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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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ブレークアウト ⑤

モンスターは超巨大なワオキツネザルと思って頂いて差し支えないです。



ユキとオドの2人は階段を降りて、3階の廊下を駆け抜ける。

走っているオドの視界に、3階に常駐しているギルド職員が映る。

「ギルドマスターは?」

「ライリー様は避難された皆様の激励に向かわれて、只今不在です。」

ユキが問うと、ギルド職員は焦った様子ながらも丁寧に答えてくれる。

ユキは無言のまま再び走り出す。オドも答えてくれたギルド職員に会釈をしてユキの背中を追いかける。

2階に繋がる階段を駆け降りる2人の耳にモンスターが発したと思われる鳴き声が聞こえる。

高く、ざらついた耳障りな音に向かい、2人は逸る気持ちで階段を駆け降りていく。



「オド、やっと来たか!!」

オドが階段を降りると【鷹の爪】の面々が揃ってオドを待っていた。

ふとユキの方を見ると、そちらも【エレメンタル・ミューズ】のメンバーに受け入れられていた。

「オド、急いで戦闘準備だ。モンスターが出現したんだ。」

コリンがそう言ってオドに鎧と武器を渡してくる。

オドが鎧を装備している間にユーグが事の顛末を教えてくれる。

ユーグによると冒険者達がいつものように朝の支度をしていると、突如としてエントランスの中央部が地割れを起こし、そこから巨大なモンスターが起き上がるように出現したそうで、冒険者ギルドが激しい縦揺れに襲われたのもこのためだと言う。

「、、、それで、どんなモンスターなんですか?」

「少なくとも、今まで見てきた中で1番デカいな。」

オドが問うとコリンがそう答える。

「実際見るのが1番早い。行くぞ。」

ユーグがオドの支度が終わったのを確認してそう言う。

オドが頷き、【鷹の爪】は駆け出していくのだった。



◇ ◇



災厄それ”はすぐそこにいた。

白黒で構成された体毛と不均衡な程に長い尻尾、長く鋭い爪に高い鼻、狡猾そうな表情に黄色い眼が輝く。地割れの中心に佇む厄災それは、退屈そうに自らを取り囲む冒険者達に目を向ける。

「完全に様子見状態だな。」

ユーグがそう言って膠着状態にある戦場を眺める。

1階では前衛職の、2階には後衛職の冒険者が臨戦態勢で1匹の超巨大モンスターを取り囲む。

「、、、ん?」

ふと、ハーザーが首を傾げる。

「ハーザー、どうかしたか?」

「いや、何となく、さっき見たよりもモンスターが大きくなってるような気がして。」

ユーグが聞くとハーザーはそう答えて目を擦る。

「確かに、オドと合流する前よりもオブジェとの距離が近づいているな。」

カルペラもそう言ってモンスターを注視する。

「もしそうならマズいな。」

ユーグはそう言って舌打ちするとコリンの方を振り返る。

「コリン。」

「ああ。俺らが動こう。」

コリンがそう言うと、ユーグが満足したように頷く。

「分かった。2階は俺とハーザー、1階はコリン、オド、カルペラさんの構成にする。」

ユーグが指示を出し、全員が頷く。ユーグがニヤリと笑う。

「みんな、死ぬなよ。それじゃあ、思う存分暴れよう。こんな機会は二度とないぞ。」

ユーグの言葉でパーティーは二手に分かれる。


数十秒後、ユーグの炎魔法とコリンの突撃を契機に戦いの火蓋が切って落とされる。

これに他の冒険者達も続く形で一斉にモンスターへの攻撃が始まるのだった。



大量の魔法が降り注ぎ、合わせるように冒険者達が突撃する。

しかし、降り注ぐ魔法は白黒の縞模様の長い尻尾によって全て振り払われ、接近した冒険者には鋭い爪が襲い掛かる。さらに、長い尻尾で1階の冒険者達は壁まで吹き飛ばされる。

