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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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濁流の中で 完



「ん、、、。」

オドはいつものように陽が昇る前に目を覚ます。

いつもと違う天井に、自分達の置かれた状況を思い出す。

オドはまだ寝ている他のメンバーを起こさないようにこっそりと会議室を出る。

「、、、静かだな。」

吹き抜けのエントランスは静かで、微かに外で警備をしている冒険者の話声が届く。

オドの足は自然と上へと繋がる階段に向かっていた。

「、、、、。」

いつもは衛兵のいる階段への入口だが、非常時なこともあり誰もいない。

オドは静かに階段を登っていき、コツコツという足音だけが冷たく螺旋階段に響く。



屋上には誰もいなかった。

オドは柵に肘をついて目下に広がるヴィルトゥスの街を眺める。

未だにマナはダンジョンより溢れ続けており、市街地にはモンスターが溢れている。

「、、、、?」

オドはある違和感に気付く。

モンスターのサイズが昨日に比べて大きくなっているように見えた。

恐らく流出したマナの総量によってモンスターの量、そしてサイズが大きくなっていくようだ。

オドが街の反対側を見に行くと、建物の屋根にまで届く特大サイズのモンスターが見えた。

「動かないのかな。」

冒険者ギルドの南東方面、ちょうど鍛冶ギルドの近く。

上半身が牛、下半身が人型をしたそのモンスターは微動だにせずその場に佇んでいる。

「試しに、、、。」

オドはそう呟くと持ってきていた緑鹿の弓に鉄矢を掛ける。

オドはモンスターに狙いを定めると、ゆっくりと矢を引いていき、放つ。

「よしっ!!」

風を切る音と共に飛んで行った矢はグングンと伸びていき、モンスターのこめかみの辺りに突き刺さる。

〝Gyaoooooooooo!!〟

「まずいっ!!」

次の瞬間、モンスターは咆哮を上げる。

オドが急いでもう一度矢を構えようとした、その時、一瞬の閃きと共にモンスターが斜めに切り落とされた。

「え?」

突然の出来事にオドは思わず素っ頓狂な声をだす。

そして、巨大モンスターを切り落とした人物に目を凝らす。

それはオドの見知った人物であった。





「起きててよかった。」

そう呟くのは鍛冶ギルドの屋上に立つユキ・ニーベルンだった。

ユキの手には7色の光を帯びた剣が握られている。

「これは、、、矢、かな?」

ユキは消滅したモンスターが残した魔石と共に転がる鉄製の矢を拾い上げる。

ユキが不思議そうに珍しい矢を眺めていると、モンスターの咆哮で目を覚ましたのか【エレメンタル・ミューズ】のメンバー達が屋上へと出てくる。

「モンスターの声で目が覚めたけど、ユキちゃんがもう倒しちゃってたか。」

「、、、リサ。おはよう。」

「ん、おはよう。」

ユキがそう言ってリサを見ると、リサは本当に寝起きのようで髪には寝癖が付いている。

「ん? ちょっと待って。あれって、、、?」

ユキを見ていたリサの視線がユキの奥、冒険者ギルドの方へと向けられる。

「ユ、ユキちゃん。おねーさん、ちょっと身だしなみを整えてくるね!!」

リサは慌てたように鍛冶ギルドの中へと入っていく。

ユキは不思議に思って、冒険者ギルドの方角へと振り向くと、オドが街の屋根を飛び移りながらこちらに向かって移動しているのが見えた。

オドはすぐのユキのいる場所に到着する。

「すいません。モンスターを刺激してしまいました。倒して頂いて、ありがとうございます。」

「うん、大丈夫。これは君の物?」

ユキが落ちていた鉄の矢を差し出すとオドはそれを受け取る。

「拾っていただきありがとうございます。」

「うん。」

ユキは黙ってしまい、少し気まずい時間が流れる。

「あ、あの、パーティーの皆さんは無事でしたか?」

「うん。大丈夫だったよ。君の仲間は冒険者ギルドにいるの?」

「はい。こちらも全員大丈夫でした。」

「そう、よかった。」

そう言ってユキは微笑む。

朝日に照らされて微笑みを浮かべるユキの姿に、オドは何となく鼓動の高まりを感じる。

「そ、それでは失礼します。ご迷惑をお掛けしました!!」

オドはそう言うと隣の建物の屋根へと飛び移り、冒険者ギルドへと戻っていく。

「、、、、いっちゃった。」

ユキの呟きは誰に届くことも無く、朝の空気に溶けていく。

そして、そんな2人の様子を冒険者ギルド4階からライリーが眺めていた。




「クルツ!!」

ライリーがそう言って冒険者ギルドの客室の扉を開ける。

「おお、ライリー。おはよう。ちょうど儂もお主を探しに行こうと思っていた所じゃった。」

「そうだったか、なら良かった。大規模クランへの物資供給の方法を思いついたぞ!!」

「そうか、儂も何となくマナ流出の全容を掴めたぞ。」

2人はそう言ってニヤリと笑う。

「ははは。では俺から説明するぞ。恐らくこっちの話の方がすぐ終わる。」

ライリーはそう言うと大規模クランへの物資供給の算段を説明する。

「話は早い。冒険者ギルド屋上から各クラン本部までロープを繋げて、そこに物資を括って送る。それだけだ。」

「ほう。しかし、どうやってロープを繋げる。道はモンスターだらけだぞ。」

「オド君だ。今朝、屋根を飛び移って移動するのを見た。」

「、、、そうか。しかし負担が大きくないか? オド君はオド君。キーンではないぞ?」

「、、、分かっている。」

クルツナリックが念を押すように言うとライリーが渋々頷く。

そんなライリーの見せる後輩らしい一面にクルツナリックが小さく笑う。

「、、、それで、マナの流出については何が分かったんだ?」

「うむ。それを説明するには、まずマナの持つ特性を説明せねばならない。」

「ふむ。」

「マナには、それを受け止める“器”へと集まる特性がある。我々が魔法を使えるのも大気に分散しているマナが我々の身体という器に集まるからだ。大地に流れると言われるマナの流れも恐らく同様だ。」

クルツナリックはマナに関する持論を展開していく。

「魔石もそうだ。原石となる石を器としてマナが宿り魔石となり、魔石のまとうマナがモンスターとして表出する。そしてダンジョンというマナに満ちた空間を生み出しているのはダンジョン・ボスという巨大な器が存在しているからといえる。」

「、、、まさか。」

「そう。そのダンジョンからマナが溢れているという事は、恐らくダンジョン・ボスよりもさらに大きな器が存在しているからだ。そして、その器の破壊こそがオーバーフローを終わらせる唯一の方法だといえる。」

「しかし、そんなものがこの街にいるなら既に発見されているんじゃないか?」

「いや、器は満たされない限り物体として表出はしない。つまり、これほどのマナが流れ込みながら、まだ器は満たされいないという事だ。」

クルツナリックの話を聞いてライリーは思わず身震いする。

「それでは、器が満たされた時には、、、」

「うむ。ダンジョン・ボスとは比べ物にならない、まさに怪物がこの街に産み落とされることになる。」

クルツナリックは感情のない声で、そう告げるのだった。



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