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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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ブレークアウト 完



オド達が冒険者達ギルド内で戦闘している頃、ギルドの外側にも動きがあった。

一向にギルドから討ってでないギルド内の冒険者に痺れを切らした大規模クランの冒険者達は各々の判断でギルド周辺にいるモンスター達の掃討を開始していた。

「決して討ち漏らすなよ!!」

パウがクラン・クロウのメンバー達に向けて声を張る。

帯電した戦槌が振り下ろされ、パウの周辺にいたモンスターが次々と消滅する。

パウは敵のサイズの割には手応えのない結果に違和感を覚えつつも、とめどなく押し寄せるモンスター群へと突き進んでいくのだった。



◆ ◇ ◆



戦闘開始から約3時間。


1階の冒険者達は疲れ果てていた。

モンスターは身体の所々に剣や槍が突き立てられてはいるものの、特に効果は無いようだった。

意外にも、モンスターは一定以上の範囲を出ると攻撃はしてこなくなり、1階にいた冒険者達は冒険者ギルドの外へ退避する。再びモンスターはエントランス中央に鎮座し、2階の後衛職の冒険者とのにらみ合い状態となる。

「ねえ。」

モンスターを眺めるユーグにユキを連れたリサが声を掛ける。

ユーグは少し驚いた表情を浮かべるが、すぐに気を引き締める。

「どうかしましたか?」

「うん。そろそろ私達も本気出そうかと思ってね。君達も協力してくれない?」

リサはそう言ってコリンと一緒に2階に上がってきたオドに視線を送る。

「分かりました。」

「うん。話が早くて助かるよ。」

リサはそれだけ言うと去っていく。

ユーグはリサ達の後ろ姿を少し眺めたあと、オドに声を掛ける。

「オド、弓矢の用意をしてくれ。ここからは広範囲攻撃で攻める。」

「はい。」

オドは頷くと弓と鉄矢を取り出す。

ユキとリサがそれぞれ2階の南と西の壁際に移動したのを確認して、ユーグはオドに北側に行くように指示を出す。オドはすぐに北側に移動するが、途中でコリンに何やら耳打ちする。


◇ ◇


4人はモンスターを囲むように移動する。

ユキが剣を抜いて構えると、突如、剣が様々な色を含んだ輝きを放ち始める。

剣の輝きは徐々に大きくなり、まるで巨大な刀身のような形を取る。

「これは、、、」

オドはユキの剣の変化に驚きを漏らすが、ユーグとリサは無反応のままだった。

一方、ユキは反対側の壁際でオドの見せた反応を見て小さく呟く。

「、、、やっぱり、見えている。」


リサ達の動きを見て他の2階にいる冒険者達も臨戦態勢に入る。

「燃え尽きなさい。“業火”」

リサが詠唱するとモンスターの足元を中心に全てを燃やし尽くす炎がモンスターを取り囲む。

「アイズ・アロー」

同時にユーグが詠唱すると、モンスターの頭上に約40もの鋭い氷柱つららが生成され、モンスターへと殺到する。

モンスターは咄嗟にその場を飛び退き、業火の中に氷柱が飛び込む。

「まだまだ、“煉獄”」

リサは初めてモンスターをエントランス中央から移動させたことに手応えを感じつつ、次なる魔法を詠唱する。再びモンスターの足元が炎に包まれ、さらにいくつもの槍がモンスターを突き刺すように足元から湧いてくる。

「アイズアロー・チェインフレイム」

ユーグが詠唱し、無数の氷柱が再びモンスターに殺到する。

今度はモンスターも避けきれずに足元と頭上からの攻撃に被弾する。さらに、ユーグの氷柱は傷口でから燃焼を始め、モンスターは苦痛の叫びをあげる。

「いまっ!!」

ユキがそう呟き剣を振り下ろす。

常人に見えない巨大な刀身がモンスターを捉える。

モンスターの背中に抉るような大きな傷ができる。モンスターは何が起こったか分からないようで、顔を見上げて周囲を伺おうとする。

次の瞬間、鉄製の矢が目にもとまらぬ速さで飛来し、モンスターの眉間を貫く。

モンスターは弾かれたように後ろに倒れる

一斉に冒険者達の歓声が沸き、外に退避していた1階の冒険者達も戻ってくる。


しかし、モンスターは消滅しなかった。


注目が集まる中、モンスターはゆっくりと起き上がると4本脚で立ち、尻尾をピンと上に立たせる。

黄色の瞳に怪しい光が宿り、一度、威嚇するように鳴き声を上げ、先程までの余裕の表情から打って変わり、モンスターは本気の表情を見せる。

次の瞬間、モンスターの周りの空中に地割れの破片が浮き出す。

さらにオブジェや落ちている剣や槍なども浮遊しだしたかと思うと、2階の冒険者に向けてそれらが一気に放たれる。土煙が上がり、一気に大多数の冒険者が戦闘不能に陥る。

「うっ、、、」

ユーグも右下腹部に突き刺さった槍の痛みに悶える。

さらに、この攻撃で冒険者ギルドの壁が崩れ、新たな瓦礫が生まれる。

モンスターは瓦礫や剣などを再び自身の周りに浮遊させ、まだ立っている冒険者達に炸裂させる。

攻撃は1階の冒険者達にも及び、冒険者ギルド内に人が続々と崩れ落ちていく。



攻撃は5回ほど続き、その場に立っていられたのはユキとオドのみだった。

「、、、」

ユキは何も言わずにモンスターに跳び掛かる。

刀身のサイズは先程より少し小さく調整してあるが、今度はモンスターも明らかにユキの剣の刀身が見えている様だった。ユキが切りつけ、モンスターがこれを避ける。モンスターが爪を突き立て、ユキがそれを避ける。


◆ ◆


ユキとモンスターの一進一退の攻防が行われるなか、オドは動けずに、ただ立ち尽くしていた。

沢山の冒険者達が倒れている景色を見て、オドの脳裏に大星山での記憶が蘇る。


続々と倒れていく仲間達。燃え上がる集落。何もできずに逃げる自分。

必死に忘れようとしていた記憶が視界に流れ込んでくる。

息が上がり、動悸が激しさを増していく。

視界がどんどん狭くなっていく。


◆ ◆


ユキとモンスターの互角の激突が続くが、遂に終着点が訪れる。

モンスターの爪を避けたユキが自身に迫る白黒の物体を見て小さく目を見開く。

ユキはモンスターの尻尾に弾き飛ばされ、自分の身体に制約が効かなくなるのを感じる。

ユキは地面に叩きつけられ、モンスターの鋭い爪が迫る。



「、、やめろ。」

オドが小さく呟く。

一度、心臓がドクンと強く身体に鳴り響く。

何かが解き放たれたかのように身体に流れる血が滾るように熱くなる。

視界が一気に広がり、クリアになるのを感じる。


「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


叫び声を上げるオドの身体は、勝手に動き出していた。


ここまでご覧になって頂きありがとうございます。

拙い文章ですが、少しでも気に入っていただけましたらブックマーク、高評価をしていただけると幸いです。

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