「ぐっ、、、!!」

吹き飛ばされたコリンが壁に叩きつけられた衝撃に呻く。

コリンは立ち上がろうとするが、すぐに自分の身体が動かないことに気付く。

視線を動かして周囲を確認すると、尻尾に吹き飛ばされた冒険者達の多くはコリンと同様に麻痺で動けないようだった。その時、一緒に飛ばされたカルペラが隣で立ち上がる。

「、、、?」

コリンは不思議に思いながらも、動けないため戦場を観察することにする。

飛び跳ねては尻尾を避けながら戦槌を振るうオドに苦笑しつつコリンは注意深く戦闘の様子に注視する。

コリンが再び動けるようになるまで3度ほど冒険者達が吹き飛ばされ、その度に麻痺する者とすぐに動き出せる者が発生する。そして、すぐ動ける者の殆どが大盾使いであるか全身フルプレートの鎧を装備していることに気付く。

「、、、そう言う事か。」

コリンは小さく呟くと、再び吹き飛ばされたカルペラに近づく。

「カルペラさん。ひとついいか?」

「どうかしたか?」

「ああ。恐らくアイツの尻尾に直接触れると麻痺状態になる。」

コリンがそう告げるとカルペラも違和感を感じていたのかなるほどと頷く。

「それが分かって何かできる訳ではないだろうが、他の冒険者にそれを伝えて欲しい。」

「相分かった。」

そう言ってコリンとカルペラは散っていく。

すぐにコリンの情報は伝達され、ギルドの武器庫から大盾の予備が配られる。

戦闘が始まって30分程が経過し、麻痺する者は減ったが戦況に好転は見られないままだった。


◆ ◆


冒険者ギルド1階の壁際をハーザーとシオンが併走している。

2人は数少ない回復魔法の使い手として戦場を駆けまわっていた。

「あぶないっ!!」

「きゃ!!」

ハーザーは右手でシオンを制止させると、とっさに盾を構える。

振るわれたモンスターの尻尾から棘のような物が飛び、ハーザーの盾がそれを受け止める。

「急に止めてごめんね。大丈夫だった?」

ハーザーは座り込んでしまったシオンにそう言うと手を差し出す。

「あ、ありがとうございます。」

「気にしないでいいよ。じゃあ、行こう。」

シオンが立ち上がると、ハーザーはそう言って微笑みシオンを引っ張るように駆けだすのだった。



同じ頃、尻尾を避けて戦っていたオドとリンカの2人にも同様に棘が飛ばされる。

オドは篭手の小楯で棘を受け止め、何事もないように戦闘を続ける。

「ありゃ別のバケモンだな。」

そんなオドの様子を見てコリンが苦笑いを浮かべる。

戦場においてオドは鬼神の如き働きを見せていたが、戦槌と短剣では余り攻撃力が出せないのに加え、他の冒険者達が殆どダメージを通せていないこともあって手応えのない状態が続いていた。

一方、回避盾を是とするリンカの方も短剣2本では攻撃力が低くジリ貧での戦闘が続いている。

「しまった!!」

自分に向かって飛んでくる棘を見て、リンカが空中で舌打ちする。

避けきれずに棘はリンカの服を貫いて、チクりとした針に差される感覚がリンカを襲う。

突如、リンカは身動きが取れなくなり自分が麻痺状態になったことを悟る。

受け身も取れずに落下したリンカに鋭い爪が迫る。

リンカは死を覚悟して硬く目を瞑り、鈍い音が響くが、痛みに襲われることは無かった。

リンカが目を開けると、そこには肘の盾でモンスターの爪を受け止めるコリンの姿があった。

「うおぉぉぉぉぉらっ!!」

コリンが大斧を振ってモンスターの手を切りつけると、爪は引かれる。

コリンはそのまま麻痺したリンカを抱えると壁際まで退避する。

「ハーザー!!」

コリンが叫ぶとすぐにハーザーとシオンが近づいてくる。

「麻痺してる。後は頼んだ。」

コリンはそれだけ言うとすぐに戦場へと戻っていく。

リンカは視線を走り去るコリンの背中から離すことができなかった。



◇ ◇ ◇



戦闘開始から約1時間半。

冒険者達は大きな成果を得られないまま苦戦を強いられていた。

少しづつではあるが協力してダメージを通せるようになってきたが、モンスターはケロッとした表情のまま戦闘を続けている。2階の冒険者も物理魔法ならダメージを通すことが分かったが、余り効果は無いようだった。唯一の救いはモンスターの更なる肥大化が抑えられていることくらいである。



疲労と共に冒険者達を絶望感が襲っていく。


ここまでご覧になって頂きありがとうございます。

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