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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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濁流の中で ⑧



「、、、オーバーフローか。」

ヴィルトゥスを大地震が襲った翌日、タイムスを通して衝撃的な事実が発表される。

知らせはすぐにオド達【鷹の爪】にも届く。

「戦闘に参加しない市民は居住する地域の名を冠する(ダンジョン)に登るように、だって。それと身軽になるために家財道具とかは売った方がいいって。移動の便の為の硬貨の両替もギルドでするって書いてある。」

「それに商人への要請もあるぞ。市民への買取強化と商隊を率いての早めのヴィルトゥス脱出だとよ。復興資金を外で稼いで来い、って書いてあるぞ。復興が必要な損害は前提なのかよ。」

いつものようにメンバーが集まる酒場「モンタックの蜂蜜亭」にてタイムスを覗き込んでいるハーザーとコリンが言う。

「モンタックさんはどうするんですか?」

ふと気になったようでコリンが大柄で太り気味の酒場の店主モンタックに問うと元冒険者であるモンタックが得意げに答える。

「聞くまでもない。元冒険者として参戦するまでだ!!」

そう言って胸を叩くモンタックだったが、その衝撃が腰に響いたのか痛そうに腰を撫でる。

「こりゃダメだ。避難すべきですよ。」

そう言ってコリンが笑う。

「コリン、冒険者については何と書かれているんだ?」

今まで黙っていたユーグがコリンに問う。

カルペラも興味深そうにコリンを見つめる。

「ああ、読み上げるぞ。大規模クランに所属するものは各クラン幹部の指示に従って行動するように。クラン認定を受けている中小クランは各地区の支部長の指示に従うように。また、クラン認定を受けていないパーティー及びソロ冒険者は冒険者ギルド2階カフェテラス店主でありボス・スレイヤーでもある元冒険者ダン・カンの指示に従うように。またランクE以下、つまり低級冒険者の戦闘参加は一律禁止、元冒険者も現役引退から5年以上経つ者も戦闘は一律禁止、だってさ。」

「となると我々はダンさんの指揮下に入るのか。」

「そうなるな。」

ユーグが言うとコリンが頷く。

「とりあえず、ダンさんの店に行くべきだな。」

カルペラがそう言うとユーグが頷いて立ち上がる。

ここまで黙っていたオドも立ち上がって他のメンバーの後に続く。

店を出ていくオドの手は固く握りしめられ、そして、小さく震えていた。



オド達がダンの店に着くと既に先客がいた。

5人組の女性パーティー【エレメンタル・ミューズ】の面々だ。

「こんにちは。一昨日ぶりね。」

ワインレッドの髪をなびかせ【エレメンタル・ミューズ】のリーダーであるリサが【鷹の爪】の5人に声を掛ける。ベテラン冒険者なだけあり余裕のある表情を浮かべているが、その瞳は5人を試すように見つめている。

「こんにちは。パーティー【鷹の爪】リーダーのユーグと申します。よろしくお願いします。」

「あら丁寧にありがとう。私はリサ、この子たちは私のパーティー【エレメンタル・ミューズ】の仲間よ。今回はよろしく。」

ユーグが丁寧に挨拶をして自己紹介をするとリサも自己紹介をして2人は握手をする。

「2人とも眼が笑ってない、、、」

ハーザーが2人を見てこっそりと呟くとコリンとカルペラがうんうんと頷く。

そうこうしている間に、続々と冒険者達がダンのカフェテラスへと入ってくる。

それはクランに所属していない冒険者達だった。ユーグとリサもそうだが皆がお互いにジロジロと見合って牽制し合っている様で、それを見たダンが苦笑いを受けべている。

「恐らくこれで全てだな。皆、俺のところに集まってくれて感謝する。」

ダンが発言すると互いに牽制し合っていた冒険者達が素直にダンに注目する。ボス・スレイヤーとしての戦績と共にその人格によってダンは冒険者達からの信頼と尊敬を集めているようだ

「とは言ってもだ。クランから独立して好き勝手やってるお前らがいきなり誰かの指揮下で戦うのも不満がたまるだろう。よってお前らの役割は遊撃部隊となっている。」

ダンがそう言ってニヤリと笑うと冒険者達から騒めきと共に小さく歓声が上がる。

「冒険者ギルドマスター殿もお前たちの活躍には期待していた。」

ダンの言葉に歓声が大きくなる。

「正しだ、絶対に無理はするな。遊撃部隊は少人数だからこそ危険も多い。連戦も想定される。決して死ぬような真似はするなよ。生きてれば戦力だが、死んだらチャラだ。絶対に生きて帰ってこい。」

盛り上がる冒険者達にダンが諭すように言う。

「戦況は逐一報告するように。また、こちらからの連絡はこの2人を通して行う。」

そう言ってダンが指で示す先には新人研修教官のビンスと元冒険者のターニャが立っている。

「説明は以上だ。オーバーフローが発生した際には冒険者ギルドに集合するように。良いか?」

「「おう!!」」

ダンの言葉に冒険者達が呼応する。

「それでは各自、各パーティーで戦闘に備えること。お前ら、暴れるぞ!!」

「「おお!!」」

冒険者達が解散していく。

普段一匹狼の多い冒険者達には一体感があり、彼らの表情はやる気に満ちていた。





それから1週間、街にはいつ来るか分からない厄災への恐怖と慌ただしい雰囲気が漂う。

多くの非戦闘員が避難を終える中、鍛冶師達は戦闘のための武具や鎧を仕上げ、錬金術師はマナポーションや消耗品を調合している。商人たちも小さな商会は既にヴィルトゥスを出ており、大きな商会の一団や商船が続々とヴィルトゥスの街門に集まっている。


そんな日々が続くヴィルトゥスの明け方、オドはいつものように朝の剣の素振りをする。

しかし、その表情は硬く、まるで何かに取り付かれたかのように剣を振っている。

そんなオドの姿を冒険者ギルドの屋上からユキは心配そうに眺めるのだった。


第100話の挿絵の背景差分とヴィルトゥスの地図(再掲)です。

(ヴィルトゥス)の広さ、(ダンジョン)の大きさ、外壁の高さ、街の雰囲気等の参考になればと思います。

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

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