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黒い翼の天使  作者: 雛乃
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前 出逢い

ファンタジーラブです。読んで見てください

 ユリナは昨夜から咳が続いていた。熱も一向に下がらない。食欲もなく、食べ物は一切受け付けない。どれもこれも、ユリナの病気のせいだった。

仲良しの秋羅にメールを打つ。

『今日は来ないで。熱がうつってしまうから。』

愛想も何も無い文章。

でも秋羅は返事をくれる。『うん。わかった(o^-')bお大事に!』

ケータイを投げ出すと白いシーツに体を委ねる。

見舞いに来た母が置いて行ったチョコレートがはずみで落ちた。それを拾い、ついでにカレンダーをチェックした。

「もう、一年になるんだ」ここに入院してから。

熱でほてった体を冷たいシーツが冷ましていく。

治ることの無い病気。

ユリナは自分の病気をそう認識していた。

苦しんで死んでいく。

それが堪らなく怖かった。

「大丈夫……?」

躊躇いがちな声がする。 見ると、歳はそんなに離れていないだろう少年が立っていた。

「来ないで……うつっちゃうよ」

見上げて、ハッと息を飲む。黒い、翼。背中に、大きな黒い翼が広がっている!

「し、死神!?悪魔!?いやあああああ!」

そう叫ぼうとしたのに、声が出ない。出るのは皮膚に滲む汗、喉がひくつく音。

「恐れないで。僕は悪魔リザ……」

「悪魔!?」

殺される。嫌だ。私はまだ生きたい!

「僕は人を殺さない。居るだけ……」

翼から何枚か羽根が抜け落ちる。

「信じていいの?」

「うん」

リザが微かに微笑んだ。




「リザ。あたしね、いわゆる不治の病ってやつなの」死ぬのを待つしかない。

そういうと何だか悲しくなって来た。必死に涙を堪える。会ったばかりの人の前で泣くわけにはいかない。

「ねえ、ユリナ──泣いても、良いんだよ?」

リザがチョコレートをかじりながら優しく言った。

涙が頬を滑り落ちる。

黒い翼が私を包み込むように広がった。

「リザの翼、チョコレートの匂いする」

涙は止まり、落ち着いてからリザに言ってみる。

「そうかな。」

確かに甘くてほろ苦いチョコレートの匂いがする。

「ユリナ。僕そろそろ帰るよ」

「リザって何処に住んでるの?」

「入らずの城」

そういうと窓から飛んで行ってしまった。




「やぁだ、カラスでも入ったの?」

母が黒い羽根を摘み上げて顔をしかめる。

あ、リザの羽根だ。

まあ、まさかユリナの元に悪魔が現れたとは思わないだろうけど。

リザと話してから、熱が少し下がった気がする。体のけだるさが少し取れた様だ。布団をかぶり、母に背を向けた。

「お母さん…入らずの城って知ってる?」

リザが住んでいる所。

「さぁ…?何なの、それ」ファンタジー漫画の読みすぎよ、それより少しは勉強したらどう、と母が小言を言った。死んでしまう娘によく勉強しろなんて言えるものだ。崎田ユリナの家は、秀才一家でユリナの姉も私立高校に通っている。

けれどユリナは病気で学校に行けないので母も諦めていると思っていたが…。

「じゃあ私はそろそろ帰るから」

「ん」

ぱたん、と扉が閉まる。

リザの羽根がごみ箱に捨てられていて悪魔の存在を確立していた。

リザの羽根を摘み上げ、鼻に近付ける。この香ばしい匂いは…

ココアだ。

リザの翼はチョコレートの匂いがした。ほんのり甘くてほろ苦いビターチョコレート。

リザは本当に悪魔なんだろうか。ユリナは悪魔と言うのは人を傷付けてゲラゲラ笑うとんでもない奴だと思っていた。でもリザは違う。優しい悪魔だ。言うならば黒い翼の天使だ。

「リザ…」

気付けばユリナはリザとまた会いたいと思っていた。

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