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大切なもの パソコン

「じゃあ、行ってくるね。」


「いってらっしゃい。神様。」

藍は、俺を見送る。


高校に入り、やっと一人暮らしが出来たのにその家に家族が出来たみたいだ。

一人で居ることが好きな俺は、気分が重い。

せっかくのパラダイスを奪われたように萎える。


一人なら心置きなく自由にできるのに、藍が居てはこれからずっと他人に気を使うことになるだろう。


学校に着くと俺はすぐさまWebカメラで家の中の様子を確認した。

藍は早速、洗濯機を回しながら掃除をしているようだ。


-そんなに丁寧に掃除しなくても、週に1度くらいでいいのに。

そこまで汚れてないだろ。

早く出掛けてくれないかな?-


俺は、憂鬱な気持ちで授業にのぞむ。



また仕事のメールだ。

解析か……。

最近、解析の依頼がやけに多いな。


俺は授業を聞きつつも、パソコンに仕込んだマクロを利用しつつ早々に仕事を片付ける。


やっぱり、楽しいな。

本当、これは俺の天職だよ。

パソコンに向かってどんどん俺に与えられるダンジョンを攻略していくのは、爽快感を与えてくれる。



「ねぇ、咲夜ー!

咲夜って、オナニーしたことあんの?」

頭のおかしいクラスメイトだ。

あいつらは、いつも猿みたいにやり合ってそういう話ばかりをしている。


「ないよ。」


「ぶはっ!マジ?」


「マジマジ!」


「じゃあ、ヤッたことある?」


「ない!」

面倒くさいと思いつつも、適当に返事を返す。


「ありえなーい!

むっつりなんでしょ?

本当はオナニーばかりしてたりして!!」

ほんっと、そっちの話が好きだな。

基地外には構いたくないが、これで虐められては俺の夢のパソコンライフが邪魔されてしまう。



「仕事で忙しくて、そういうこと考える余裕がないんだよなぁ。

頭にあるのは、いつもパソコンのことばかりだよ。」

俺は奴らを軽くあしらう。


仕事で忙しいわけがない。

寧ろもっと仕事が欲しいくらいだ。

面白いお遊びみたいな依頼で高給(マネー)が貰えて、それをゲーム感覚で勤しんでるとは言えずに猿どもに話を合わせる。



「あー、そうだよね。

いつもパソコン触ってるもん。

仕事忙しいよね。


それでいてテストはいつもハイスコアなんだもんね。

咲夜は凄いよ。

テスト勉強も大変でしょう?」


ばっか!

テストで苦労したくないからこの底辺校を選んだんだよ。俺は!


猿どもがヤルことを優先する為にこの底辺校を選んだように、俺は仕事を優先する為にこの底辺校を選んだんだ。


底辺校の授業内容なんて中学の頃の焼き増しみたいなものだし、重要ワードだけ予め検索して確認しておけばスムーズに授業が進む。

仕事中に当てられてもその最中マクロに仕事をさせておけばいいし、今まで大変だと思ったことはない。



「大変かな?

人によってその大変の度合いが違うから、わからないけどさ。

そうかもしれないなぁ。」

否定も肯定もせず曖昧に返す。



「大変なのにそれを表に出さないなんて、咲夜は大人だね。

カッコいい。

させてあげるから付き合おうよ。

DT卒業させてあげるよ。」

猿が腰をくねらせて媚びた目で俺を見る。


あー、キモい。

パソコンに集中してストレス解消してるから生理的にも性欲抑えられてて必要ないし、第一ヤリマン非処女とやりたくないっつーの!!


「だからさー、仕事で忙しくて女大切にしてあげられないから無理なんだよ。」


「いいよ。

咲夜だってDT卒業したいでしょ?」


「ほら、咲夜は忙しいって言ってるじゃん。

大人なんだよ!

お前は大人しくしとけ。」


「大人なのがカッコイイって思って惚れたのにぃ!」


虫唾が走る。

惚れたって、そんな軽いもんなの?

俺だって、もしかしたらいつか恋愛するかもしれないけど惚れたって言葉はその時に本当に愛する女だけに使いたい。


させてあげる?

あー、もうこれ無理。

お前、自分のことどれだけイイ女だと思ってんの?

世界一の美しさを誇る清浄な処女か?

アイドル並みに可愛いくて人気がある純潔の処女か?

はたまた、人形のような白人新品美少女か?

精液塗れの汚い非処女なら、新品のオナホの方がマシだ!


DT卒業したいでしょ?

何これ?

なんかのギャグか?

DTは卒業するものでもなんでもなくて、好きな女にだけあげるもの。

それも、好きな女と相思相愛で愛し合ってからの話で、風俗嬢みたいな《汚れ》に奪われるなんて勘弁。



俺は、好きな女が出来なかったら一生DTでもいいし、そもそもパソコンが好きなんだ!!

生身の女に魅力を感じたことは一度もない!



盛り上がってる猿どもを無視して俺は新しいプログラムを組んでいた。

規則正しく、この世の秩序のように羅列する言語は美しく、俺の心を虜にする。

-次は何作ろうかな?-


それを考えるだけでワクワクして、さっきの後味の悪い嫌な話も忘れられたんだ。

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