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シリウス サバイバー:生き残った天狼族の少年は、やがて大陸の覇者となる  作者: 海溝バケツ
第1章 自由都市ヴィルトゥス(前)
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濁流の中で ⑥



「今日も疲れたなー」

夕日を背にメンバーと共に歩くコリンがおもむろにそう言う。

【エレメンタ・ミューズ】と遭遇した日、ダンジョン攻略を終えた【鷹の爪】のメンバー達は回収したアイテムと魔石を換金しに冒険者ギルドへと向かっていた。オドもコリンと同様に丸1日のダンジョン攻略でヘトヘトだった。

「、、、?」

その時、僅かに地面がグラつくような感覚がオドを襲う。

足元が小さくではあるが震動して、ヴィルトゥスの街もろとも大地を揺すっている。

同時に、オドは足元の地面から微力ながらマナが漏れ出るように湧き上がってくる感覚に陥るが、揺れが収まると周囲は何事もなかったかのように普段と変わらない様子だった。

「地震だ。珍しいな。」

「じしん、ですか?」

ユーグの呟いた聞き覚えのない言葉にオドは思わず聞き返す。

「ああ。オドは地震が初めてか。地震は今みたいに大地が震動する現象のことだ。大陸の南方の中央部だとよくあることだそうだが、ヴィルトゥスで地震が起きるのは珍しいな。」

「そんな現象があるんですね。ビックリしました。」

「はじめはそんなもんだよな。なあ、ユーグ。」

「ああ。」

ユーグがオドに地震について教えてくれる。

オドはマナが地面から湧いてくるのも地震の特徴なのだと納得する。

「それより急ごうぜ。そろそろ解体場が混んできちまう。」

コリンがそう言うとユーグも頷き、【鷹の爪】の面々は冒険者ギルドへの足を速めるのだった。





オド達が魔石の換金を終えて冒険者ギルドのフロアに戻ると見知った人物が目に入る。

向こうも【鷹の爪】の存在に気付いたようで、こちらへと近付いてくる。

「こんにちは。」

「やあ、オド君。パーティーで順調にやれているみたいだね。」

オドがそう挨拶すると、見知った人物であるパウが挨拶を返してくれる。

パウも手には武器の戦槌と盾、全身に鎧を装備しており、今日はオド達同様に一日ダンジョン攻略をしていたようだ。

「っちわ!!」

「こんにちはっ!!」

パウの存在に気付いたコリンとハーザーも慌てて挨拶をする。

パーティーメンバーといる時はラフな言葉遣いをするコリンやハーザーでも、さすがに元所属クランの大先輩相手だと恐れ入ってしまうようで、キビキビと挨拶をする。

「お疲れ様です。普段はクランに直帰するパウさんがこの時間に冒険者ギルドにいらっしゃるのは珍しいですね。何かあったんですか?」

一方でユーグは落ち着いた様子でパウに話しかける。

「おお、ユーグ。お疲れ。実はだな、、、」

パウはそう言うと声を(ひそ)めて、今いるメンバーだけに聞こえる声量で話を続ける。

「実はお前達が2週間ほど前に仮面フクロウを倒して回収した魔石があったろ。今日クラン・クロウのパーティーで討伐したモンスターがそれと同じような魔石ドロップしたんだ。やはり今回も見たことのない種類のモンスターだった。」

「またですか。これで5件目ですね。」

ユーグの反応にパウが大きく頷く。

「そうなんだ。それで一応なにかあった時の為に俺も付いてきた訳だ。」

「そうだったんですね。最近のダンジョンはどこか普通じゃない感じがしますね。」

コリンがそう言うとパウも同意するように頷く。

「やはりお前達もそう感じるか。明らかに発生するモンスターの量も増えているしな。流石に報告は行っているだろうが、一度クランからもギルドマスターに現場の変化を伝えた方がいいかもな。」

「そうですね。宜しくお願いします。」

パウはそこまで難しい表情を浮かべているが、パッと表情を明るくすると話題を変える。

「それよりもだ。お前達、凄いじゃないか。若手のランキングは見てるぞ。」

パウはそう言ってユーグとコリンの肩を叩く。

「ありがとうございます。」

コリンが照れくさそうに頭を掻く。

「まだまだです。」

一方ユーグは落ち着いた様子でそう言う。

「確かにユーグはランキング1位が取れていないもんな。2位でも十分凄いがユーグは満足できないか。」

パウはそう言って再びユーグの肩を叩く。

「それでも、諦めず、腐らずダンジョンに挑むことだ。敵はランキングじゃなくて目の前のモンスターだからな。それだけは忘れるなよ。」

「はい。頑張ります。」

パウの言葉にユーグは素直に頷く。

「それにオド君、大躍進じゃないか。2週間足らずでランキング初登場から一気にトップ10入りなんて滅多にないことだぞ。俺が他のクラン・クロウの幹部達から何故無理やりにでも勧誘しなかったのかと怒られたくらいだからな。」

そう言ってパウがオドの背中をバシバシと叩く。

「初めて会った時から身体も大きくなっているし、将来がますます楽しみだ。」

「ありがとうございます。」

パウの素直な称賛にオドも照れるようにそう答える。

その後しばらくパウと【鷹の爪】の面々は世間話に花を咲かせるが、しばらくしてパウがクラン・クロウのメンバーに呼ばれ、【鷹の爪】の面々との話を終える。

「そう言えば、グランツの爺さんがオドに来て欲しいと言っていたぞ。」

パウは別れ際に思い出したようにオドに告げると、軽く手を挙げオド達にヒラヒラと振ってクランのメンバーが待つ北側の解体場へと去っていく。

「俺達もそろそろ帰るか。」

パウの後ろ姿を見てユーグが呟き、全員が頷いて【鷹の爪】のメンバーは冒険者ギルドを後にする。

大先輩に褒められたからか、帰路に着くメンバーの表情にはどこか自信に満ちているようだった。





翌日、朝の剣の稽古を終えたオドは自室へと戻る。

この日は【鷹の爪】はオフの予定であり、オドは一日暇だった。

「、、、、。」

オドはしばらく自分の部屋で何をするか思案するように歩いていたが、ふと昨日のパウの言葉を思い出し、グランツも工房に行ってみることにした。

「そうと決まれば準備しなきゃ。」

オドはそう呟くと、グランツの工房に行くならと一通りの武器と腕に装備する鎧を革製のカバンに仕舞って大犬亭を飛び出す。

「行ってきます。」

やはり連日のダンジョン攻略は精神的負荷が大きいせいか、久々の休日にオドは軽い足取りで朝の人がまだ(まば)らな道を駆けていくのだった。





一方その頃、ヴィルトゥスの中心、冒険者ギルドの執務室でライリーは難しい表情を浮かべていた。



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