進路
金木犀の香る頃、俺は藍と新婚のような生活を送っていた。
藍にいってらっしゃいのキスをされ、学校へと向かう。
外は秋色に染まる前で、まだ緑色の葉が光を浴びきらめいている。
暑さが和らぎ涼しい風が窓から吹き込み、俺達の髪を揺らす。
「前回の進路についてのアンケートだけど、みなさんめちゃくちゃですね。
アイドルになるだの海賊王になるだのではなく、進学したい大学や専門学校、もしくは就職予定等を書いてください。
また全員に同じ紙を配ります。
それから紗倉君は、あとで職員室に来るように。」
-あれのことか…。-
俺はおおよそ見当が付き、職員室へと向かう。
「紗倉、何やらかしたんだよ?」
「万引きでもしてバレた?」
「バーカ!
紗倉がやるわけないじゃん。」
「喧嘩?」
「それとも女でも孕ませた?」
「なんだろなぁ?
なーんにも予想がつかない。」
廊下で面倒くさい奴らに絡まれたが、いつものように適当にかわす。
流石、底辺校…。
考えてることが、すぐに想定できる。
不良漫画にでもありそうな定番の展開だ。
「わからないのかよ。」
「咲夜は成績もいいし、呼ばれるなんておかしいよ。」
「なっ!
俺も濡れ衣着せられたことあるんだけどさ、ほんっと頭くんの!
なんかあれば俺に言え!
絶対守ってやっからよ。」
「サンキュ!
あ、早く行かなきゃ。」
俺は、廊下を進み職員室のドアを開け中へと逃げ込むように入った。
そのまま担任の席へと進む。
「紗倉君。
ちょっとそこに座りなさい。
進路ふざけてるのか?
確かに君の学力は、入学した頃から我が校ではトップクラスだよ。
ただし全国模試だと、君は平均以下だ。
本気でその大学を志望してるなら何故我が校に入ったの?
いや、我が校だって君が1年生の頃から言ってくれていたら、君の為に特別進学コースを作っていたんだ。
君が全校生徒の見本となってくれたら、我が校としても嬉しいことだからね。」
これも想定していた定番の展開。
なんで底辺校は揃いも揃ってこうなんだよ。
担任まで猿か?
「俺、本気ですよ。
今は応用ではなく基礎をやってるんです。
基礎ならあらかた完璧です。
全国模試は、応用や回りくどい問題ばかりだったから点数は取れなかったけど。」
「そう?
それでは君の言葉を真実として貰う為、朝晩補講でいいかな?
君の実力を見てみようと思う。」
「え?
何故ですか?
1人で出来るんで必要ありません。」
「いくら1人で出来るといっても、勉強にはコツがあるんだよ。
そして、毎年傾向も出る問題も違う。
考え方や解き方にしろテクニックが要るから、補講は受けた方がいいと思うけど。
正直ね、君を志望校に受かるレベルに持っていくには、うちの教科書じゃダメなんだ。
僕達は、教科書外の問題もプリント作成をして君に教えようと思ってる。」
「わかりましたよ。
時間を教えてください。」
担任の説明に納得し、こっちの方が効率いいかと思い直す。
まぁ、コイツらの能力を試すいい機会だ。
この話には乗っておこう。
俺は補講に通うことに承諾した。
「おかえりなさいませ。神様。
今日はなんだかお疲れですね。」
藍が心配そうな顔で俺の鞄を受け取る。
こういうのは鬱陶しい。
疲れてるとわかるなら何も声を掛けずに1人にして欲しい。
藍だから許せるんだけど。
「そう?」
「藍の勘違いだったらいいんですけど。」
「いや。
まー、そうかもね。」
藍には補講で朝早くなり帰りも遅くなること伝えた方がいいのだが、後でいいやとその場をやり過ごす。
「藍、アップルティー淹れます。
林檎を使ったスコーンと林檎ジャムもありますよ。
糖分取って、ゆっくりしてくださいね。」
「アップルティーより風呂入れて。」
「はい。お湯もう入ってます。
蓋開けてきますね。」
「ありがとう。
それくらいなら自分でやる。」
「藍がやります。
やらせてください。」
「じゃあ、好きにして。」
藍は、パタパタと可愛い足音を立てて風呂へ行った。
「いいですよー。
お風呂、藍も一緒に入っていいですか?
お背中流します。」
やば!
俺の身体が反応してしまった。
毎度思うことだけど、藍は計算なのだろうか?
それとも天然?
ウザイと思っても結局、藍にコロッと気持ちが傾く。
「別にいいけど。」
俺は、悶々としながら藍に返事する。
「やったぁ。」
俺はその後風呂場で藍とめちゃくちゃセックスした。