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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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濁流の中で ⑨



そして厄災は到来する。


オドはその時【鷹の爪】のメンバーと共にグランツの工房にいた。

オドの紹介を通じて【鷹の爪】のメンバーの武具の整備をしてもらっていたのである。

グランツは工房のすぐ裏手が(ダンジョン)となっているという立地もありギリギリまで冒険者達の助けになりたいと避難せずに街に残っていた。



地響きにオドの耳が反応する。

明らかに今までの地震とは違う、まるで崖を大量の水が流れ落ちていくような、そんな音だった。

「来た。」

「ああ、そうだな。」

地響きは他のメンバーにも聞こえたようで顔を見合わせて頷きあう。

「グランツさん、逃げてください。」

ユーグが言うよりも先にコリンがグランツを抱えていた。

「何をする、若造。降ろさんか。」

「うるせぇ。とっとと逃げるぞ。」

コリンはグランツを抱えたまま工房を出ると一気に丘を駆け上がり、避難民のテントが見える位置まで登る。

「爺さん、血迷った真似はするなよ。“岩砕き”!!」

コリンはそれだけ言うと、グランツとコリンの間の地面に大斧を振り降ろし、轟音と共に亀裂を作る。

その音を聞いてテントから避難した人々が顔を出すのを確認してコリンは丘の下へと戻っていく。

「、、、、。」

そんなコリンの後ろ姿をグランツはただ黙って眺めていた。



「悪い、待たせた。」

「いや、大丈夫だ。それより、見てみろ。」

コリンが戻ると、ユーグが言って街を指す。

街にはモンスターが溢れかえっており、中には屋根の上に顔を出す巨大なモンスターまでいる。

さらにモンスターはダンジョンにいる時よりも身体に纏っているオーラが強くなっている。

「こりゃ、冒険者ギルドに向かうだけでも一苦労だな。」

「ユーグ、あれを見ろ。」

ユーグとコリンが話しているとカルペラがそう言ってダンジョンの入り口の方に指をさす。

そこには濃縮され実体化したマナが水のようにダンジョンの入り口からヴィルトゥス街中へと流れていく様子が見えた。

「まあ、驚きはせんが、凄い量だな。」

「とりあえず今すべきことは一つだ。冒険者ギルドへ向かおう。」

「「おう!!」」

ユーグの指示に皆が呼応する。

コリンが硬い表情をしているオドの肩を叩く。

「オド、やってやろうぜ。大丈夫だ。思いっきり暴れるぞ。」

ニヤリと笑うコリンにオドの表情が少し和らぐ。

オドとコリンは握り拳を軽くぶつけて頷きあうと先行する仲間を追うように駆けていく。




「ぐっ!!」

モンスターの攻撃を大盾で受け止めるカルペラが小さく呻く。

冒険者ギルドへと向かう【鷹の爪】は目の前の道を塞ぐモンスターとダンジョンから溢れてくる魔力から発生するモンスターに挟まれるというタフな状況のなかで戦っていた。

「あと少し、耐えてくれ。」

ユーグがそう言ってパーティーを鼓舞する。

現在パーティーは進行方向の敵の殲滅をユーグ、ハーザー、カルペラの3人が、背後から迫ってくる敵の迎撃をオドとコリンの2人が担当している。

「“炎鷹”」

ユーグの詠唱と共に炎が目の前のモンスター達を焼き尽くす。

目の前からモンスターが消滅し開けた道ができる。

「“アイス・ウォール”!!」

ユーグが開けた部分を確保するように氷の壁でモンスターの侵入を防ぐ。

そんなユーグに向かって飛び掛かろうとするモンスターの額をオドの矢が貫く。

「すまない、オド。」

防御が間に合わなかったカルペラがミスをカバーしてくれたオドにそう言うと、オドは無言のまま軽く手を挙げる。

「後ろの2人、神懸ってるね。」

「ああ、助けられた。」

ハーザーがそう言うとカルペラもそう言って頷く。

オドは矢を次々と放っていき、矢は吸い込まれるようにモンスターを貫いていく。

驚くべきはその精度と威力で、オドが(やじり)だけ金属の木製の矢を使っているのにも関わらず、放たれた矢は深々とモンスターに突き刺さり、その全てがモンスターの核となっている魔石を射抜ていた。

「すご。」

ハーザーがそう言って眺めるオドに表情は無く、淡々と矢を放ち続けている。

そんなオドの一方でコリンは対照的に自分の感情を爆発させて戦っていた。

「うおりゃぁあ!!“廻旋瀑布”!!」

コリンはグランツの魔改造によって魔力を伝達できるようになった大斧を真横に振り抜いて一気に4匹のモンスターを消滅させる。

「まだまだ!! どんどん来いや。おら!!“大瀑布”!!」

コリンは追い込まれるほど燃えるタイプのようで今までのダンジョン攻略と違って安全マージンなど気にできない戦場において燃え滾るように暴れている。

今もまた振り下ろされた大斧によってモンスターがその餌食となる。

「おらおらぁ!!足んねえぞ!!」

「こわー。今のコリンには話しかけないどこう。」

そう言いつつハーザーがユーグにマナポーションを渡す。

「ありがとう。では、“炎鷹”。」

ユーグはマナを回復すると再び魔法を放つ。

殿(しんがり)の2人も凄いがユーグもほぼ1人で目の前に群がるモンスターを殲滅していく。

【鷹の爪】はモンスターに囲まれつつも着実に冒険者ギルド周辺に作られた臨時の砦へと進んでいくのだった。





「突撃だ!! 進め!!」

その頃、パウもまた大規模クランであるクラン・クロウの幹部として部下を指揮して戦っていた。

各地区に散らばる12の大規模クランは各々のクランホームを拠点にして中央の冒険者ギルドに対して出城となる要塞としての役割を果たしていた。

「“雷壁”」

パウが詠唱と共に戦槌を叩きつけると、周囲で天へと昇る電流の壁ができ冒険者とモンスターを分断させる。それを見てパウがクランホームへの撤退を指示する。

クランホームは元来堅牢な造りをしていたため、それが活かされている。

「、、、にしてもジリ貧だな。」

パウはそう言って歯噛みする。

分かってはいたがクラン・クロウは籠城戦に入っており、定期的に打って出てはいるがモンスターの数を大きく減らすことは出来ていなかった。

そしてその状況は他の大規模クランも同様であった。

「戦況にアクセントが欲しいな。それに籠城も長くなるとキツくなってくるかもな。」

パウはホームの物見櫓から戦況を見下ろしつつ、そう呟くのだった。


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