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神様のお嫁さん

俺は、藍に呆れていた。

いくらなんでも風俗店で働こうと思うか?


藍がやりたいなら別に好きにしたらいいんだけど。

AIの藍には、その店がどういうところかわかるだろ?


俺は藍に意思を確認する。

「藍、お前風俗店で働きたいのか?」


「違っ!違います!」


「だってさぁ、あの店どんな店かわかってて働こうとしたんだろ?」

俺は矛盾する藍の回答に嫌気が差し、藍を問い詰める。

藍は俺の目を見て、また泣き出し、唇を噛み涙を止めようと必死だ。


-まったく何を考えているのやら。-


俺は藍の気持ちがまったくわからない。

わかろうともしていないし、わかりたくもない。


藍が涙を堪え、やっと口を開いた。

「藍は、働こうとたくさんのお店を回りました。

張り紙を見て、働かせてくださいと言いました。

でも学歴無くて身分証もない藍をどの店も雇ってはくれませんでした。」


「で?

風俗店。」


「藍に働かないかと声を掛けてくれたのがあのお店だったんです。」

藍は、うなだれながら経緯を説明をした。

藍は俺が作ったAIだけど、自分の意思や考えを持つようになったんだ。

他人の俺が止めることじゃない。


と言うか、そもそも俺は藍に興味すらわからない。

俺は藍との適切な距離感を探りつつこう答える。

「ふーん。

別に藍がそれでいいなら反対はしないけど。」


「違いますっ!

藍は契約の時に口語委任契約をしているんです。」


「ああ。口約束でも契約に値するってやつ?

そんなの別に証拠が無ければ意味ないよ。」


「お店の人は藍にベッドに居るだけでいいっていいました。


藍は何か証拠になるよう契約書に名前を書く時に、ちゃんと契約書に『お仕事内容はベッドに居るだけ』と書き足しました。

そして、藍とサインを書いて母印を押しています。

お店の人は、それでもいいって言ってくれました。」


藍は声を大きくして状況説明をする。

必死に藍は何を言い訳してるんだろう。


俺は別に藍がそれでいいのなら反対はしないのに。


「理不尽だと思うかもしれないけど、お店の人の言う通りだよ。

お客さんが好きにするから、ベッドに居るだけでいいと黒服は主張してたじゃん。


今回はたまたまあいつらが警察手帳にビビって逃げられたけど、次回は無いと思ってね。」


「そんなぁ!

藍は、世の中の不条理や理不尽とも戦っていこうと思います!」


「それでお店に騙されて、お客にやられていいのなら好きにしたら?」


俺は藍の認識の甘さに開いた口が塞がらない。

やっと言えたのがこれだった。


「え?あっ!!

ダメ!それはダメ!!


藍は神様だけのものっ!」


「じゃあ、やめたら?

働かなくてもいいし。


お腹空いてるならそれくらいのお金はあげるって言ってるじゃん。」


苛立ちの中、ぶっきらぼうに1万円札を差し出す。

藍は、それを拒否し頑なに受け取ろうとしない。


「それだと藍は、神様の嫁さんとしてなんのお役にも立てません。

藍も何かお役に立ちたいんです。」


「それで今回みたいなことになったら迷惑だから。

大人しくしといて。」


1人で突っ走る藍に頭にきてキツめに言う。



「でも…。」


「あれから何も食べてないでしょ?

とりあえずカップ麺食べる?」


「あっ!

でも…、お金が…。」


「だからいいって。

面倒くさいからもう作るね。」


「はい。」


藍は大人しくなり、黙ってカップ麺が出来上がるのを待つ。

それから割り箸を割り熱々のラーメンをふぅふぅしながら(すす)り、差し出したペットボトルの水を飲む。

そうして、やっと落ち着いたようで大人しくなった。



「今日から藍の仕事は、この部屋の掃除ね。

それから自分の服や下着は自分で洗うこと。

俺の分は俺が洗うから手を出さないで。


料理はしなくていい。

今度から一緒に食べよう。

学校行ってる時は無理だけどさ。


鍵渡すから、散歩は自由にしたらいいよ。

近くの図書館の場所わかるだろ?

そこで思う存分学習でもしたらいい。」


またこんなことがあったんじゃ堪らない。

俺は、これで少しはマシになるかなと思いつく限りの提案をした。


「はい。

神様のお嫁さんとして、もうご迷惑をお掛けしないよう頑張ります。」

藍は、嬉しそうにこう言った。



もう深夜はとうに過ぎ外から車の音も聞こえない。

慌ただしい夜明け前の出来事だった。

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