目標に到達し、ユーグ、コリンのランクA昇格とハーザーのランクB昇格が認められる。

これによって"鷹の爪"はランクA冒険者2名(ユーグ、コリン)、ランクB冒険者3名(オド、ハーザー、カルペラ)となり、晴れて11階層までのダンジョン潜入も許可された。


久しぶりのダンジョン攻略で疲れただろうと言うことで、そのまま解散となる。

オドはダンのカフェテリアに顔を出してから帰路につくのだった。

Bogdan(ボグダン) BOGDANOVIC(ボグダノビッチ)と調べていただけるとボギーのモデルになった人が出てきます。


ここまでご覧になって頂きありがとうございます。

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