僕と彼女の選択
時刻は22時30分
僕は今、人生で初めて同年代の女の子の部屋にお邪魔している。
「適当に座ってていいからね〜」
洗面所で着替えながら顔だけを覗かせて二菜先輩はそう言った。あの壁の向こうで先輩が…そんなことを思い、どぎまぎしつつもとりあえず手近にあったクッションを手に取り腰を下ろすと僕は部屋の中をぐるりと見回した。
マンションの一室、白を基調とした部屋の中は清潔に整えられており一切の無駄がないように見える、壁のコルクボードには家族や友達と一緒に写るにこやかな二菜の写真が貼られていた。(お父さんすごいムキムキなんだな…)
かと思えばベッドにはよく分からない緑色のタコのような生物の人形が置かれており女の子らしさ?も感じられる。
さて、何故僕が二菜先輩の部屋にお邪魔することになったかというと時間は少しだけ遡る…。
「私と一緒にティンポニックバトルをしましょう!」
「えっ?」
コウガンが去った後の静寂の中、僕の元へ駆け寄ってきた二菜先輩は唐突にそう告げた
「今の戦いとその右手の剣をみて確信したわ、あなたに私のパートナーになってほしの!」
興奮気味に二菜先輩はそう言った。
「もしよかったら今から私の部屋に来ない?」
このシチュエーションで健全な男子なら誰でもこう答えたに違いない、僕は間髪入れずに即答した。
「お邪魔します。」
「お待たせ〜」
少し肩の見えるオフショルダーのTシャツと紺色のロングスカートに着替えた二菜先輩がマグカップを2つお盆に乗せて部屋へと戻ってきた。二菜先輩は僕と向かい合うように机の反対側に座ると紅茶の入ったマグカップの1つを僕に手渡してから話を切り出した。
「さっきは助けてくれてありがと、かっこよかったよ包城君。そういえば自己紹介がまだだったね、私は二菜 里奈。」
「僕は包城 茎です。二菜先輩は3年生で今期から風紀委員長ですよね、今朝の全校集会での挨拶見てました。」
「ありがとう、覚えててくれて嬉しいわ。」
それからハッとしたように目を開けると二菜先輩はみるみる赤くなっていった。
「今朝はその…ごめんなさい、私も急いでて」
赤面する先輩も可愛いなと思いながらも今朝のことは僕に非があったのでこちらからもしっかりと謝った。
それからすこし雑談をした後に二菜先輩は本題を切り出した。
「それじゃあ簡単にティンポニックバトルとは何かを説明するわね。まず、自分の妄想力をお◯んぽを媒介に武器として具現化し、その武器を手に戦う人のことをティンポニックバトラーというの」
「え?おち◯ぽ?」
二菜先輩があまりにもサラッとその単語を混ぜてきたので僕は思わず聞き返してしまった。
「えぇ、おちん◯。」
真顔で返されたので大人しく話をを聞くことにした。
「そして具現化した股間武装で己の誇りをかけて戦うことを彼らはこう呼んでいるわ…『ティンポニックバトル』と
例えば…そうね、さっきの剣を出してみて?今の君ならイメージすれば具現化出来ると思うわ。」
「やってみます…発動、ティンポニックブレード!」
先程発動した時の剣の明確なイメージが脳内に残っていたからかそれはあっさりと右手に握られていた。
「今その剣は君にも見えているしもちろん私にも見えているわ、けれどこんな風に…」
カシャッ
スマホのカメラで撮った写真を二菜先輩が見せてくれた。
そこに写っていたのは僕だけで剣はどこにも写っていなかった。
「具現化してもあくまでそれは妄想なの、だから普通の人には見えないしどれだけその剣で相手を攻撃しても実際の体は傷付かないし死ぬことはない。
ただダメージはしっかり受けるから気をつけてね、精神的に」
(どんなダメージなのか全く見当もつかないが覚悟しておいた方がいいのかもしれない…)
「学園内にはこの力を使って悪さをする輩が少なからず存在しているわ、そして私は風紀委員として学園の風紀を乱す存在を見逃すわけにはいかない…ただ一人ではできることに限界があって…」
「なるほど、それでパートナーを探していたと。」
「そうなの、だからこそ誰かの為に動ける正義感ある君に力になってほしいなって…」
(そうか…二菜先輩は女の子だからきっと戦うことができないんだ、今日もあんな怖い思いをしたのにそれでも風紀委員として使命を全うしようとしている。)
その時僕の答えはもう決まっていた。
「やります、やりますよ先輩。」
あまりにも早く返ってきたその答えに二菜先輩は驚いた表情をしていた。
「俺、ティンポニックバトラーになります!」
その日、僕は彼女の為に戦うことを選んだ。