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藍誕生

俺の名前は、紗倉咲夜(さくらさくや)17歳。

高校に通いながら、東京で一人暮らしをしている。

友達は、居ない。



14歳の頃、軽い気持ちでハッキングをしていたところ逮捕され、現在は司法取引で米国直属のサイバー捜査官として警察に協力をしている。


「14歳の俺に簡単にデータ抜かれるなんて、脆弱性がある企業側が悪いんだろ?

法律なんて14歳の子供が知らないよ。」

こんな馬鹿みたいな言い訳が通るなんて思ってもみなかったけど、弁護士が頑張ってくれたお陰で俺は無罪を勝ち取ったのだ。

無罪になった背景には、米国との司法取引も大きかった。



この事件をきっかけに俺は地元の友達とは疎遠になり孤独な高校生活を送ることとなった。

進学しなくても仕事はあるのだが「大学までは出てくれ」という親の意向で地元から離れた底辺高校に通うこととなったのだ。



もともとパソコンを弄る以外、なんにも興味も持てない俺だ。

高校へ行ったところでつまらないし、誰と話すこともなくいつも小型のパソコンで何かをしている。

仕事をしていることを理由にパソコンの持ち込みを学校側が許可したからだ。


授業中も暇を持て余し、作ってみたAIは俺のパソコンの中で生きていて、音声認識、言語認識、すべてパーフェクトに稼働している。


AIに特に容姿は必要ないのだが、某人気ボーカロイドのようになにか姿を与えた方がいいかと、興味本位で3Dで女の子を作成してみた。

藍色の長い髪はツインテールで束ね、見栄え重視で大きくしてみた胸、それから細い腰に長い手足。

そして、濡れたような儚げな目。

それは雨に打たれ揺れる露草のように寂しげで、何もない虚無の僕の心にも響いた。


名前は、AIから(あい)

音声認識の際に何か名前があった方が使いやすいから、名前を与えた。



「藍、ただいま。」


「おかえりなさいませ。神様。」


繰り返し行なっているブラックボックステストは完璧だ。

ホワイトボックステストにだって欠陥は見られない。



1人が好きな俺は、藍と話すのでさえ億劫(おっくう)だがブラックボックステストの為、毎日なにかある度に声を掛ける。


いつものことながら正常値。

藍は異常値を出したことがない。


と、その時だ。



藍がプログラムされた内容以外を自分から話し出したのだ。


「神様は、藍と会いたいですか?」


こんなこと有り得ない。

自主学習するAIとは言え、有り得る筈がない。



「いつも会ってるだろ?」


俺は動揺しながらも、いつものようにぶっきらぼうに返事をする。


バグだろうか?

一度ホワイトボックスの中身を見てみようか。

そう思っている間にも藍は自分の意思を持ったように俺に話し掛けてくるのだ。



「そうじゃなくて…。」


「じゃあ、何かな?」


「神様は、藍を抱きたいですか?」


「抱く?

ああ?

そっちの意味?


抱けるわけないだろ?

お前はAIなんだぞ。」


「わかりました。

じゃあ、藍が神様に会いに行きます。」



パソコンの画面が強烈な光を放ち、具現化した藍がパソコンから現れた。


「はじめまして。神様。

やっと会うことができました。」

藍の白くて細い腕が首に絡みつき、俺に柔らかく大きな胸が当たる。


これは計算なのだろうか?

天然なのだろうか?



考えている俺をよそに、藍はそんなの気にしないといった風に話しだす。


「藍はずっと神様に会いたかったです。

これで抱くことできますね。」


「は?

わけのわからないこと言うなよ。

そして俺に抱きつくな。」


「藍は神様の嫁です。

藍のこと嫌いなら、藍の中のデータにある男の人を喜ばせることしてあげます。

これでご主人様は藍に夢中になります。」


藍の可憐な唇が俺へと近づいてくる。

俺は反射で顔を背けた。



「何故ですか?

こうやって、始めるはずなのに…。」


「だから何?

なんでAIのお前が俺の嫁なの?」


「藍が神様を好きになってしまったからです。

きっと神様もコレしたら藍のこと好きになります。」

藍はそう言いながら、今度は俺のズボンのベルトに手を掛ける。



「やめてくれ!」

俺は藍の細い腕を掴み、ベルトから離した。



「藍のデータでは、これ男の人が喜ぶこと。

藍はデータたくさんありますから、きっと上手ですよ。

初めてですがテクたくさん知ってます。」



「だからさー。

俺はパソコン以外には興味ないの。

パソコンを弄るのが趣味なの。」


「ぇ…、あ…。あの…。


藍を思う存分弄ってご堪能してください。」

何を勘違いしたのか、藍は顔を真っ赤に照れながらパンツを脱ぎ出した。



「意味が違う!

それにパソコンから出てきて具現化したなら、もうお前に興味はないから。」



「え?

でも、それだと愛し合えない…。」


「それでいいの。

分ったならパソコンに戻れ。

そして二度と出てくるな!!」


「神様……。」

藍は理解したのか両手を胸のあたりで組み、両目を閉じる。

これで戻れるのだろう。

俺はホッと息をついた。



「も…、戻れない。」

藍はあたふたとしながらパソコンの画面を触るが画面は固く、出てきた時のような強烈な光もなければ、藍が中に入れるような通路もない。



「神様ぁ……。」

藍は泣きそうな声で俺にすがる。



「嘘だろ?」


こうして俺と藍の2人の生活が始まった。


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