藍の為【改稿中】
俺は朝7:00に家を出る。
帰り着くのは18:00だ。
志望校への進学の為、補講を受けることを承諾したとはいえ俺は長い拘束時間にうんざりしていた。
ーこれじゃ、その辺の社会人並みだな。ー
俺は通常の授業中はいつものように授業を聞きながら仕事をし、早弁。
そして昼休みは、睡眠時間の確保の為寝るという生活を送っていたのだ。
夜はといえば藍に好きなように身体を弄られ、寝るのは0:00を過ぎる。
今迄の好きなだけ睡眠を取れる環境から一変し、俺の身体は着いていくので精一杯だった。
藍の為とはいえ、この生活は窮屈だ。
それに、補講内容は基礎的な問題より捻った問題が多く正直ついていけていない。
ー一人でやってた方が効率いいし、楽だったな。ー
俺の中にそんな思いが芽生え始めていた。
だが、今更補講をやめると言えば学校側の指示で進路変更を余儀なくさせられるだろう。
俺は、迷っていた。
「紗倉、朝夕補講受けるなんてどうしたんだよ?」
いつもの詮索野郎だ。
答える義理はないが、どうしよう?
黙っていて塩対応だのなんだのはやし立てられるのも嫌だし、素直に答えて鼻に掛けた奴だと思われるのも嫌だ。
上手くかわすには……。
「え?あー、いやさ。
親がさ。
大学進学しろって煩くて。」
「でも、大学進学組の中でお前だけだぞ!」
苦しい言い訳に、早速突っ込みが入る。
「俺は仕事一本でいこうと思ってたんだけどさあ、親に泣きつかれちゃってさ。
ちょっと偏差値上の大学に行かないといけなくなったんだよ。
あー、もう。
本当に勘弁してくれって思うよ。
先生達まで出てきてさ。」
「そうか。
紗倉も大変だな。」
「えー?
咲夜!どこの大学行くの?
私がお嫁さんになってあげてもいいけど。」
せっかく話がこれで終わったと思ったのに、これ以上蒸し返すのはやめてくれ。
邪険にする訳にもいかず、俺はがっくりと肩を落としながら答える。
「そんなにいい大学じゃないから。」
「教えてくれてもいいじゃん!」
「他にも大学進学組いるだろ?
そいつらに尻尾振っといた方が得だと思うよ。」
「他は知ってるもん!
知らないのは咲夜だけだもん!」
「似たようなもんだよ。」
「何それ?
じゃあ、なんで咲夜だけ補講受けてんのよぉ!
咲夜だけ他の進学組より劣ってるようには見えないし。」
「本当だ!
なんでだよ!
紗倉!!」
またそこに戻るのか。
せっかくはぐらかすことができると思ったのに堂々巡りに嫌気が差す。
「知らないよ!
補講受けたい奴は先生に言えばいいだろ?」
俺は、つい無責任な言葉を言ってしまった。
「ホント?
じゃあ、他の大学進学組にも宣伝しとこう!」
まさかこれで補講人数が増えるとは思わなかったんだが、次の日から補講を受けたいという生徒が増えらこととなるとは…。
先生達からは感謝され、頭を下げられ、まるで俺が補講希望者を誘ったかのように扱われた。
その夜、俺は市役所のデータベースに侵入しデータ改竄という違法行為を行った。
データベース上に藍の戸籍を作り、海外に住む俺の親戚の子としたのだ。
年齢は16歳。
生まれは海外。
そして日本へ来たのは藍が具現化した日。
俺のアパートに居候中で叔父の扶養からは外す。
叔父の扶養に入っていたら、すぐに叔父にバレてしまうからだ。
税務署や年金事務所のクラックも行い藍は俺が雇ったアシスタントということで月15万円、つまり親が扶養から外さないといけない額を藍へ手渡ししていることとする。
また、これだと国民年金を支払うことで藍に保険証を与えることができる。
俺は、ハッキングは幾度となくしたことあるがクラックを行なったのは初めてだ。
いくつものIPを使い侵入した上、すべてデータ改竄の証拠は隠滅した。
誰にも見つからない完全犯罪。
俺はもう14歳の頃の俺とは違う。
ハッキングの腕だって、おそらく世界トップクラスだろう。
サイバー警察として生きていた俺にとってとても心が重くなる出来事だった。
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【ハックとクラックの違いです】
ハッキング(ハック)…不正に侵入して主にデータを盗み見ること(データは壊さない)。
※ただしクラックと同義で使われる場合もある
クラック(クラッキング)…不正に侵入してデータを壊すこと。
データ改竄も元のデータを書き換え壊しているのでクラックの方に含まれます。
※主にコンピュータウィルスはクラックの為にばら撒かれたり送りつけられたりします。
このお話では、ハックよりハッキングの方が皆さんよく知ってらっしゃると思うのでハッキングという言葉を使っています。
クラックやクラッキングは皆さん聞き慣れない方もいると思うので、どちらでもいいかなと筆者がよく使う方の言葉で書かせて頂きました。
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